ウイスキー戦争:日本の「響」、海外で「ジョニーウォーカー」と競う

ショーガールが踊り、バグパイプ が鳴り響くスコットランドの雰囲気に包まれたプロ対象のウイスキー 試飲会で、板倉徹氏(33)はプラスチックカップに入ったウイスキー を口に含んだ。

横浜でバーを経営する板倉さんが最後に選んだのはスコッチ・ウ イスキー。ほとんど知られていない日本のシングルモルト「イチロー ズ・モルト」だった。

パッチワークの帽子をかぶり、あごひげを蓄えた板倉氏は「スコ ットランドなどにはない個性、独自の香りが日本のウイスキーにはあ ると思う」と語った。

日本のウイスキーの評価が世界で高まっている。昨年には、アサ ヒビール傘下ニッカウヰスキーの20年物シングルモルトと、サントリ ーのブレンドウイスキー「響」がそれぞれの分野で英ウイスキー専門 誌ウイスキーマガジンの最優秀賞を受賞した。

受賞についてウイスキーの輸入販売を手掛けるウィスク・イーの デービッド・クロール最高経営責任者(CEO)は「スコッチ業界に 対する威嚇射撃」になったと指摘。「日本のメーカーは輸出を拡大し真 剣に取り組み始めている」との見方を示した。

日本のウイスキー販売量は1980年代初めのピークに比べ4分の 3以上減少しており、酒類販売全体に占める割合は1%に満たない。 1990年代には国内の税法改正によりウイスキーが高くなったのを受 け、ワインなど他のアルコール飲料への切り替えが始まった。ニッカ とサントリーは国内の販売減少を輸出拡大で補いたいと考えている。 両社の国内ウイスキー市場シェアは計90%。

赤い屋根

石壁と赤い屋根の建物が印象的なニッカの北海道・余市工場。こ の工場でニッカは、自然の力を頼りに次のヒット商品を開発している。

同社勤続25年で現在、北海道工場(余市)の理事工場長を務める 荒谷幸夫氏は「70年ウイスキーを作っていて、分かっている部分と、 ぜんぜん分からない部分がある。分かってくることもある」と話す。

ニッカがシングルモルトに力を入れ始めたのは1990年代初め。同 社のウイスキーはスコットランド産の大麦と国産の酵母、余市の天然 水を使って製造され、大半が米国産白オークのたるで熟成されている。

クルミ、トリユフ

国産ウイスキーに関する著作があるウルフ・バクスラッド氏は、 ニッカのウイスキーにはクルミとトリュフとバニラの風味があり、香 りは「木製」で「くん製」のようだと言う。

ニッカの創業者、竹鶴政孝氏が工場建設地に余市を選んだのは、 気候がスコットランドに似ているため。荒谷氏によると、ウイスキー は温度や湿度の極端な変化や、海からの距離の影響を与えやすいとい う。

余市工場の南西約1000キロにあるサントリーの京都・山崎蒸留所。 この蒸留所でチーフブレンダーを務める輿水精一氏は「日本のウイス キーは長い間スコッチの模倣にすぎないと考えられていたが、『響』 や『山崎』が国際的なコンテストで賞を受けるようになってから状況 が変わった」と語る。

愛飲家の間には、製品に一貫性があることを理由に、シングルモ ルトよりも「ジョニーウォーカー」や「カティサーク」などが人気の ブレンドウイスキーを好む人も多い。

「知名度アップ」

日本国外に「サントリー」の名を知らしめたのは、ビル・マーレ イ主演の2003年の映画「ロスト・イン・トランスレーション」だっ た。マーレイ演じる米国人俳優は、ウイスキーのコマーシャルに出演 するため来日。決めぜりふは「イッツ・サントリー・タイム」だった。

サントリーの酒類カンパニー・スピリッツ事業部プレミアム戦略 部の森本昌紀課長は「映画の公開後、海外でもいろんな人から『映画 を見たよ』と声をかけてもらうことが増えた。特に国際的な知名度の アップという点では非常に効果があった」と、その効果を説明した。

板倉氏は語る。「味がよく、高級感があれば、海外に日本のウイス キーを売ることができる」と。

-- Editor: Le-Min Lim, Mark Beech

--* 参考画面: 翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先: 東京 柴田 広基 Hiroki Shibata +81-3-3201-8867 hshibata@bloomberg.net Editor:Keiko Kambara 記事に関する記者への問い合わせ先: Rocky Swift in Tokyo at +81-3-3201-2078 or rswift5@bloomberg.net; Masatsugu Horie in Tokyo at +81-3-3201-2741 or mhorie3@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: Mark Beech at +44-20-7330-7593 or mbeech@bloomberg.net; Peter Langan at +81-3-3201-7241, or plangan@bloomberg.net; Darren Boey at +852-2977-6646 or dboey@bloomberg.net.

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