行天元財務官:ドルに代わる基軸通貨ない、通貨体制は不安定化(2)

国際通貨研究所の行天豊雄理事長 (元財務官)は18日午後に都内で、世界的な金融危機による景気悪化 に対処するため、積極的な財政出動などが必要だと強調した。米国の 「覇権的な地位」は揺らいでいるが「ドルに代わる基軸通貨はない」た め、国際通貨体制は不安定化が避けられないとも語った。

行天氏は同研究所が開いた国際金融シンポジウムで、米国の「総合 的な国力」の低下は限定的だと指摘。ただ、オバマ政権下での金融シス テム健全化と対外純債務の増加抑制に金融市場から信認が得られない場 合には、ドルは「かなりの下押し圧力」にさらされると予想した。

それでも「ドルに代わる通貨は、予見しうる将来においてはない」 と指摘。国際金融情勢は「徐々に不安定さを増すという覚悟をする必 要」があり、「何らかの国際的な協調によって不測の事態を避けなくて はならない」と強調した。

国際通貨基金(IMF)は1月28日、米不良資産の影響で世界の 金融機関が抱える損失は2兆2000億ドルに達する可能性があり、世界 経済の実質成長率は2009年に戦後最低の0.5%になると予測した。昨 年10月時点では1兆4000億ドル、2.2%と見ていた。

世界的な金融危機と景気悪化を背景とした投資家のリスク回避を受 け、円相場は対ドルで1月21日に1ドル=87円13銭と1995年7月 以来の円高・ドル安水準に上昇。ユーロに対しても同日、1ユーロ= 112円12銭と02年3月以来の高値をつけた。きょう午後7時時点で は1ドル=92円59銭、1ユーロ=116円台半ばで取引された。

信用収縮、最大の脅威に

行天氏は、米サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問 題に端を発した金融危機は「依然として深刻化」しており、「全世界に 蔓延した信用収縮」の悪影響が最大の脅威になっていると発言。米景気 の底打ちは来年にずれ込み、回復の勢いも弱いと予想した。

対応策として、①米住宅市場の正常化、②財政出動による需要喚起、 ③金融機関の資本増強と不良債権処理-を挙げ、「短期的な財政赤字の 拡大はやむを得ない」と述べた。アジアや産油国では過剰貯蓄を生む成 長モデルの転換に伴い、「社会的な混乱」が生じる恐れがあると指摘。 米英流の金融規制緩和の「振り子が逆に振れ、規制が行き過ぎる可能性 がかなり高い」とも語った。

行天氏は1931年生まれ。55年に東京大学を卒業し、大蔵省に入 省。国際通貨基金(IMF)やアジア開発銀行(ADB)への出向など を経た後、同省の国際金融局長や財務官を歴任した。89年に退官。ハ ーバード大学やプリンストン大で教鞭を取った後、92年から96年まで 東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)会長。95年12月から国際通貨研 究所の初代理事長。98年には小渕恵三内閣の特別顧問をつとめた。

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