「日銀サーベイ」次の一手は長期国債の買入増額か-非常時は株買いも

【記者:日高正裕】

3月16日(ブルームバーグ):日本銀行は17、18両日、金融政策 決定会合を開く。ブルームバーグ・ニュースの調査では、政策金利に ついては有力日銀ウオッチャー13人中12人が現状維持を予想した。 日銀の打つ手が限られる中、今後は財政政策との融合が進むとの見方 から、次の一手として長期国債の買入増額を挙げる向きが増えている。

12日発表された昨年10-12月の実質GDP(国内総生産)成長 率の2次速報値はマイナス12.1%と、1次速報値(マイナス12.7%) から小幅上方修正された。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコ ノミストは「1-3月は前期比年率マイナス13.1%と、10-12月をし のぐ落ち込みになる」と予想する。

大和総研の田谷禎三特別理事は「実質GDP成長率は今年度がマ イナス3%、来年度は最も楽観的にみてマイナス4-5%になり、10 年度にプラスになるかどうかも不透明になってきた」とみる。JPモ ルガン証券の菅野雅明調査部長は「マイナス成長は少なくとも今年7 -9月まで続こう。この結果、需給ギャップは前例をみないほど拡大 する。今後はデフレ圧力が強まることを覚悟すべきだ」と語る。

内閣府によると、昨年10-12月の総需要と供給力の乖離(かいり) を示す需給ギャップは、1次速報段階でマイナス4.3%(約20兆円) に広がった。野村証券の松沢中チーフストラテジストは「2009年1- 3月時点で需給ギャップはGDP比マイナス6%を超える見通しだ。 こうなると循環景気が多少回復しても、需給ギャップを埋め、デフレ 懸念が後退するのははるか先になる」と指摘する。

テイラールールで政策金利はマイナス8%

田谷氏は消費者物価指数(除く生鮮食品)前年比上昇率について も「マイナス2-3%にもなり、しばらく続くだろう」とみる。潜在 成長率と現実の成長率、それに目標となる物価上昇率と現実の物価上 昇率の差から適正な政策金利を求めるテイラールール。クレディ・ス イス証券の白川浩道チーフエコノミストによると、これを用いた適正 な政策金利は09年末までにマイナス8%に達するという。

政策金利は現在0.1%。金利の下げ余地が限られる中、日銀はコ マーシャルペーパー(CP)や社債の買い入れなど非伝統的な政策を 進めている。しかし、河野氏は「米国と異なり、日本は銀行貸し出し による資金仲介のウエートが高いため、購入する金融資産の範囲はあ まり広がらない」と指摘。信用緩和には限界があるとの見方を示す。

モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミストは「日 銀は通常の金融政策手段を使い果たす中で、財政当局による政策発動 をむしろ待ち構えている可能性さえある」という。実際、日銀の白川 方明総裁は13日の衆院財務金融委員会で、「大幅な有効需要の落ち込 みに対し、金融面からの対応だけでは限界があり、適切な財政政策の 発動が必要だ」と述べ、財政政策に対する異例の働き掛けを行った。

長期国債の買い入れが次の一手か

バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジス トは「日銀が昨年秋以降注力してきた信用緩和の政策は、ほぼ出し尽 くした。この先経済的に意味のある政策として残っているのは、財政 ファイナンスに踏み込むかどうかだろう」と語る。具体的に考えられ るのは、現在は月1.4兆円のペースの長期国債の買い入れ増額だ。

長期国債の買い入れについて、日銀は銀行券発行残高を上限とす るという自主ルールを設けている。10日現在、銀行券発行残高76兆 円に対し、日銀保有の長期国債は44兆円。大和証券SMBCの岩下真 理チーフマーケットエコノミストは「長期国債買い入れは、銀行券残 高ルールの下でもあと2、3千億円程度の増額なら可能」とみる。

日銀は昨年12月から3会合連続で追加策を講じているだけに、 「3月はさすがに無風となりそう」(岩下氏)という見方が強い。しか し、市場の過剰反応を避けるため、長期国債の買い入れ増額のタイミ ングは「財政拡張とは結び付けないような形になると思われる。今会 合で表明されても不思議ではない」(松沢氏)との声もある。

非常時の株買いも

東京株式市場は13日こそ大幅反発したが、12日にはTOPIX が25年ぶりの水準に下落するなど不安定な値動きを続けている。武藤 敏郎前副総裁は10日、ブルームバーグ東京支局で講演し、米国が極端 に落ち込んだ際の危機回避策として、日銀が株価下支えの買いを入れ ることは「政策として十分価値」があり「正当化される」と語った。

須田美矢子審議委員も4日の講演で「いざとなれば通常の政策ル ールを逸脱するほどの思い切った策を打つ」との姿勢を示した。信州 大学の真壁昭夫経済学部教授は「3月に入り日経平均株価がバブル後 の最安値を更新する中、米国の大手金融機関が破たんするといった非 常時においては、投資家心理を下支えし、取引を維持させるという観 点から、日銀による株式取得は考慮するに値する」としている。 ============================================================== ◎利下げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2009年3月】クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト

【2009年4-6月】第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト、 モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミスト、日興シテ ィグループ証券の佐野一彦チーフストラテジスト ============================================================== ◎利上げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2010年1-3月】クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミ スト

【2010年7-9月】信州大学の真壁昭夫教授

【2010年10-12月】モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエ コノミスト

【2011年以降】大和証券SMBCの岩下真理チーフマーケットエコノ ミスト、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト、東短 リサーチの加藤出チーフエコノミスト、JPモルガン証券の菅野雅明 調査部長、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト、BNP パリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト、日興シティグループ証 券の佐野一彦チーフストラテジスト、大和総研の田谷禎三特別理事、 野村証券の松沢中チーフストラテジスト、バークレイズ・キャピタル 証券の森田長太郎チーフストラテジスト ============================================================== ◎無担保コール翌日物金利の予想水準は以下の通り(敬称略50音順)

                     09   09   09   09   10   10    10   10
                    3末 6末 9末 12末 3末 6末 9末 12末
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調査機関             13   13   13   13   13   13   13   13
 中央値             0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
 最高               0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.00 0.30 0.30
 最低               0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
--------------------------------------------------------------
大和SMBC証 岩下     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
みずほ証 上野       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
東短リサーチ 加藤   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
JPモルガン証 菅野      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
第一生命経研 熊野   0.10 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
BNPパリバ証 河野  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
モルガンS証 佐藤      0.10 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.25
日興シティG証 佐野     0.10 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
クレディS証 白川   0.00 0.00 0.00 0.00 0.10 0.10 0.10 0.10
大和総研 田谷       0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
信州大 真壁         0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30 0.30
野村証 松沢         0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
バークレイズC証 森田   0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

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アンケート回答期限は13日午前8時。「日銀サーベイ」金利予想、 経済・物価情勢、金融政策の展望コメントを16日朝に送信しています。

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