日銀総裁:追加的な余地はかなり限定される-長期国債買い入れ(4)

日本銀行の白川方明総裁は18日 午後の定例記者会見で、長期国債の買入額を月1.8兆円に増額したこ とについて「あくまでも金融調節上の必要」に基づくものであり、財 政ファイナンスへの支援が目的ではない、との考えを示した。一段の 増額の可能性については「さすがにここまで増額させると、追加的な 買い入れ余地はかなり限定される」と述べ、否定的な見解を示した。

日銀は同日の金融政策決定会合で、長期国債の買入額をこれまで の月1.4兆円から1.8兆円に増額することを決定した。長期国債の買 入増額は昨年12月以来3カ月ぶり。一度に4000億円増やすのは異例。

白川総裁は今回の措置について「年度明け後も金融市場の安定を 確保するため、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を 行っていくことを目的としている」と言明。「これまでの増額と同様、 あくまでも金融調節上の必要に基づいて行うものであり、今後の国債 増発への対応を念頭に置いて実施するものではない」と述べた。

日銀は長期国債の買い入れについて、銀行券発行残高を上限とす る自主ルールを設けている。10日現在、銀行券発行残高の76兆円に 対し、保有長期国債は44兆円ある。白川総裁はこの銀行券ルールにつ いて「なかなか一般の方になじみがない」と認めた上で、「日銀が内部 的に置いている精神規定ではないかと感じがあるかもしれないが、決 してそういうものではない」と強調した。

銀行券の見直し「全く考えてない」

白川総裁は「今回増額した年間26.1兆円の規模で長期国債の買い 入れを毎年行っていくと、長期国債の保有残高は数年間のうちに銀行 券発行高という上限に近接していく可能性が高い」と指摘。こうした 見通しは「先行きの銀行券の伸びや、国債の満期構成にも左右される ので不確実性は残る」としながらも、「さすがにここまで増額させると、 追加的な買い入れ余地はおのずとかなり限定される」と語った。

銀行券ルールを今後見直す考えはないかという質問に対しては、 同ルールには①円滑な金融市場調節を確保する②長期国債の買い入れ が国債価格の買い支えや、財政ファイナンスの支援を目的とするもの ではないという趣旨を明確にする-役割を果たしていると指摘。その 上で「銀行券ルールを見直すことは全く考えてない」と強調した。

銀行券ルールを見直すことは全くあり得ないと理解してよいのか、 との質問に対しては、「日銀の今回の決定は銀行券ルールに従って行っ ており、金融調節の必要性に基づいて長期国債オペを運営していく」 と述べ、明確な返答は避けた。

長期金利を意識したものではない

今回の措置が長期金利への影響を狙ったものかとの質問に対して は「そうした意識はない」と否定した。長期金利は経済や物価の見通 しに加え、それらについての不確実性の度合いによって決まってくる、 と指摘。「日銀が物価の安定以外の目的に焦点を絞った形で金融政策を 運営していると皆に見られると、不確実性に伴うプレミアムを上げて しまい、長期金利は多分むしろ上がってしまう」と語った。

日銀は前日、銀行の劣後ローンの引き受けを検討すると発表した。 白川総裁はこれについて「政府保証を求める考えはない」と述べる一 方、個別の信用リスクを負担することで「万が一損失が発生した場合、 中央銀行として自己資本復元の努力をしていく」と指摘。具体的には、 政府に対する「納付金の減少」が基本となるとした上で、「そうしたこ とについて政府の理解を得ていくということになる」と述べた。

白川総裁はその上で、政府との役割分担について「経済、金融情 勢がさらに厳しくなって、踏み込んだ方が良いという議論があるとす れば、そうした政策が本当に望ましいかどうかという議論がまずあっ て、もしそれが望ましいという場合に、それを日銀が行うことが適切 なのか、あるいは政府が行うことが良いのかということ自体を正面か ら議論していくことが必要だ」と語った。

政府との役割分担を議論する必要

JPモルガン証券の菅野雅明調査部長は「企業債務を購入し損失 が発生した場合は、日銀の収益が減少することになるが、これは本来 政府(=国民)に還元されるべきシニョレッジ(通貨発行益)が減少 することを意味する」と指摘。「本来は信用リスクを政府が負担し、日 銀は流動性の供給に専念すべきだ」と主張する。

菅野氏はその上で「日銀が今後とり得る政策は非伝統的な政策で、 その多くは本来財政政策でカバーする筋合いのものが多い」と指摘。 「金融政策と財政政策の役割分担についての議論をしっかり行い、国 民に対し説明する必要が出てきた」としている。

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