【経済コラム】ゴールドマン、「ポパイ」や「ハローキティ」に業績託す

世界中の金融機関が生き残りをか けた戦いを続けるなか、米ゴールドマン・サックス・グループは日本 のテーマパークでこの難局を乗り切ろうとしている。

ゴールドマンは、大阪のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ ジャパン」を運営するユー・エス・ジェイ(USJ)をTOB(株式 公開買い付け)で買収すると発表した。国内景気が低迷するなか、見 返りを期待するのが難しい行為だ。2001年の開園以来、USJは苦し い経営が続いている。世界規模の金融危機や円高も逆風となる。ゴー ルドマンの真意は何だろう?

ゴールドマンにとって有利な契約であることは確かだ。同社とM BKパートナーズなどで構成する投資家連合は、USJへの出資比率 を61.2%とすることを目標にしている。世界的に株価が低迷している 現在の状況を好機ととらえ、数年後には利益が得られるとの考えだ。

三菱UFJ証券の村上宏俊シニアアナリストは、ゴールドマンに よるTOBが成功した場合、新しいアトラクションなど、客を飽きさ せない仕掛けが必要で「ゴールドマンが100%子会社化して経営に参 加しても能力は未知数だ」と慎重にみている。

キャラクターはそろっているが

確かに、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンには「ベティ・ブー プ」や「ポパイ」「ウッディー・ウッドペッカー」「ハローキティ」 など集客力のあるキャラクターがそろっている。「ジュラシック・パ ーク」「ジョーズ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などの映画 を題材にしたアトラクションもある。それでも業績は悪い。

ここで、人生そのものがジェットコースターのように感じるこの 試練の時代に人気を博すであろう6つのアトラクションを提案したい。 適度な刺激を提供するため、6つともユニバーサル・スタジオ・ジャ パンと世界経済が現在直面する問題に関連付けてある。

1.日経平均急落ウォーター・ライド:日経平均株価は今年これ までに約10%下落。昨年は42%安となり、資産バブルが崩壊した1990 年(39%安)を超える下げを記録した。

このジェットコースターのレールを日経平均のグラフに似せて作 るのはどうだろう。下りの方が上りよりはるかに多くなるが、日本の 優れた技術を持ってすればそれも可能なはずだ。このライドの特長は、 ある時点で必ず降りられること。日本経済では同じようにいかない。

2.グリーンスパン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長のサ ブプライム・ハウス・オブ・ホラー:気持ちの良いスリルは常に好ま れる。たまには新聞の金融欄に載らないようなスリルもいいだろう。 ただこのアトラクションも、経済不安と完全に無関係とはいえない。 われわれが2年前より貧しくなったように感じる理由が題材になって いるといった方がいいかもしれない。

ある部屋では、グリーンスパン前議長のような錬金術師が資本主 義や革新を錦の御旗に、あらゆる資産を切り刻んで証券化する方法を 編み出していく様子が再現される。弱者を犠牲にして金融システムを 不正操作した人たちをフィーチャーした「恥の殿堂」という部屋もあ る。思い当たる節のある人ははっと息を飲むはずだ。

3.ポトマック川の海賊:「海賊」というと最近はタイにいる偽 DVDの売人やソマリア沖合で石油タンカーを乗っ取る犯罪集団を連 想しがちだが、この言葉が最もぴったりくるのはウォール街だ。

このアトラクションの主役は、公的支援を申請した企業。登場す る海賊はまず会社の資金を略奪し、次に公の資金を受け取る。財務省 が規模の大きい企業や銀行の破たんを恐れていることも計算の上だ。 アトラクションが終わるまで数時間かかるので、弁当を持参すること をお勧めする。

4.「パトロン」中国のお相手:対外投資の現状を再現するには、 現金が豊富な中国を題材にするのが最適だ。米国の財政面でのパトロ ンとしての中国の役割が度を越していることは周知の事実。中国の外 貨準備高はほぼ2兆ドルに達している。次の関心は、世界経済が低迷 するなかで、中国がどのような投資行動を見せるかだ。

アトラクションの中にある巨大な地球の模型には、中国が戦略投 資している国に印がつけられている。オーストラリア、ブラジル、ロ シア、ベネズエラ、アフリカやアジア諸国の大半。居ながらにして世 界旅行が楽しめる。

5.イッツ・アン・AIGワールド:このアトラクションはクイ ズ番組の形式。世界最大の保険会社であるアメリカン・インターナシ ョナル・グループ(AIG)に与えられた巨額の救済措置の数々につい て出題される。

ハイライトは、因果応報ダーツの部屋。ここでは、エドワード・ リディ氏やロバート・ウィラムスタッド氏、モーリス・グリーンバー グ氏など歴代の最高経営責任者(CEO)の肖像を狙ってダーツを投 げることができる。

6.同胞よ、十億ドル貸してくれないか?:これは客の同情を誘 うためのアトラクション。年間賞与のゼロの数が1つまたは2つ(あ るいは3つ)削られたバンカー間の結束を促す狙いもある。

ゴールドマンがユニバーサル・スタジオ・ジャパンで勝負に出た ことを考えれば、こうした「われわれバンカーは打撃を受けています」 といったPRも決してないとはいえない。

客にとっての朗報は、このアトラクションが待ち時間なしで入れ ること。列に並んでいるのは、ダークスーツに身を固め困惑した表情 のビジネスマンだけだ。 (ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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