日ロ首脳:極東・東シベリア天然ガスで協力模索-ロ首相訪日へ(3)

麻生太郎首相は18日、ロシア・サハリン島 のユジノサハリンスクでメドベージェフ大統領と会談し、極東・東シベリアの天 然ガス分野での新たな協力の可能性を模索していくことで一致した。アジア のエネルギー市場への攻勢を強めようとしている同国との関係強化は、今 後、日本のエネルギー安全保障戦略に大きな影響を及ぼす。

会談内容は同席した日本政府高官が記者団に明らかにした。両首脳は プーチン首相の5月訪日でも合意した。

日本の首相がサハリン島を訪れるのは戦後初めて。メドベージェフ大統 領が1月24日の麻生首相との電話会談で、提案した。両首脳は日本企業も 参加する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の一環として建設された液化 天然ガス(LNG)加工施設の稼動記念式典にも出席した。

麻生首相は大統領との会談で「施政方針演説でも言ったが、ロシアはア ジア太平洋における重要なパートナーだ。日ロ協力の象徴であるサハリン2 が稼働するようになったのは喜ばしいし、重要な一歩だ」と述べ、エネルギー 面などロシアとの関係を強化していく考えを示した。

メドベージェフ大統領は会談で、昨年の二国間貿易が300億ドルに達し たことを指摘した上で、「貿易関係の一層の拡大を検討しなくてはならない」 と述べた。

麻生首相は会談後、記者団に対し、「アジア太平洋における戦略的関係 をロシアと構築する上で重要な一歩を踏み出したと思っている」と会談の意 義を強調。サハリン2からのLNG輸入については「日本のLNGの7%を超え るものが入ってくる。エネルギー供給源を中近東に偏るのではなく、多様化 するという意味でも今回のプロジェクトは有意義だ」と語った。

モルガン・スタンレー証券のアナリスト、ラリータ・グプタ氏はロシアの エネルギー戦略について「サハリン2はロシアにとって初のLNGプロジェクト で、これが始動することの意義は大きい。サハリン島周辺に埋まる膨大な天 然ガス資源を背景に、ロシアは今後、大きなLNGのサプライヤーとしてアジ ア市場に君臨する」と分析する。

その上で、「日本にとっては、地理的に一番近いLNGの輸入元であり、 国家の資源安全保障の強化につながる。ロシアとはバイヤー及び権益保者 の両面の立場をうまく使っていくことが、エネルギー・セキュリティーの観点か らは、非常に大事である」と指摘した。

加工施設はガスプロムが主導して同島沖で展開するサハリン2の鉱区で 採掘され、パイプラインで運ばれたガスを液化する。年間約960万トンを生 産する計画で、その半分以上が日本向けだ。3月末から輸出を開始する。

政治リスク

ロシアからのエネルギー供給をめぐっては、欧州との間でトラブルも発生し ている。最近でもロシア政府が今年1月、天然ガス価格をめぐるウクライナと の対立から、同国を経由するパイプラインを通じた欧州向け天然ガス供給を 一時停止。欧州各国は代替となるガスの確保に追われた。このため、欧州の 専門家の中からはロシア産ガスへの依存をむしろ低下させる時期に来ている との指摘も出ているほどだ。

サハリン2を主導するガスプロムはメドベージェフ氏が大統領就任直後の 昨年6月まで会長職にあった。現在もズブコフ第一副首相が会長を務めてお り、政権中枢とのつながりが深い。

実際、サハリン2の事業主体であるサハリンエナジーの株式は当初はロイ ヤ ル・ダッチ・シェルが過半数を保有していたが、ロシア政府の介入で2007 年にガスプロムがサハリンエナジー株式の過半数を取得し、経営権を握っ た。現在はガスプロムが50%プラス1株、シェルが27.5%マイナス1株、三 井物産が12.5%、三菱商事が10%をそれぞれ持っている。

日本エネルギー経済研究所の兼清賢介常務理事は「政治と経済を切り離 すことはできない。エネルギーは常に、『政治リスク商品』である」としながら も、「日本とロシアにおいて、欧州と似たようなリスクがゼロとは言えないが、 欧州、ロシア、ウクライナに見受けられる複雑な利害の絡み合いは、日本とロ シアの間には少ない」と述べ、同様のトラブルに発展するリスクは高くないと の見方を示す。

日本は石油の89.2%(2008年12月、石油統計速報)を中東から輸入。 天然ガスはマレーシア、オーストラリア、インドネシアなどが輸入元の上位に 並ぶが、世界最大の埋蔵量が確認されているロシアからの輸入はサハリン2 が初めてとなり、今後大幅に輸入が減少するインドネシア産LNGを補うかた ちとなる。

領土問題は「新たなアプローチ」

麻生首相は会談で、日本にとって最大の懸案である領土問題について 「新たな独創的で形にはまらないアプローチ」で解決を目指すことで一致した ことを明らかにした。その具体的な方法については「日ロでこの問題を解決 するためには役人に任せているだけではだめで、政治家で決断するより方法 がないのではないかという話だ」と述べるにとどめた。

首脳会談ではこのほか、ロシアが3月下旬に開催するアフガニスタン支援 に関する国際会議への日本政府の参加でも合意。ロシアが2012年のアジ ア太平洋経済協力会議(APEC)を開催する予定のルースキー島とウラジオ ストクとを結ぶ全長1872メートルの橋の建設に日本のIHIや伊藤忠商事が 技術協力を行う計画を両政府として歓迎することも確認した。

--共同取材:Shigeru Sato、中山理夫。岡田雄至、LYUBOV PRONINA、 Stephen Bierman、 Lucian Kim Tony Czuczka --Editor: Hitoshi Sugimoto, Takeshi Awaji

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: ユジノサハリンスク 広川高史 Takashi Hirokawa +81-3-3201-8641 thirokawa@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保 義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net 東京 Bill Austin +81-3-3201-8952 billaustin@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE