中川前財務相も改善に一役買える?日本で低いアルコール依存症の認知

飲酒運転中に自動車を電柱にぶつ け、胃がんになってからも毎日のように飲酒を続けた酪農家のまさみ 氏(仮名)の娘は、父親がアルコール依存症だとは「一度も思わなか った」と語る。医師からも依存症とは「一度も言われなかった。たぶ ん先生の頭の中にはそういう感覚がない」という。

久里浜アルコール症センターの樋口進副院長によれば、日本では アルコール依存症の認知度が低いため、政府がこの問題の調査に動か ない。ただ、2月に中川昭一財務相兼金融担当相(当時)が7カ国財 務相・中央銀行総裁会議(G7)後の記者会見でろれつが回らず、酒 に酔っているように見えたことから、飲酒問題は世界的に注目を浴び ることとなった。2月17日に辞任した同氏は、風邪薬を飲み過ぎた ためと説明したが、飲酒が原因で過去に問題を起こしたことは否定し なかった。

樋口副院長は「一般の人は、駅のあたりでごろごろ寝て酒を飲ん でいる人だけがアルコール依存症だと思っているだろう。多くの人は、 わたしは多分関係ないと思っている。が、問題は実は大きい」と語る。

厚生労働省によれば、日本でアルコール依存症の成人は全体の 4%の約440万人にすぎない。米保健社会福祉省(HHS)によれば、 米国での比率は約7.4%。

厚生労働省の当局者によれば、同省の精神・障害保健課がアルコ ール依存症の調査向けに確保できた昨年の予算は皆無だった。これに 対し、米国立アルコール症センター(NIAAA)への米政府支出は 4億3600万ドルだ。また、東京大学の1993年調査によれば、日本 で飲酒に起因する医療費と失われた生産性は年間で6兆7000億円。 同調査は現在入手できる調査で最新のものだ。

人間関係の円滑化に飲酒が役立つとみられる日本では、女性の社 会進出に伴って女性のアルコール依存症が増えるだろうと、樋口副院 長は指摘する。また、団塊の世代も定年までは「会社の中のフレーム ワークにいたのでヘビードリンカーでもなんとか仕事をし続けるが、 定年してそのフレームワークがなくなってしまうと、飲酒のコントロ ールをしないで飲み始める」人が増えるという。

米国でアルコール依存症に対する意識が高まったのは1978年。 フォード前米大統領(当時)のベティ夫人がアルコール依存などに苦 しんでいることを明らかにし、治療入院したためだ。

樋口副院長は日本でも著名人の行動によって、国民の意識が変わ る可能性を指摘する。中川前財務相がこの問題について「スピークア ウトするのが一番いい」という。

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