通貨「保護主義」がドルを後押し-危機で大手銀は国内融資を重視(2)

外為ヘッジファンド最大手のFX コンセプツ(ニューヨーク)のジョン・テイラー会長は、30年におよ ぶ外国為替トレーディングの経験から、金融危機時には大手銀行が国 内融資を優先する傾向を学んだと話す。FXコンセプツで米ドルを買 っているのもこれが理由だと言う。

テイラー会長は「銀行が大きな問題の渦中にあると認識すると、 銀行は『近所の住民や企業を守る必要がある』と言うものだ」と述べ、 「米国のような国際金融で大きな役割を果たす国の大手銀行であれば、 その銀行のある国の通貨は上昇する」と指摘した。

いわゆる金融保護主義の兆候が先週、浮上した。英政府の公的管 理下にあるロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(R BS)のスティーブン・へスター最高経営責任者(CEO)は2月26 日、「中核地域」に経営資源を集中させるため、同行が現在進出して いる54カ国のうち36カ国で事業縮小または撤退に踏み切る方針を表 明した。

英ポンドやスイス・フランもこうした動きから恩恵を受けるとみ られる一方、ニュージーランド(NZ)など国際金融の影響を受けや すい国の通貨にとっては痛手となりそうだと、BNPパリバのチーフ 通貨ストラテジスト、ハンスギュンター・レデカー氏(ロンドン在 勤)は指摘する。同氏は、ドルが6月末までに対ユーロで約5.6%上昇 し、1ユーロ=1.20ドルに達すると予想する。

保護主義政策

国内融資優先主義をめぐる懸念の背景には、世界各国の政府が金 融システム強化で10兆ドルを超える規模の支援を公約したことがある。 オバマ米大統領が先月署名した7870億ドルの景気対策法案には、公共 事業などで米国製品の使用を義務付けた「バイ・アメリカン」条項が盛 り込まれた。フランスのサルコジ大統領は昨年11月、外国企業から 「戦略的」国内企業を守るための基金を創設。ロシアは昨年12月に輸 入自動車に対し増税した。インドは鉄鋼輸入の制限と大豆油への関税導 入を実施した。

歴史家の間では、大恐慌時の貿易戦争の発端は米国で1930年に成 立したスムート・ホーリー関税法だとの批判がある。三菱東京UFJ銀 行のグローバル為替調査部門欧州責任者のデレック・ハルペニー氏(ロ ンドン在勤)は、為替レートが保護主義の動きに左右されやすいことを 歴史は示していると指摘する。ドルが1995年4月に対円で過去最安値 1ドル=79円75銭を付けたのは、日本製品に対する米国の関税政策へ の懸念を受けたものだった。

BNPパリバのレデカー氏は、国際金融の拡大により外為取引が 1日当たり3兆2000億ドルに拡大しているだけに、金融保護主義で外 為市場のリスクは高まっていると分析する。レデカー氏は「問題は国際 的に事業展開する多くの銀行が政府から資本注入を受けたことだ」と述 べ、これらの銀行は「国内市場を優先して海外からの撤退加速を強く迫 られるだろう。金融システムが国内銀行だけでは力不足でこれまで海外 の金融機関に依存してきた国にとっては、こうした状況はかなりマイナ スだ」と指摘した。

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