個人の外債ファンド人気が曲がり角、円高・金利差縮小響く-新潮流も

日本の投資信託に個人の膨大な資 金を呼び込んだ外債ファンドが、人気の曲がり角を迎えている。昨秋以 降の急速な円高、世界的な金利低下による内外金利差の縮小で、為替リ スクを取ってでも投資する魅力が薄れ、販売額が細っている。一方、外 債ファンドが持つ定時分配、相対的に高い利回りという商品は国内に乏 しく、米国社債ファンドに資金が集まるなど新たな潮流も見えてきた。

ドイチェ・アセット・マネジメントの松尾健治チーフ・ファイナン シャル・ストラテジストは、「個人は分配金の高さを見て投資する傾向 がある。米国国債などの利回りが低下した結果、分配金の引き下げが相 次いだこともありソブリン債中心に外債ファンドは以前ほど売れていな い」との認識を示す。

昨秋以降に深刻化した米国発の世界的な金融不安、信用収縮の影響 で、ドル・円相場が13年ぶりに1ドル=90円を割れるなど円の独歩高 が進行。世界規模での景気悪化が加速し、米連邦準備制度理事会(FR B)や欧州中央銀行(ECB)など各国中央銀行は政策金利の引き下げ で歩調を合わせた。米フェデラルファンド(FF)レートの誘導目標レ ンジは0-0.25%と、日本の0.1%と変わらない。

運用環境の激変は、既存の外債ファンドに運用方針の転換を迫った。 4兆5000億円と国内最大の資産規模で、「グロソブ」と呼ばれる国際 投信投資顧問の「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」で は「円資産の組み入れ比率を過去最高水準にした『金融危機対応型ポー トフォリオ』を長く維持している」(運用担当者の堀井正孝氏)という。

6日現在の各国の10年国債の利回りは、日本1.28%、米国

2.87%、独2.92%。米独がこの半年で急低下した結果、日本に対する 利回り優位性は薄れ、外債投資の魅力自体も低下した。

高分配金維持が困難に、運用規模は半年で急減

外債ファンドが個人に支持されてきたのは、国内より利回りが高い 海外債券のクーポン収入などを原資に、分配金を安定的、定期的に受け 取れるためで、年金の補完商品と位置付けて購入する年配者も多い。し かし、長期金利の急低下は個人が重視する分配金にはマイナスに作用、 高金利時と同じ分配金を支払うことが困難になってきた。

「グロソブ」はことし1月、毎月支払う分配金を1万口(当初=1 万円)当たり40円から30円に引き下げた。それまでの8年間は40円 を維持しており、定期収入が4分の3になったことは個人にショックを 与え、日々の解約額が設定額を上回る状況が続いている。

外債ファンドの運用規模は縮小傾向だ。投資信託協会によると、公 募投信が保有する海外債券は1月末時点で14兆4420億円。2008年7 月の最高額21兆1427億円の3分の2に減り、05年11月以来の低水 準に落ち込んだ。円高による保有債券の評価額の目減りが響いているほ か、資金も流出している。

追加型株式投信の商品分類別資金動向を見れば、外債を主要投資対 象として毎月分配金を支払うバランス型の毎月決算型は、1月に338 億円の資金が純流出した。国内株式型の純流出額78億円、国際株式型 の89億円に比べて解約の多さが分かる。

日本にないタイプの米国社債ファンド

外債ファンド全体の販売が鈍る中、「相対的に利回りが高い債券で 運用するファンドには投資資金が向かっている。その一つが米国社債」 (ドイチェアセットの松尾氏)だ。野村アセットマネジメントが1月に 新規設定した「野村米国ハイ・イールド債券投信(通貨選択型)」は、 コース15本の当初設定額合計が1287億円と、新規投信としては07年 7月以来の大型設定となった。3月6日現在の純資産合計は2650億円。

ファンドは、米国社債の中でも格付けが低く、利回りが高いハイ・ イールド債を投資対象としている。同ファンドの販売会社は野村証券で、 野村ホールディングスのグループ広報部広報課の畦地理代課長は、「リ スクが高い商品ではあるが、リターンもそれなりに得られ、毎月高い分 配金が見込まれる」点を販売好調の背景と見ている。

資金が集まりやすい新商品にとどまらず、既存商品にも資金が入っ ている。フィデリティ投信が1998年から運用する「フィデリティ・U Sハイ・イールド・ファンド」は、約70本ある同社の公募投信の中で 「いま最も売れている商品」(太田創インベストメント マーケティン グ部長)だ。毎月支払う分配金は、07年12月から95円を継続する。

歴史的な高利回りに世界が注目

米国の社債は、昨年9月の米大手投資銀行のリーマン・ブラザーズ が破たんしたショックにより、信用リスクを回避したい投資家の投げ売 りが殺到、価格は暴落した(利回りは大幅上昇)。3月6日時点の社債 の利回りは8.17%、ジャンク債(高リスク・高利回り債)に至っては

20.6%(いずれもメリルリンチの社債マスター・インデックスによ る)で、国債に対するスプレッドは歴史的な高さになっている。

「PCA米国高利回り社債オープン」など公募私募合わせて4480 億円の米社債ファンドを運用するピーシーエー・アセット・マネジメン トでは、「米金融安定化策や景気刺激策によって市場環境が落ち着けば、 利回りは適正水準に戻っていく。スプレッドが異常に開いているいまが、 投資の好機」(高橋庸介常務)との見方だ。

米国社債に投資魅力を感じているのは日本の個人だけではない。米 財務省が発表した昨年12月の対米証券投資動向によると、米国外の投 資家は米国社債を6カ月ぶりに買い越した。買越額は412億ドル。フ ィデリティ投信の太田氏は、「ハイ・イールド債のデフォルト(債務不 履行)率は今後上昇が見込まれるが、ファンドはリスクが低いと判断し た銘柄を数多く保有しているため、その影響を抑えて高利回りを享受す ることができる」と話している。

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