資金調達コストが官民逆転、日銀企業支援を反映-CPがTB下回る

一般企業の短期資金調達コストを示 すコマーシャルペーパー(CP)の利回りが、国の調達コストを示す国 庫短期証券(TB)を下回った。急激な景気後退を受けて日本銀行が積 極的に企業金融支援策を行っているためとみられる。一方、大量発行が 続くTBには特段の対策も打ち出されていない。

最上位格付けa-1プラスの電力会社が3カ月CPを0.24%台半ば で700億円程度発行したもよう。金利水準は5ベーシスポイント(bp) 前後低下した。一方、同日入札されたTB3カ月物6回債の最高落札利 回りは2.4bp上昇の0.2749%となり、0.275%まで売られている。

19日の日銀金融政策決定会合を境に、CP利回りが低下する一方、 TB利回りは上昇に転じ、対照的な動きをみせている。同会合ではター ム(期日)物金利を押し下げる必要ため、企業金融支援や短期国債の需 給に関するさまざまな対策が話し合われるとの思惑が出ていた。

東短リサーチの寺田寿明研究員は、「長い目で見ればターム物全体 の低下に働く対応だったが、短期国債の需給改善策は何も出なかった」 と指摘する。

0.1%の異例オペ

この日のCP市場では発行金利が軒並み大幅低下しており、そのな かでCPとTBの逆転が生じた。国内大手銀行のCPディーラーによる と、企業金融支援特別オペにCPは応札できるが、TBは応札できない ことが最大の理由だと言う。

日銀が企業金融支援オペで供給した年度末越え資金は4兆4736億円 (4回分)に達した。企業向け証書貸付債権や社債、CPなどを担保に

0.1%で無制限に資金が借りられる異例のオペ。19日の会合では、実施が 毎月2回から毎週1回に拡大され、制度の期限も9月末まで延長された。

銀行のCPディーラーは、0.1%の低利オペを積極的に利用し始めて いる。年度末などのリスクとは無関係に、毎週のようにターム資金が手 当てできるため、CP引き受けの回転が効きやすい。TBより優良銘柄 のCPに買いが集まり始めている。

はしご外される

一方、短国ディーラーの落たんは大きい。日銀の水野温氏審議委員 が5日の講演で、TB増発に伴う荷もたれ感に言及し「目を配っておく 必要がある」と発言。これを受けて3カ月物のTB利回りは0.235-

0.24%まで低下していたが、会合以降は上昇に転じた。

20日に実施された短期国債買い切りオペも4000億円のまま増額が見 送られ、「大方のディーラーは会合に向けてポジションを作っていた」 (東短・寺田氏)だけに、はしごを外された形。積み上がった在庫の重 さが、この日の入札で顕在化した。

官民逆転の歪み

日銀はCP買い切りオペも毎週実施しており、この日のオペでは案 分落札利回り格差がゼロ%近くまで縮小したもよう。売却需要の強い銘 柄が日銀の買い入れ上限額に達して応札が減る一方、日銀の下限利回り

0.4%に割高感も出てきている。

実際、a-1格付けの化学メーカーが5カ月物を0.40%割れの水準 で発行した。企業金融支援オペの0.1%を意識して、ディーラーがCPを 一段と買い進める可能性もある。この日は日本政策投資銀行も、危機対 応業務としては2回目のCP買い取りを実施しており、需給は締まる方 向だ。

国内大手銀のCPディーラーは、CPとTBの官民逆転が企業金融 支援オペを背景にしばらく続くとみている。過去に国債が格下げされた 場面で高格付け社債の利回りが国債利回りを下回った場面もあったが、 長くは続かなかった。

国債担保の資金調達コストであるレポ(現金担保付債券貸借)が

0.15-0.20%で推移しているのに対し、0.1%の無制限オペはモラルハザ ード(倫理の欠如)との指摘もある。官民逆転の歪みは、日銀の異例の 政策を後ろ盾としたクレジットバブルのリスクを示唆しているとの声も 聞かれた。

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