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10年物価連動国債、2月発行も見送りとの見方強まる-需給悪化継続で

需給悪化による価格下落で年内の発行が取 り止めとなった10年物価連動国債について、市場では来年2月予定の発行も見 送られるとの見方が強まっている。世界的な金融市場混乱を背景に、これまで 主要な購入対象だった海外投資家が資金を引き揚げたことに伴う需給悪化が継 続しているためだ。

財務省が昨年暮れに発表した2008年度の国債発行計画では、10年物の物価 連動国債は当初、4月から偶数月の年6回、1回入札当たり5000億円ずつ発行 する予定だった。しかし、その後の需要低迷で10月と12月の発行分が取りや めとなり、残された来年2月分に注目が集まっている。

大和証券SMBCの末沢豪謙金融市場調査部長によると、物価連動債市場 の需給悪化は、「6割から7割を占めるといわれる海外投資家の手じまい売り が大きな要因」という。これまで日本の物価連動債を買い支えてきた海外勢が 金融資産を売却して現金化する動きに出たためで、「リーマン・ブラザーズが 破たんした際は、3000億円程度売却された」(末沢氏)とみられている。

財務省の貝塚正彰・理財局国債企画課長は、2月の入札について、「今後、 市場の状況が改善しない場合には、発行を取りやめることも含め検討している。 投資家の声を聞いて議論していきたい」と述べている。

9月以降に急落、高値から17円近い下げ

直近に発行された物価連動債(16回債)の6日終値は85円65銭。7月に つけた高値102円46銭から17円近く下落している。同債は6月の発行以来お おむね100円を上回って推移したが、9月以降に急落した。10月には、財務省 が2008年度の物価連動債の買入消却予定額を5割強増やすと発表したことで、 需給改善期待からいったんは上昇に転じたものの、長くは続かず、再び入札以 来の最低水準付近での推移となっている。

このため、市場関係者の間では、「来年度の物価連動国債の発行額はゼロ に近くなるのではないか」(BNPパリバ証券の山脇貴史シニア債券ストラテ ジスト)といった見方や、「これ以上市場への供給を増やす環境にはない」(み ずほインベスターズ証券の落合昂二シニアエコノミスト)との指摘が出ている。

BEIは最低水準-インフレ・ヘッジの魅力も低下

海外勢の需要が減少する一方で、国内投資家の需要も低迷したままだ。損 保ジャパン・グローバル運用部の砺波政明グループリーダーは、「物価連動債 は、流動性が低いうえ、実質金利が低く投資するのは難しい」と説明する。

さらに、物価連動債の特長であるインフレ・ヘッジとしての魅力も低下し ているとの指摘もある。期待インフレ率を示す、物価連動債と名目利付国債と の利回り差であるブレークイーブン・インフレ率(BEI)は米リーマン・ブ ラザーズの破たん翌日の9月16日に再びマイナスに転じ、2004年に物価連動債 が初めて発行されて以来の最低水準にまで低下しているためだ。BEIのマイ ナスは理論的にデフレを意味しており、「物価連動債によるインフレ・ヘッジ の需要は描きづらい」(みずほ証券の高田創チーフストラテジスト)というの が、一般的な見方となりつつある。

発行継続には抜本的対策が必要

今年度後半の同債のすべての発行が取りやめになる可能性がある中、市場 では来年2月の供給が行われるためには、もはや抜本的な対応策が必要だとの 声も聞かれる。新光証券債券の三浦哲也チーフ債券ストラテジストは、欧米市 場に見習い、「物価が下落した時でも元本を保証する『フロア制度』を取り入 れて商品設計を改善する時期に来ている。買い入れ消却額も大幅に増額するべ きだ」と強調。市場では、「物価連動債を満期保有できる仕組みを作り出すべ きだ」(トヨタアセットマネジメントの深代潤チーフファンドマネジャー)と いう意見も出ている。

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