河合ADB研所長:域内の金融協力、アジア通貨基金の創設に発展へ

アジア開発銀行(ADB)研究所の 河合正弘所長はブルームバーグ・ニュースのインタビューで、現在通貨 危機防止のためアジア域内で進められている金融協力は、将来的にはア ジア版の国際通貨基金(IMF)と言えるアジア通貨基金(AMF)の 創設につながるとの認識を示した。インタビューは23日に行った。

タイ・プーケットで22日開催された東南アジア諸国連合(ASEA N)プラス3(日中韓)財務相会合は、通貨危機などで一時的に不足す る外貨を融通するチェンマイ・イニシアチブ(CMI)を800億ドルか ら1200億ドルに拡大することで合意した。さらに、CMIの迅速な発動 を可能にするため、域内経済情勢を客観的に監視する独立した常設機関 を設立することも決めた。

河合氏は、監視機関の設置が明記されたことは「初めてのこと」と 評価し、「AMFの方向に向かっていることは間違いない」と言明した。 さらに「今回の世界的な金融危機が起こる前は、アジアは外貨準備が十 分にあるので、もう心配ないと一部では言われていた」と指摘した上で、 アジアにも今、「ストーム(嵐)が来ているので、そういう中で議論を進 めていく良いチャンスだ」と強調した。

アジア諸国の主要な輸出相手先である米国の経済は、今後底打ちして も「力強い回復になるかは疑問だ」と述べ、「だらだらと低成長が続く可 能性がある」と指摘。その上で、今後は「アジアの中で需要をつくり、 伸びていく市場や産業に集中的に投資していくしかない」と語った。

10年前の経験

タイを皮切りにアジア各地に広がった1997-98年のアジア通貨危 機当時、インドネシアや韓国などはIMFから緊急融資を受けたが、そ の条件として強いられた経済財政政策は各国の実情に必ずしも合わず、 経済悪化と社会的な混乱を招いた。日本はAMF構想を提案したものの、 米国を中心に安易な融資基準によりモラルハザードを引き起こす懸念が あるなどと反発が出て、構想が頓挫した経緯がある。

河合氏は、アジア諸国は「10年前の経験から、韓国もそうだが、他 のASEAN諸国もIMFに駆け込むのは政治的に難しい状況にあるみ たいだ」と説明。河合氏はまた、IMFは融資条件なしに借り入れられ る短期流動性ファシリティ(SLF)を導入したが、「どこの国も乗って いない。なぜ、乗らないかを考えるべきだ」と付け加えた。

当時財務官としてAMF構想にかかわった榊原英資早稲田大学イン ド経済研究所所長は1月にブルームバーグのインタビューで、米国が同 構想に反対したことは、自国のヘゲモニー(覇権)が侵食される懸念が あったため「当然だった」と振り返る。一方、当時全面的に賛成でなか った中国が積極的に関与すれば、「今度は、ガイトナー(米財務長官)は 反対しないし、できないだろう」とみる。

22日のASEANプラス3財務相会合の声明文は、域内経済の監視 機能が完全に有効な形で機能すれば、IMFのプログラムを受けなくて も、CMIに基づく融資が受けられる現行の20%の上限を引き上げるこ ともあり得るとの表現を盛り込んだ。

態勢できればIMFプログラム不要

現状はこの上限のため、IMFプログラムなしで発動できる金額は、 実際には1200億ドルのうち240億ドル。小規模な為替投機などには対応 できるが、決して十分とは言えない。同割合が100%まで引き上げられ れば、形式的にはAMFが実現するが、その前に各国による外貨準備の 拠出額(現行はASEAN諸国が20%で日中韓が80%)を具体的に詰め る必要があるほか、資金の管理方法や発動基準なども決める必要がある。

河合氏は同割合を引き上げていくためには、域内経済分析に加え、 危機の時に当該国と協議して、必要な資金額と実行すべき経済政策の決 定をしなければならないことに言及。経済金融情勢が「きな臭くないか をいつも見て、きな臭ければすぐ出て行ける態勢にする。その際にどう いう政策が必要なのか、すぐ協議できる態勢にないと困る」と指摘。「そ ういう態勢になって、対処できる能力ができれば、別にIMFのプログ ラムが必ずしもなくても構わないということになる」と語った。

また、5月にインドネシアのバリ島で開かれるASEANプラス3 財務相会合の焦点について、河合氏は2国間で個別に結んでいる外貨融 通の「契約を一本化することなので、どういう形の一本化が良いのか。 またリザーブ(外貨準備)をどこまで自己管理し、どこまで出すかとい うアレンジメント(の問題)。あとはCMI発動時の条件だ」と指摘した。

アジア域内の潤沢な貯蓄資金を、域内の旺盛なインフラ整備のため の資金などに振り向けることを促すアジア債券市場育成イニシアチブ (ABMI)については、「債券発行で保証機関をつくっていくことも目 玉になる」と述べた。また常設機関の設置についても「進んだ声明が出 ると思う」との見方を示した。

--共同取材:乙馬真由美 Editor:Hitoshi Ozawa,Masaru Aoki

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