書評:ベアー・スターンズの「秘め事」を白日の下に-「カードの家」

ベアー・スターンズの最後は突然 で壮絶だった。

向こう意気の強い証券会社が1年前、突然死に向け坂を転げ落ち 始めたとき、アラン・シュワルツ最高経営責任者(CEO、当時)は パームビーチで報道関係の会議に出ていた。デトロイトでブリッジの 大会に参加していたジミー・ケイン会長(同)は、飛行機に飛び乗っ てあわててニューヨークに戻ろうとはしなかった。

ベアー・スターンズの骨を拾うことになるJPモルガンのジェイ ミー・ダイモンCEOはマンハッタンのギリシャ料理店で52歳の誕 生日を祝おうとしているところだった。

ウィリアム・D・コーハン氏の新著、「ハウス・オブ・カーズ (仮訳:カードの家)」の第1章が描く3つの場面だ。この本は、今 も米経済を揺るがし続けているウォール街の歴史的な事件、ベアー・ スターンズ崩壊を再現してみせる。

記者の経験もあるコーハン氏はラザード・フレール(現ラザー ド)の元バンカー。既著に同社の内実を描いた「ザ・ラスト・タイク ーンズ」がある。新著では利かん気なベアー・スターンズの台頭と流 れ星のような瞬く間の墜落を、時間を追って描いた。2008年3月に JPモルガンの腕の中に倒れこむまでの道筋には、世界経済を大恐慌 以来で最悪の金融危機に陥れた貪欲(どんよく)とおごり、狂気が散 らばっている。

「秘め事」

危うさを内包したウォール街の本質は今や明らかになっている。 ベアー・スターンズなど投資銀行は、資産と評判を裏付けに1日に数 百億ドルというカネを借り入れていた。その「資産」の多くは、流動 性の低い住宅ローン関連証券だった。

「ウォール街の証券会社として知られていたグループの『秘め 事』は、誰もが大なり小なりこのような方法で事業を回していたとい うこと、つまり誰もが常に、24時間以内に資金繰り危機に陥る可能 性を抱えていたということだ」とコーハン氏は指摘している。

本著の中でコーハン氏が自身の見解をにおわせるのはこの1カ所 のみ。あとは、銀行幹部や中央銀行当局者、政府当局者、投資家、ア ナリストなどとのインタビューを基に、公表された事実と電子メール のやりとり、裁判所資料、ケイン氏やダイモン氏、ニューヨーク連銀 総裁だったティモシー・ガイトナー氏(現米財務長官)ら主役級のセ リフをつなぎ、ドラマを紡いでいく。

同業他社の支援拒否に怒ったベアー・スターンズ幹部の1人が上 着を床に投げつけるシーンや、連銀窓口貸し出しの利用をベアー・ス ターンズに認めないガイトナー総裁(当時)を口汚くののしるケイン 氏など、生々しい現実が描かれる。

ニューヨークに飛んで帰らなかったケイン氏が、アルフレッド・ ベルサーチ氏とプレーしていたことも本著から分かった。 (ジェームズ・プレスリー)

(ジェームズ・プレスリー氏はブルームバーグ・ニュースの劇 評家です。この評論の内容は同氏自身の見解です)

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