中国経済が握る日本株命運、最悪は欧州危機誘発も-三菱U証の佐治氏

三菱UFJ証券の佐治信行チーフ エコノミスト兼日本株ストラテジストは、「世界経済の影響を最も受け る日本株のサポート要因は中国経済のみ」と見ている。中国の回復が鈍 ければ、日本に影響を与えるだけでなく、6月までに大震度の欧州金融 危機が起こる危険があるという。ブルームバーグ・ニュースとのインタ ビューで述べた。

TOPIXに続き、日経平均株価も今月に入ってバブル経済崩壊後 の安値(終値)を更新した。米インスティチューショナル・インベスタ ー社の2008オールジャパンのストラテジー&エコノミクス部門、日本 経済新聞社の08年人気エコノミスト部門で1位の佐治氏によると、安 値の要因は「日本企業は利益率が低い収益構造のため、売り上げが落ち ると、すぐに赤字になる体質を今回の危機で露呈したため」という。

景気の急激な悪化で世界的に企業収益は悪化傾向にあるが、「日本 以外の他国ではここまで赤字企業が続出していない」と佐治氏。日本企 業は収益のクッションが少ないことが証明された状況下で、「中国の景 気が悪化するようなら、内需が低迷したままの日本株はサポート要因が 消える」(同氏)と見る。

貿易統計によれば、日本の輸出相手国として中国は01年度以降、 米国に次いで2位に位置。輸出の対中伸び率は07年が前年比18.9% だったが、08年は0.9%と9年ぶりの低水準にとどまった。

4月から在庫調整の可能性

海外景気に影響を受けやすい日本にとって、先行きを楽観できない リスクは「中国経済」と「欧州金融システム」の2つだ、と佐治氏は語 る。中国の08年10-12月期の実質GDPは前年同期比6.8%増と、 7年ぶりの低い伸びだった。

中国政府は景気てこ入れを狙って総額4兆元の景気対策を打ち出し ている。1月の中国の銀行の新規融資額は昨年から続く金融緩和の流れ も受けて過去最高の1兆6200億元となり、2月も1兆700億元と高水 準を達成した。3月初旬に中国を訪問してきた佐治氏は、「公共事業関 連企業に資金が向かっており、新規融資の増加はポジティブ」と話す。

ただ、資金供給を受けた中堅企業や中小企業を中心に、足元では鉄 鋼製品や鉄鉱石の港湾在庫が積み上がってきていると佐治氏は警告。中 国は「4月から在庫調整局面に入る可能性が高い」とし、中国経済の回 復の持続性は楽観視できないと見る。仮に経済回復の持続性が乏しい状 況になれば、「中国政府は60年代の日本のように『成長』から『生活 者のセーフティネット作り』へと政策をシフトするだろう」と予想する。

欧州は金融危機リスク

一方、欧州の金融システムが抱える火種は、経常収支の赤字国が多 いにもかかわらず、預貸率が高い点にあると佐治氏は分析。特に欧州金 融機関の貸出先が多いロシアは、「もし原油価格がバレル当たり30ド ル台前半まで低迷すれば経常赤字に陥り、96-97年ごろの韓国と同じ 状況になりかねない」と懸念を示す。

世界経済のけん引役である中国が、景気対策で1-3月期に回復し ても、「4-6月期に5%程度の成長に戻るようなら原油は30ドル割 れもあり得る」と佐治氏。その結果、ロシアがデフォルト(債務不履 行)となれば欧州金融システムも崩壊する可能性が高く、原油価格の下 落は非常に危険という。欧州金融危機が起これば、世界経済へ与える影 響度は「米国で起こったサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ロ ーン問題並みのマグニチュードになるだろう」と、同氏は警戒する。

ロシア中央銀行などによると、ロシアの民間部門の対外債務残高は、 銀行が02年末の142億ドルから08年6月には1928億ドル、その他 (国営エネルギー企業など銀行以外)は338億ドルから2955億ドルへ 増加している。ロシアの外貨準備高は6日時点で3805億ドル。

中国の新規融資額、欧州国債スプレッド注視へ

佐治氏は、中国が再び成長に回帰し、欧州も金融危機を回避できる かどうかの分岐点について「早ければ3-4月、遅くとも6月までには はっきりするだろう」と予測。そのためには、中国の貸出状況、欧州で 最も信頼を受けているドイツとほかの欧州諸国との10年債利回りのス プレッドをともに注視する必要があるという。

仮に悲観シナリオの確率が高まれば、「投資家は資産をキャッシュ 化し、損失を出さないことを考えるしかない」(佐治氏)。さらに中国 が成長軌道に戻っても、中国の輸入シェアに占める足元での日本の低下 傾向、景気対策での中国製品優遇から、「日本企業は過去5年のような ベネフィットを中国から受けないだろう」(同氏)という。第一生命経 済研究所によると、中国の輸入に占める日本の比率は06年が14.6%、 07年が14%、08年が13.3%だった。

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