円建TIBOR-LIBORスプレッド「異例の水準まで拡大」(3)

LIBOR(ロンドン銀行間貸出 金 利)に過去に例を見ないプレミアム(金利の上乗せ幅)を乗せた スプレッド取引が東京金融市場で起きている。市場関係者は、決算期 末を控えた国内銀行がプレミアムを上回る金利で企業に貸し出してい る利息からの利益を前倒しで確定する取引を行っているためとみてい る。

金融機関同士が行う円建てのTIBOR(東京銀行間貸出金利) ―LIBORスプレッド取引は、二種類の6カ月物の変動金利を半年 毎に交換するのが主流。なかでも金利交換を長期間続ける取引では、 2月下旬からLIBORに対するプレミアムの上昇が顕著になってい る。

10年物のプレミアムは、3月3日の終値で45ベーシスポイント (bp、1bp=0.01%)近くまで上昇した。この水準はブルームバー グ・データで確認できる限りでは例がなく、日本が金融危機で揺れた 1990年代後半の水準も上回っている。昨年9月の「リーマンショッ ク」以前のプレミアムの推移をみると、過去1年間の1日平均はほぼ ゼロだった。

三井住友海上火災保険投資部の高野徳義金融デリバティブグルー プ長は、LIBORだけがかい離して、98年のジャパンプレミアム時 代に匹敵すると指摘。「決算に向けて銀行はローンの利息のキャッシ ュフローを前倒しで固定化したい需要がある」とみている。

市場関係者によると、5年から10年の年限でメガバンクによる LIBORにプレミアムを乗せて払うスプレッド取引の需要が多い。 企業が借り入れ金利を固定化する取引のヘッジとして、市場で固定金 利を払えば、それを上回るプレミアムを受け取ることができるためだ。 ただ、反対側で取引に応じる参加者が少なく、急速な動きを受けた損 失確定の取引も巻き込んでプレミアムの拡大が加速したようだ。

銀行が高いプレミアムを乗せてスプレッド取引をする背景には、 それを上回る利息を企業融資から確保しているためとみられている。 昨年の信用収縮に伴う資本市場の混乱でコマーシャルペーパー(C P)や社債(SB)を発行しづらくなった大手企業が銀行貸出に殺到 した。信用不安の高まりも伴って、貸出利息の幅が拡大しているとい う。

ヘッジ会計

一方、JPモルガン証券の徳勝礼子シニア債券ストラテジストは、 今回のようなプレミアムの急激な拡大は過去にないと指摘する。

LIBORの取引はTIBORに比べて流動性が高く、ヘッジに 使いやすい一方、日本の銀行にとってヘッジ対象となる国内の原資産 の多くがTIBORを基に取引されているため適合していないとの見 方もある。こういったヘッジ会計はリスク管理上、ヘッジ手段が有効 に機能しているかを測定する「有効性の検証」で認められる必要が ある。

3カ月物のTIBORとLIBORの推移を見ると、今年1月に TIBORがLIBORを上回って水準が逆転しており、「クレジッ トのスプレッド部分の先高見込みで、相対的にTIBORが上昇する リスクが高まっているのではないか」(JPモルガン証券・徳勝氏) との指摘も出ており、形を変えたジャパンプレミアムの再来との見方 もできる。

取引のチャンス

もっとも、先行き10年間、スプレッド取引でLIBORのプレ ミアムがTIBORを40bpも上回り続ける状況は過去のデータから みると考えづらい。実際、「10年間、40bpのキャリー(期間収益) を確保できるのは魅力的」(三井住友海上・高野氏)として、銀行側 の取引 に応じて、プレミアム縮小の方向の取引需要も出てきている ようだ。

銀行の決算期末の要因として、過度のプレミアム拡大が生じてい る場合、期末を越えれば再び縮小に向かう可能性もある。JPモルガ ン証券の徳勝氏は、「リスクを取れる人にとっては収益のチャンス」 とみている。

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