【米経済コラム】「ノーディール」の共和党、破局の道歩む-J・ベリー

米共和党は自ら政治的な破局を招い ている。経済情勢が悪化するなか、成長や市場そして企業を重視して きた同党は、リセッション(景気後退)からの早期脱却と雇用改善に 向けたオバマ大統領の全ての取り組みに反対している。

議会共和党は、大統領が推進した総額7870億ドルの景気刺激策に ほぼ全員が「ノー」を突きつけた。税金の無駄遣いであり、国家の債 務拡大につながるだけで、景気回復にはほとんど役立たないというの がその根拠だった。

それは違う。追加的な刺激策や減税は経済成長の急速な減速に歯 止めをかけ、その後の回復につながると信じるに足る理由は十分にあ る。財政を出動すれば民間セクターの資源は減少するという理論に基 づいて、政府が成長を後押しするのは不可能だと主張するのは間違い だ。

大恐慌当時、英財務省には、民間の消費や投資の大幅な落ち込み によって生じた需給ギャップを埋めるためには財政出動の拡大が必要 という経済学者ジョン・ケインズ氏の意見に反論する声があった。

こうした声は、第2次世界大戦のぼっ発に伴う財政出動が米国に 好景気をもたらしたことでかき消された。共和党がこの疑わしい声に スポットライトを浴びせたのはいったいなぜだろう。

共和党がこのような行動を取っている今、同党の失態を証明する には、2010年11月の中間選挙前に景気がしっかりと回復するだけで 十分だ。その可能性は極めて高い。

そうなれば共和党は、大半の米国民の生活を改善するオバマ大統 領の取り組みに2年間にわたって反対したことになる。有権者に同党 の思いやりのなさを印象づけるのは難しくないはずだ。世論調査によ れば、米国民のほぼ3分2は、共和党が景気対策に反対しているのは 政治的に優位に立つことを目的にしたものにすぎないとみている。

議席の減少

こうした見方が続けば、上下両院で劣勢を強いられている共和党 は次の選挙でさらに議席を減らすことになるだろう。

オバマ大統領の政策に対する共和党の全面的な反発は、裏目にで るかもしれない政治的な計算というだけではなく、これまでの歴史を 塗り替える試みともいえそうだ。

不況時には保守派でさえその多くが政府に救いを求める。1992年 に再選を目指したブッシュ元大統領が痛感させられたことだ。

1990-91年のリセッション(景気後退)は、現在ほど状況が悪く なく、92年の大統領選前には回復が始まった。それでもブッシュ元大 統領は国民の痛みを理解せず、気にもかけていないと強く批判された。

国民のそうしたメッセージは、92年のニューハンプシャー州での 共和党の大統領選予備選で、パット・ブキャナン候補が大健闘したこ とで明確になった。ブッシュ元大統領の経済政策を批判するためにブ キャナン候補に投票したという保守派の有権者の声が思い出される。

刺激効果の低下

共和党はオバマ大統領の景気対策法の成立を阻止することができ なかった。そればかりか上院での同党の強情さは同法の効果にも水を 差してしまった。共和党議員のほんの数票の「イエス」を得るため、 法案には高所得層を対象にした最低代替税(AMT)の減税が盛り込 まれ、広範な中間層に恩恵が行き渡るのを妨げた。

考えてほしいのは、共和党が昨年いったん廃案に追い込んだ金融 安定化法案が成立していなかったら、金融システムがどれだけひどい 状況に追い込まれていたかということだ。共和党議員の多くと一部の 民主党員が同法案に反対したのが、昨年9月にリーマン・ブラザーズ・ ホールディングスが破たんし、世界の金融システムを震撼させた後だ ったことも思い出してほしい。

イデオロギー重視の新人議員

金融安定化法案の下院採決の賛成票と反対票をつぶさに見ると、 はっきりした違いに気づく。退任が近い共和党員の多くが賛成票を投 じた一方、新人共和党議員は誰も賛成しなかった。比較的若く、イデ オロギーを重視する議員は、法案の否決が金融システムに与える影響 を自らの投票に反映させなかった。半面、比較的高齢で退任間近の議 員は、保守派のイデオロギーに縛られなかったわけだ。

金融機関を救済することなど誰も好まない。それでも一部の企業 は文字通り「規模が大き過ぎてつぶせない」のだ。共和党議員も民主 党議員もこの事実は受け入れなければならない。そのために、納税者 に多大な負担を強いてシティグループを存続させなければならないな ら(既にそうなっているが)、救済資金を用意する以外に選択肢はない のだ。

シティの負債はほぼ1兆8000億ドル。世界中の金融機関、企業、 個人とさまざまな契約を結んでいる。同社の破たんは、こうした契約 相手の信用力の低下、ひいては世界の金融システムの機能不全につな がる。

銀行救済に伴う納税者の負担のほか、政府の年間財政赤字の拡大 や長期債務の増加に対して懸念を抱いてもかまわない。その一方で、 オバマ政権が大胆な措置を取らなかった場合に失われる雇用や個人所 得、税収にも思いをめぐらせる必要がある。この代償の方がはるかに 大きいのだ。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニス トです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

-- Editor: Laurence Arnold, James Greiff.

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Masashi Hinoki 記事に関する記者への問い合わせ先: John M. Berry in Washington at +1-202-624-1962 or jberry5@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: James Greiff at +1-212-617-5801 or jgreiff@bloomberg.net

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