【コラム】米当局「黒い白鳥」想定せず、「灰色のハト」ばかり-ライリー

米オバマ政権の銀行資本査定が あまり厳しくないのは当然なのかもしれないが、投資家はもう少し厳 格な検査を予想していた。7870億ドル(約77兆円)の景気対策の 議会通過のために「悪夢」のシナリオを持ち出すなら、損失に備える 銀行の体力を測定するについても最悪のシナリオを想定するのが普通 だろう。

しかし残念ながら、米財務省が25日に示した内容を見る限り、 十分に厳しい想定とはなっていないようだ。投資家や納税者、景気に とって悪いニュースだ。悲惨な銀行の状況を認識するのが遅れれば遅 れるほど、金融危機は長引くからだ。

過去2年間に得られた教訓の最大のものが「どんなひどいことが 起こるか分からない」だったことを考えると「ストレステスト」で十 分にひどいストレスが用意されていないのは不思議だ。こんな時代に は、「黒い白鳥」のような突飛な可能性も想定しなければならないは ずだ。

警戒信号は多数あったのに、そのような最悪のシナリオを想定で きなかったことが、リーマン・ブラザーズ・ホールディングス破たん 後の金融システムの激震を必要以上に大きくしたのは想像に難くない。

しかしながら、今回の危機の最大の教訓は、銀行が酔っ払ってし まうことがあり得るということだ。その場合に、酒を控えて目を覚ま すべきなのは規制当局なのだが、今回の資本査定では当局がむしろ強 い酒に手を出しているように思われる。財務省の計画では、査定は銀 行が自分で実施して当局はその結果をチェックすることになっている。

動機

米連邦預金保険公社(FDIC)などによれば、銀行は「全社的 な損失の可能性を融資債権と保有証券、帳簿上にはない何らかの義務 を含めて」査定するという。

250億ドルの簿外のリスク資産について、目の前にその損失が突 きつけられるまで「知らなかった」シティグループが、自分で簿外資 産のリスクについて査定するというのか?

さらに、シティやその他銀行には、査定結果があまり悪くないこ とを望む強い動機がある。結果が悪ければ、政府から追加の資本注入 を受けなければならない。これは、7年以内に返済しなければ普通株 に転換される優先株を政府が取得するという形で実施される。

この資金のコストは安くない。優先株の間は9%の固定配当を支 払わなければならない。普通株に転換すれば既存株の希薄化につなが る上に、政府に議決権を与えることになる。銀行がこれを望むはずも ない。この資本査定をアナリストが評価しないのも当然だ。

査定について具体的な方法がほとんど明らかになっていないのも 問題だが、分かっているところを見ても、あまり期待できない。世界 の終わり的な最悪のシナリオを想定しているとは思えないからだ。

例えば、貸し倒れ予想の基になる失業率見通し。査定は2010年 の失業率が平均で10.3%という「最悪」のシナリオを想定している。 しかし、10.3%は1982年の平均の9.6%と比べてそれほど悪くは ない。この年は月間の失業率が戦後最悪の10.8%を記録した。

事態がどれほど悪くなり得るかについて、銀行と政府が現実を見 据えるまでは、市場は安心などしない。 (デービッド・ライリー)

(ライリー氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。 コラムの内容は同氏自身の見解です)

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