トリシェECB総裁の秘密兵器-預金金利引き下げで実質ゼロ金利政策

欧州中央銀行(ECB)は、リセ ッション(景気後退)退治の新兵器によって、金融政策の実態がゼロ 金利に一段と近づいている。

トリシェ総裁の下、ECBは下限政策金利である翌日物の中銀預 金金利を今月、0.5%に引き下げた。表向きの政策金利である短期買 いオペ(売り戻し条件付き債券買いオペ=レポ)の最低応札金利は

1.5%であるものの、中銀預金金利はイングランド銀行の政策金利と 同水準となったほか、米フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標 (0-0.25%レンジ)にも近い。

これによって、銀行間金利が低下し、ユーロ経済が戦後最悪のリ セッション(景気後退)に沈むなかで対応が不十分だとの批判にトリ シェ総裁は対応が可能となる。総裁は5日の定例政策委員会後の記者 会見で、中銀預金金利は「非常に非常に低い」と何度も述べた。

フォルティス銀行の欧州担当チーフエコノミスト、ニック・コー ニス氏(アムステルダム在勤)は、トリシェ総裁が「預金金利こそが ECBの金融政策の主要指標になったと暗に認めている」と説明。「E CBはますます抵抗なくそれを指摘するようになった。政策金利が高 過ぎると責められてきたのでなおさらだ」と語った。

今月の利下げ実施後、ユーロ翌日物無担保金利加重平均(EON IA)は11日、0.85%に低下し、政策金利を約0.7ポイント下回っ た。

資金供給

中銀預金金利が事実上の政策金利になった主因は、ECBが昨年 10月に決定した銀行に対する無制限の資金供給措置だ。これによって、 銀行間市場で無理に資金調達する必要がなくなり、ECBの決定に先 立つ7年間は平均で預金金利を1.06ポイント上回っていたEONI Aは、その差を縮め、11日は0.35ポイントとなった。

政策委メンバーのウェーバー独連銀総裁は5日、無制限の資金供 給措置で「銀行は政策金利をかなり下回るレートで借り換えができる ようになった。銀行がその分、消費者や企業向けに融資を回し、景気 が刺激されると期待する」と述べた。

ECBは5日、無制限の資金供給を少なくとも年末まで続ける方 針を示している。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グルー プ(RBS)のユーロ圏担当チーエコノミスト、ジャック・カイユ氏 は「無制限の流動性供給継続によって、ECBは予見可能な将来にお いて翌日物金利を非常に低く維持するつもりだ」と指摘。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのロンドン在勤エコノミ スト、ジル・モーク氏は、トリシェ総裁はECBの金融政策が米連邦 準備制度理事会(FRB)やイングランド銀と「実態はそれほど変わ らない」と説明でき、「一般に考えられている以上にECBが対応して いるとアピールしている」とみている。

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