【米経済コラム】「希望」と「安心」の住宅支援策の実力-C・ボーム

米財務省は先週、公的資金750 億ドル(約7兆4200億円)を投入して差し押さえを防ぐ住宅支援策 の詳細を発表した。ローン借り換えや返済条件緩和を柱とするこの措 置を誰が本当に負担しているのかはお分かりだろう。

今回の計画は第4弾か5弾となる住宅支援策ではあるが、「希望」 やら「安心」といったキャッチフレーズが付いたこれまでの支援策で は、住宅販売や価格の容赦ない落ち込みや延滞・差し押さえ急増に歯 止めがかかっていない。

調査会社ISIグループのマネジングディレクター、アンドル ー・ラペリエール氏は「まったく駄目だ」と語る。

例えば、米連邦住宅局(FHA)が2007年8月に意気高らかに 始めた「FHA安心」プログラム。24万世帯の差し押さえを回避する はずが、「4000件の融資を提供した」だけだと、ラペリエール氏は米 議会予算局(CBO)の報告書を基に指摘する。また、リスクの高い 借り手40万人を支援する目的で昨年10月に導入された「住宅所有者 に希望」プログラムがこれまでに完了したローンは25件だ。

オバマ政権が発表した900万世帯を対象にする最新の支援策が米 財務省の触れ込みどおりに「住宅に手が届くように」本当にできるの か、懐疑論者でなくとも疑念が生じよう。

全米住宅建設業者協会(NAHB)のチーフエコノミストだった マイケル・カーライナー氏は、政府支援策について「効果はあるが、 政府はそうした効果をもたらすとするローン件数をかなり水増しし ている」と指摘する。

最大900万世帯を支援

最新支援策では、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディ マック(連邦住宅貸付抵当公社)保証の住宅ローンを抱える400万- 500万世帯の住宅所有者は、ローンを返済中でかつ住宅価値に対する ローン比率が105%を超えない限り、30年固定の低利ローンに借り換 えができる。さらに、差し押さえリスクに直面する300万-400万世 帯は負担補助付きの契約に見直すことで毎月の返済額を月額の総所 得の31%以内に押さえることができる。低金利は5年間適用される。

住宅保有者にとって、かなり良い内容に聞こえるではないか。政 府はさらに良い条件を掲げる。住宅ローンの元本を削減する目的で借 り手に5年間支給する年1000ドルのボーナスだ。つまり、借り手の 契約上の義務を遂行するため、政府が金を支払うというものだ。また、 債権回収業者は返済条件の見直しに応じれば500ドルを受け取る。

ローラー・エコノミック・アンド・ハウジング・コンサルタンツ を創業したトーマス・ローラー氏はこの現金支給策を「ひどい公共政 策だ」と指摘した上で、借り手がデフォルト(債務不履行)となれば、 負の連鎖が起きるため、ローン条件の見直しに向けた「一段の奨励策」 を政府は示したのだろうと語る。ここでいう負の連鎖とは、例えばわ たしの自宅が差し押さえられれば、隣家の価値が下がるというものだ。

賃貸住宅の利用者

しかし、ローラー氏が本当に問題視しているのは、政府支援を受 けられる対象から賃貸住宅の利用者が除外されている点だ。米連邦準 備制度理事会(FRB)がまとめた可処分所得に対する債務返済割合 によると、賃貸利用者は住宅所有者以上に苦しんでいる。雇用統計を 分析したローラー氏も同様の結論に至った。住宅保有の公算が小さい 若手労働者や黒人、ヒスパニック系の各層で失業率が過去1年で急上 昇し、リセッション(景気後退)の影響を賃貸住宅利用者がより強く 受けている様子が示唆されたためだ。

ローラー氏は「賃貸利用者は何の支援も得られないのに、彼らの 税金が住宅所有者を支援している」と強調する。それでも同氏は、住 宅支援策は「政府が負担する大きなコストと引き換えに、多くの住宅 保有者に対してかなりの安心を与え得る」とも話す。

ISIのラペリエール氏は、最大100万戸の住宅が支援策によっ て差し押さえを免れると見込む。政府が期待する300万-400万戸は 下回るが、無策よりはましだろう。ただ、この小さなプラス効果も一 連のマイナス効果の影に隠れてしまうと同氏は指摘する。

ラペリエール氏は「住宅価格が所得との比較で高過ぎる上に、需 要は崩れ、信用は逼迫(ひっぱく)している。失業は増え、富が失わ れている」として、支援策が「最も寄与できるのは、住宅価格の値下 がりペースを変えることぐらいだ」と語る。

誰か、住宅支援策の第6弾をお願いします。 (キャロリン・ボーム)

(キャロリン・ボーム氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラム ニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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