【米経済コラム】オバマ減税は「階級闘争」ではない-J・ベリー

富裕層の所得税を2000年の水 準まで再び引き上げることを「階級闘争」と言うのなら、私は古いラ イフル銃を引っ提げて参戦する用意がある。

「階級闘争」とは何とおかしなレッテルだろうか。公正さに重き を置き、支払い能力を考慮して所得水準ごとに税率を変えた累進所得 税は、特定の階級を攻撃するものだなどとはとても言えまい。

オバマ米大統領が議会に提出した10年度(09年10月-10年9 月)予算教書で示した最高税率は実際、現行法と変わらない。そもそ も現行法が、11年に税率を最高所得者層については35%から

39.6%に、その次の層は33%から36%にそれぞれ引き上げると定 めているのだ。

では当時のブッシュ大統領と議会共和党はなぜ、01年減税法に 税率の11年の期限切れを盛り込むのを認めたのだろうか。これは、 減税を一時的なものにすることで歳入の予想減少幅を抑えることを 図った条項の1つだった。もちろん、共和党はそもそも減税を恒久 化するつもりだった。

予算教書では、所得が25万ドル(約2400万円)を超える夫婦 (独身者については20万ドル超)に関してのみ所得税減税の期限切 れを認め、キャピタルゲイン(値上がり益)や配当への税率を現行の 15%から20%に引き上げるとしている。

これは不公平だろうか。高所得者層の負担増に耐える能力を考え れば、私はそうは思わない。最高水準の所得層への富の集中が増えて いることは疑いない。

承認には高い壁が

歳入の増加分は、気候変動などの環境対策や医療保険制度改革に 充当される見通しだ。そして好都合なことに、増税が開始されるのは 米景気回復が見込まれる11年以降になる。

予算教書によれば、納税者の多くにとっては小幅な減税となる。 景気浮揚対策に加え、エネルギーコストの負担増を補うためだ。政 府が企業ごとにCO2の排出枠(キャップ)を割り当て、企業間で の排出権の売買(トレード)を認める「キャップ・アンド・トレー ド」方式での排出権取引制度が実施されれば、エネルギーコストの増 加が見込まれる。

オバマ大統領の予算教書には、景気刺激策のような深刻な短期的 問題と、気候変動のような長期的問題に同時に対処するという、めっ たに見られない一貫性がある。

しかし、予算教書にはリスクもある。オバマ大統領は議会に対し、 中間層減税などいいところだけをつまみ食いするのではなく、難しい 部分も含めたパッケージとして取り扱うよう説得する必要がある。

承認を得るのは簡単ではない。民主党指導部の一部も農業補助金 規制などで反対している。高額所得世帯に対する住宅ローン利息や慈 善寄付金などの税控除額に制限を設けることへも疑問の声が上がって いる。

ただ、投資会社のファンドマネジャーが受け取る「キャリード・ インタレスト」と呼ばれる投資成功報酬に、キャピタルゲイン(値上 がり益)税ではなく通常の所得税税率を課すというオバマ大統領の計 画に関しては、筋の通った反論は出ていない。

強力な手段にあらず

1993年に当時のクリントン大統領が高額所得者層の税率を

39.6%と36%に引き上げると提案した際、米国民の勤労意欲や投資 意欲が損なわれると盛んに言われたものだ。中には、多くの人があく せく働くのを止めるため、税率を上げても税収は変わらないと主張す るエコノミストもいた。

ところが実際は、90年代後半から好況が続き、米議会予算局 (CBO)から、増税は大幅な歳入増につながるとお墨付きをもらう こととなった。

ブッシュ前大統領の減税は何をもたらしただろうか。ぱっとしな い成長と巨額の財政赤字、金融市場の操作だった。

実のところ、税率は一部の人が考えるほど強力な手段ではない。 累進課税も、保守派が考えるような倫理的な問題ではない。税率をわ ずか数年前に戻すのを非倫理的だとか階級闘争宣言などとはとても言 えないだろう。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニ ストです。こ のコラムの内容は同氏自身の見解です)

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