【日本株週間展望】短期戻り局面、3月危機策が支え-信用売り残ばね

3月相場に入る日本株相場は、バブ ル経済崩壊後の最安値圏から戻りを試す動きとなりそう。実体経済の悪 さは深刻ながら、企業が決算を迎え、資金需要の高まる年度末を前に政 府が危機対応策を相次ぎ打ち出す姿勢を見せており、積極的に売り持ち 高を増やしづらくなった。高水準に膨らんだ時価総額上位銘柄の信用取 引の売り残が買い戻され、短期的反発のばねになる可能性がある。

三菱UFJ証券投資情報部長の藤戸則弘氏によると、「昨年3月か ら弱気を言い、その中でも何回か短期買いを指摘してきたが、3月はそ の何回かの『ベアマーケット・ラリー』の局面になろう」という。

藤戸氏は、経済界の提案を受けて政府が株価対策の検討に入った点 に言及。現在参議院で審議中の「銀行等保有株式取得機構」の買い取り 再開案は、2008年度補正予算で手当てした政府保証枠20兆円を使っ て買い取り対象を広げる可能性が指摘され、「評論家なら先進国にある まじき政策と批判できるが、ポジションを持つ人ならショートカバー (買い戻し)に動かなければならない」と話す。

日本経団連の御手洗冨士夫会長は2月23日の会見で、最近の株価 低迷が金融システムなどに与える影響に懸念を示し、公的資金によって 株価を買い支える新たな機構設立を政府に訴えた。また景気対策として、 09年度に25兆円規模の補正予算を組むよう求めている。

この翌日、与謝野馨財務相は閣議後会見で「株価は市場で決まるが、 あまり売り方が強く、買い方が誰も現れない状況だと、必要以上に影響 を与えながら下がっていく現象は決して好ましくない」と発言。政府・ 与党で株価対策について検討する考えを示した。

与謝野財務相は26日に行われたブルームバーグ・ニュースなど報 道各社とのインタビューでは、株価対策の「方法がどうあるべきかは議 論の分かれるところ」と述べた上で、公的資金を活用し、市場から株式 を直接購入する方策なども選択肢の一つとし、自民党に検討を要請した ことを明らかにした。

一方、企業の資金需要が高まる年度末対策の一環として、政府が 日本政策投資銀行による企業向けの1兆円の低利融資枠について、1.5 兆円を上限に拡充する方向で検討していることが明らかになっている。

続く外国人売り

2月第4週(23-27日)の日経平均株価は前週末比2.1%高の 7568円と、3週間ぶりに上昇。前半24日には欧米の根強い金融シス テム不安を背景に、一時終値でのバブル崩壊後の最安値(7162円、08 年10月27日)を下回る場面があったが、後半にかけて持ち直した。 バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は24日、10年の米国 経済回復の見通しを上院で証言。また日本の経済、政治不安の裏返しで もあるが、ドル・円相場が27日に1ドル=98円台後半と3カ月ぶりの 円安水準に達したことも、株価の戻りを支援した。

東京証券取引所によると、2月3週(16-20日)に外国人投資家 は6週連続で日本株を売り越し、売越額は3568億円と3カ月ぶりの高 水準を記録、海外からの見る眼は依然厳しい。ヘッジファンド動向に詳 しい草野グローバルグローバルフロンティアの草野豊己代表取締役は、 08年10-12月期の国内総生産(GDP)が年率で2けたのマイナス と、主要国中で最も悪かった点を挙げ、「日本は輸出で稼ぐ経済方程式 そのものが崩れた」と、外国人売りの一因を指摘する。

一方で、時価総額の大きい市場の中では相対的に景気、金融システ ムに対する不安が小さいとの見方が根強いほか、昨年3月期末から比べ すでに40%下げた水準の低さなどから、「不景気の株高」のリード役 として期待する声はある。世界的著名投資家の1人であるマーク・ファ ーバー氏は27日、ブルームバーグとのインタビューで、日本株は「向 こう1年、世界をアウトパフォームするだろう」と述べた。

