【経済コラム】日銀総裁が重責に耐えるのに必要なこと-Wペセック

日本で今、最も注目を浴びようとし ているのは日本銀行の白川方明総裁だ。最近の麻生太郎首相の不人気 を考えると、これはさまざまな意味を持つ。世界2位の経済大国が再 びデフレに陥ろうとするなか、時間の経過とともに白川総裁に対する 注目度は一段と大きくなるだろう。

白川総裁は、ゼロ金利政策の復活について強い圧力にさらされて いる。だが、総裁がなすべきことは政策金利である無担保コール翌日 物金利を年0.1%に断固として維持することだ。こうした小さな抵抗 はそれほど勇ましいとは言えないだろうが、象徴的な意味合いはある かもしれない。同じことは、米連邦準備制度理事会(FRB)やイン グランド銀行などゼロ金利の目前に追い込まれつつあるほかの中央銀 行にも当てはまる。

日本はすでにほぼゼロ金利の状況であり、極めて小幅な追加利下 げが状況改善に役立つ本気で考えている者はいないだろう。ゼロ金利 政策に伴う真の課題は「量的緩和」だ。つまり大量の資金供給を通じ た流動性向上と与信拡大の試みだ。日本の金融システムが機能不全に 陥っていた1990年代後半と2000年代に入っての数年はそれが有効だ った。そして今やFRBとイングランド銀もその量的緩和に乗り出し た。

効果は「望み薄」

だが、今はゼロ金利政策を取るには問題点が2つある。1つ目は、 世界中の信用市場が凍りつく状況では金利がどの水準であろうと資金 の流れを生み出すのが難しいということだ。2つ目は、ゼロ金利が金 融市場をいかに台無しにしてしまうかということを一番よく分かって いるのが日銀だということだ。

マッコーリー証券(東京)のチーフエコノミスト、リチャード・ ジェラム氏は、「状況が正常に戻り次第なくなると分かっている流動性 供給がインフレ期待を生み出すことはなく、効果は望み薄」と話す。 最近のエネルギーと食品の価格高騰も日本ではインフレにつながるこ とはなかった。

日本経済にとって唯一の明るいニュースは、円が1月21日以降、 ドルに対し7.5%下落していることだ。円は2008年に24%上昇しただ けに、ありがたい小休止だ。しかし、これも日本の景気見通しとこの 国のリーダーシップに対する悲観的な見方の反映であることには違い ない。

日本は04年3月までの1年3カ月間にギリシャの国内総生産(G DP)に匹敵する資金を投じて円安誘導を行った。今、円が下落して いるのは、日本の政治がまひ状態に陥ることへの懸念からだ。

「日本売り」

投資家が「日本売り」を叫ぶ一方で、日本の政治家は国民の関心 をカネで買おうとしている。総額2兆円の定額給付金を有権者は薄っ ぺらな政治的策略だととらえている。ほんの少し前まで景気浮揚効果 は薄いとしてこうした戦略に乗り気ではなかった麻生首相は、支持率 低下と政界からの圧力を受けその姿勢を変えた。総選挙を控えた今年、 有権者がシニカルになるのは当然のことだ。

定額給付金の効果はあいまいだ。もしこれが消費者心理や政治へ の信頼感の回復に役立つとしても、そんなことは皆、やがて忘れてし まう。与党・自民党がなすべきことはそうした小手先の政策ではない はずだ。

巨額の公的債務に苦しむ日本だが、それでも借り入れを増やす以 外の選択肢はない。昨年10-12月期の大幅なマイナス成長は、今年1 -3月期のGDP統計もひどいものになることを示唆している。憶病 風に吹かれている時間は日本にない。

今はまた、自民党がこの20年間に担ってきた力仕事を日銀がすべ て引き受けてくれると期待する時期でもない。ストラテジストらによ れば、海外投資家が日本から手を引く臨界点にはまだ達していない。 日本政府はそうしたシナリオを回避するよう行動する必要がある。

昨年4月に就任した白川総裁は、ゼロ金利の復活に抵抗しており、 別の措置を打ち出し、金融機関が保有する社債を買い取っている。金 利はすでにゼロ近く、日銀は資産買い取りを通じ、企業に資金を供給 している。

それでも白川総裁はかつてないほどの重責を担う立場に置かれる ことになる。日本が過去に犯したミスを避けることが、その重責に耐 えることにつながるだろう。それはまた、FRBなど他の中銀にとっ ても言えることだ。 (ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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