【経済コラム】日本の指導者が飲まずにいられない理由-W・ペセック

中川昭一前財務相兼金融担当相 がどんな風邪薬を服用していたのか分からないが、私にも少し分けて ほしいものだ。

先週末ローマで開催された7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G 7)で記者会見に臨んだ中川前財務相の映像を見た人なら、誰でも同 じように考えているかもしれない。中川氏は17日に辞任した。酔っ ていたからではなく、風邪薬のせいだと自ら主張していたにもかかわ らず。

日本のメディアは中川氏の主張をほとんど信じなかった。ある民 放は、当時自民党政調会長だった中川氏が酔っ払って演説をしている ように見える2006年11月の映像を引っぱり出してきた。

一般市民の怒りは、ろれつが回らず記者の質問にまともに答えら れない男に向けられたものではない。矛先はアジア最大の経済大国を 運営する大役を全うしていない麻生内閣に向けられているのだ。堂々 巡りの権力争いを繰り広げている日本の政治も反映している。次の財 務相は過去2年間で5人目だ。

もちろん、もし私が急速に縮小する日本経済(昨年10-12月期 の成長率は年率ベースでマイナス12.7%)のかじ取りを任されたとす れば、私もバー通いの誘惑に駆られるかもしれない。ただ、ほろ酔い 気分は長続きしないだろう。最近の日本の経済指標を見ると、酔いも すぐに覚めてしまいそうだ。

日本の指導者らは飲み過ぎても許されるかもしれない。そう思う 5つの理由を挙げてみよう。

1.今後も状況は悪化する。昨年10-12月期の輸出が13.9%減 と、過去最大の落ち込みになったことを見れば、輸出主導の経済が問 題を抱えていることが分かる。乗用車「カローラ」や薄型テレビ「ブ ラビア」の需要は大幅に減少。G7の声明では、世界経済の厳しい減 速が「09年の大半を通じ続く」との見通しが示された。10年も、と 言った方が恐らく適切だろうが。

トヨタ自動車、ソニー、日立製作所は大幅な赤字見通しを示した。 3社とも大規模な人員削減を進めている。これは個人消費の減少加速 や、リセッション(景気後退)の深刻化につながるだろう。1-3月 期の状況はさらにひどい。

バーテンさん、もう一杯お代わり!

2.リーダーシップが不在だ。中川氏のしょぼしょぼした涙目の 映像はインターネットを駆け巡り、日本はジョークのネタになった。 それよりも重要なのは、後任を務める与謝野馨経済財政担当相が最近、 ロンドンで第2回緊急首脳会合(金融サミット)が開催される4月ま でに日本が景気対策を取りまとめる見通しに疑問を投げ掛けたことだ。 2カ月間、何も対策が打たれない恐れがある。

麻生内閣の支持率(日本テレビの世論調査では9.7%)は、クリ ントン米国務長官が小沢一郎民主党代表と17日に東京で会談した理 由を雄弁に語っている。数カ月ごとに財務相が交代する日本と誰が真 剣に付き合おうとするだろう。

バーテンさん、何かもっと強い飲み物はある?

3.自民党の大物も登場してきた。メディア各局は麻生太郎首相 の不手際を公然と批判した小泉純一郎元首相の発言を興奮気味に取り 上げている。01-06年に首相を務めた改革推進派の同氏は、日本のビ ジネス界を揺さぶり、巨大な日本郵政公社を民営化した実績が評価さ れている。

小泉氏は最近、麻生首相の発言を「笑っちゃうくらい」「ただた だあきれている」と酷評し、大半の日本国民の意見を代弁。自民党が 今年の総選挙で敗退する可能性があることを示唆した。

事実と向き合おう。自民党は大敗すべきだ。同党が大切にしてい るのは党利だけであり、日本で機会を探している投資家ではない。

バーテンさん、ボトルごと置いていって!

4.女性の活躍が目覚ましい。有言実行の良い例としては小渕優 子少子化担当相が挙げられよう。小渕氏は第2子を妊娠、9月に出産 を予定している。国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の人 口は50年までに26%減少する可能性がある。

日本政府の指導者が女性に権限を与えるのはまれだ。男女平等に も取り組んでいる小渕氏は、その意味でも得点を上げたことになる。 日本の政治変革に消極的な男性とは異なり、小渕氏は女性の雇用機会 拡大に関する議論を巻き起こした功績が高い評価を受けている。

ギャルソン、アルコール抜きの飲み物はある?

5.何が起ころうと円相場は上昇する。日本の超低金利で調達し た資金はこれまで10年間にわたり、金利の高い海外の市場へと移さ れてきた。より高いリターンを目指す日本の企業や投資家は、海外に その場を求めてきた。そうした資金が今、再び日本に還流している。 ドル安もこの動きに拍車を掛けている。

為替動向と運命共同体の日本経済にとっては危機的な状況だ。財 務省や日銀ができることは何もない。だから、政府・日銀は円売り介 入を行っていない。

次回の総選挙で麻生自民党が政権の座を維持するにせよ(その可 能性はかなり疑わしいが)、小沢民主党が勝利するにせよ、円相場は 上昇する。強い通貨は通常、その国の経済に対する信任票だ。しかし 急速に勢いを失っている日本経済の成長見通しにとっては、正反対の 意味を持つ。

寝酒はいかがですか?宵の口に楽しむ「ハッピー・アワー」なら ぬ「アンハッピー・アワー」に対処している日本の指導者にはありが たいのかもしれない。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラ ストです。コラムの内容は同氏自身の見解です)

-- Editor: David Henry, James Greiff.

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