「インフレ懸念」は終息、金利上がらず-デフレ脱却に四面楚歌(3)

消費者物価の上昇加速にもかかわらず、 金利は低下傾向にある。世界経済の減速で原油などの原材料価格が下落基調に 転じ、インフレ(物価上昇)懸念は終息に向かうと市場が見ているからだ。た だ、日本経済の完全なデフレ脱却に向けては、政府が挙げた4条件を1つも満 たせない「四面楚歌」に陥る可能性もある。

総務省が29日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI)は、変動が 激しい生鮮食品を除いた指数(コア)が前年同月比2.4%上昇となった。消費 税率引き上げの影響が出た1997年度を除くと、92年以来となる高い伸び。日 本銀行が中長期的な物価安定の目安とする「0-2%」の上限を初めて超えた。

インフレ加速は市場の予想通り。しかし、事前に織り込む形での金利上昇 は見られなかった。長期金利の指標とされる10年物国債利回りは1.4%台前半 と、7月の1.7%付近から緩やかに低下。10年債とインフレ連動債(TIP S)の利回り格差が示す予想インフレ率(BEI)は28日、0.08%台と4月 上旬以来の水準まで後退した。市場はむしろ、インフレ終息を見込んでいる。 強めのCPIにもかかわらず、29日午前終値は前日比0.5ベーシスポイント (bp)低い1.415%となった。

三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストは、インフレは「もう終わ った話。長期金利に反映されるのは、商品安で下がる予想インフレ率だ」と指 摘。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、10年債利回りが 今秋に1.3%台に低下すると予想する。

ブルームバーグ・ニュースの調査によると、消費者物価の上昇率は7-9 月には2%に高まるが、来年4-6月は1.3%、10-12月には0.5%に鈍化す ると市場関係者は予想。バークレイズ・キャピタル証券の森田京平チーフエコ ノミストは「消費者物価の焦点は、上昇率低下のテンポに移っている」と述べ た。

コアCPI、マイナス転落も

インフレ加速と沈静化見通しをつなぐのは、世界的な景気減速を背景とし た原油など原材料価格の下落だ。地政学リスクなどによる一時的な上昇はあっ ても、7月に1バレル147ドル台の過去最高値をつけた「原油の上昇トレンド は終わった」(三井住友銀行の宇野氏)との見方は少なくない。酒類以外の食 料とエネルギー関連品目も除いた消費者物価(コアコア)は横ばい圏内にとど まっているため、原材料高が続かない限り、消費者物価の上昇率は縮小せざる を得ない。

リーマン・ブラザーズ証券は、原油価格が2009年に年平均93ドルまで下 落すると予想。消費者物価の「押し下げ要因に転じるため、来年央にはコアC PIがマイナスに転じる場面もある」(川崎研一チーフエコノミスト)と読む。

インフレが終息に向かうとの見方から、日本銀行の利上げ観測は低調だ。 短期金融市場での取引動向を基にクレディ・スイス・グループが算出した、今 後12カ月以内の利上げの織り込み度合いはゼロに近い。白川方明総裁も19日 の記者会見で、エネルギー・食料品価格の上昇は「いつまでも続くわけではな く、どこかで止まると思う」と述べた。

デフレ脱却は「0勝4敗」も

景気低迷下のインフレ終息は、日本経済が1990年代に陥ったデフレから 完全には脱却しきれていない姿を浮き彫りにしそうだ。

政府は、デフレからの完全な脱却を判断するための指標として、需給ギャ ップ、GDP(国内総生産)デフレーター、消費者物価、単位当たり労働コス トの4つを挙げている。内閣府の藤岡文七審議官は25日の記者会見で、デフ レ脱却は「進んでいるが、まだ完全に脱却し切れていない」との見方を示した。

日本経済の総需要と供給力のかい離を示す需給ギャップは4-6月期に、 06年7-9月期以来のマイナス(需要不足)に転じた。需給緩和は、物価の押 し下げ要因だ。バークレイズ・キャピタル証券の森田氏は「日本経済の実力に よる物価押し上げは、少なくとも来年央までは見込めない」と予想する。

総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは、消費税率引き上げの影響 が出た97年度を除くと、95年度から下がり続けている。原油など原材料価格 の上昇に伴う輸入額の膨張が止まればマイナス幅は拡大しない仕組みだが、 「プラス基調に転じるとは考えにくい」(リーマン・ブラザーズ証券の川崎 氏)。

単位労働コストも企業の配当増加や人件費抑制、景気減速による減収減益 などを背景に、下落基調から早期に脱却する可能性は低い。デフレ脱却の4条 件のうち、消費者物価のみがプラス。「1勝3敗」の状況だ。

市場関係者の予想通りに消費者物価の上昇率縮小が進み、マイナスに転じ る局面すらあった場合、デフレからの完全な脱却は「0勝4敗の『四面楚歌』 に陥る可能性が高い」(リーマン・ブラザーズ証券の川崎氏)。

政府・与党は景気てこ入れを狙って総合経済対策を検討しているが、バン ク・オブ・アメリカの藤井知子・日本チーフエコノミスト兼ストラテジストは 「国債増発は最小限で済むが、景気押し上げ効果には乏しい」と分析している。

--共同取材:池田祐美 Editor: Hidenori Yamanaka, Kszu Hirano

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