主要銘柄に溜まる売り残

株価対策が検討されている最大の理由は、米リーマン・ブラザーズ の破たんをきっかけに世界的な金融危機が深刻化した昨年9月以降、総 額5兆円に達した外国人の売りをどう消化するかが問題なため。年金資 金などの動向を示す信託銀行経由の買いがこれを支える格好とはなって いるが、上値を買う外国人と下値を買う年金の格差が、昨年10月から だけで日経平均を3割下落させた。

相場の先行き不安は個別銘柄の需給動向に表れ、ホンダの信用取引 の売り残は2月27日時点で453万株(日証金ベース)と、02年8月 以来の高水準。ブリヂストンも昨年10月来の水準だ。東証がまとめる 信用取引を含む空売り集計によれば、直近では繊維、ゴム製品、空運、 精密機器、パルプ・紙、その他製品などの業種で空売り額が多い。

もともと期末を控えて買い戻し圧力が高まりやすい中、政策効果で こうした動きに拍車が掛かる可能性も浮上。「経団連会長の発言に始ま り財務相の検討示唆と、財界、政界の根回しも終わっているようで、民 主党も賛成意向と障害はない。政治の混乱はリスク要因だが、ショート 筋の勝ち目が低くなった」と、三菱U証の藤戸氏の見方だ。

3月1週(2-6日)の日本株相場に影響を与えそうな材料は、国 内より海外の方が多く、2日に米国で2月のISM製造業景況指数、3 日に2月の米国内自動車販売、4日に米ベージュブック(地区連銀報 告)、5日に中国で全人代開幕、6日に2月の米雇用統計の発表などが ある。3日には米英首脳会談、バーナンキFRB議長の議会証言も予定 され、日本同様、景気実勢の悪さに政策サイドのメッセージがどこまで 効くかが焦点になる。

【市場関係者による当面の日本株相場の見方】 ●内藤証券・多田晃士東京ディーリング第1部長

「下げ相場の中での一時的なリバウンドとなりそう。日米の経済統 計は予想通りの悪さの確認にとどまり、昨年来安値近辺まで下げたこと で個人や年金の押し目買いが入りやすい。為替の円安基調も安心感を誘 いそう。ただ、株価に先行性のある有効求人倍率の低下などを見れば、 下値不安は依然強い。戻っても、日経平均上値は1月安値の7600円あ たり。個別では、思い切ったリストラを迅速に行い、事業規模を早く縮 小均衡させる銘柄に注目している」

●しんきんアセットマネジメント投信の藤本洋氏

「相場がひとまず底入れしたと判断するのは早計。世界的な金融シ ステム不安の再燃に警戒感が解けない。米大手銀行を対象としたストレ ステスト(健全性審査)は始まったばかりで、当局の査定次第では損失 が膨らみ、現状の公的資金枠の上積みを余儀なくされる可能性もある。 シティなどの100%国有化懸念が完全に消え去ることは当面なく、投資 家は疑心暗鬼の中で、世界的に保有株式を処分する流れを継続する」

●イワイ証券イワイリサーチセンターの有沢正一氏(大阪在勤)

「前週末は村田製作所など大証主力のハイテク株が高値引けし、有 機的な動きを見せた。売り方の買い戻しとみられ、売りポジションを持 つことが怖くなったのだろう。東証でも代替エネルギ-関連の材料株に 資金が集まり、個人の動きが変わってきた。米金融大手や米自動車に対 する政府の支援策も3月中にはまとまるとみられ、4月以降の株価上昇 を見越して良い銘柄を仕込むべき。『森を見ず、木を見る』のが大事」

●日興コーディアル証券エクイティ部・西広市部長

「経済指標の悪化は相場にある程度織り込まれてきている。政府 が検討中の株価対策、配当取りの買いも見込め、下値はしっかりするだ ろう。ただ、米自動車業界の支援策や米金融安定化に向けた取り組みな どの動きを見極める必要もあり、株式相場の方向性は定まりにくい」

--共同取材:下土井 京子、鷺池 秀樹、長谷川 敏郎、河野 敏

浅野 文重 Editor:Makiko Asai、Shintaro Inkyo

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