須田日銀委員の発言要旨-少し早めに、だけど余裕を持って行動(2)

(発言要旨を追加します)

【記者:日高正裕】

8月28日(ブルームバーグ):日本銀行の須田美矢子審議委員は28日午後の 金沢市内での会見で、経済・物価情勢について次のように述べた。

――講演で「世界経済が減速している中で国際商品市況が再び上昇に転じ、イ ンフレ率が予想外に上振れるようなことになれば、日本経済の中長期的な成長 にとって、より大きな影響をもたらす」と述べた。その場合、持続的成長を実 現するためには、例え一時的に成長率が下振れても、場合によっては利上げし なければならないという認識か。

「長い目で見て物価安定の下での持続的な成長パスに経済を持っていくた めに金融政策をどうすればいいかという観点でいつも見ているので、今の段階 ではどのようなこともあり得るとしか言えない。景気が減速しており、ある程 度資源に対する需要が減っている状況で、資源価格が上がっていくという状態 は、やはりグローバルに見たら金融は緩和状態にあると思う」

「私は、金融政策を考えるとき、国内の物価安定の下での持続的成長パス を考えるが、日本がやることが世界にどういう影響を与え、それがまたどうや って日本に跳ね返ってくるかも考慮に入れながら政策をしていくことを考えて いるので、それを考慮に入れないよりは、バイアスが少し引き締めの方にかか っているかもしれない」

「しかし、だからと言って、そういうバイアスを持って政策に臨むという ことは全くなく、予断を持つことなく、常に政策の目標のために今は何をすべ きかを考えながら政策をやろうと思っているので、答えとしては、どちらもあ り得るということだと思う」

――利子所得が消費に与える影響をどう考えるか。

「今日の金融経済懇談会でも、国民の資産をどうやって運用するかという 観点から利上げを思われる方もいるし、利上げしたら消費が増えるのではない かという声も結構ある。しかし、今の消費は、物価が上がり、賃金が上がらな い下で、自分たちの将来について不確実性が高まっている中で消費マインドが 落ち、消費が弱くなっているので、金利所得が増えればサポート要因にはなる かもしれないが、それで消費が増えていくという状況だと思っていない」

「国民の生活必需品に近い物価が高いため、消費者のインフレ懸念は非常 に高いと思うが、私が必要だと思っていることは、これから先、物価がどんど ん上がるのではないかという不安が消費行動に影響を与えないように、少なく とも、われわれはしっかり物価を守っていくということを認識してもらうこと だ。そのことで人々の行動も変わるし、それが必要だと思っている」

「われわれが物価安定を守るということが、人々が投資にしても消費にし ても、安心してできる行動できる環境を作ることなので、そうすることによっ て、これから先の消費者に対する不安は取り除けるのではないかと思っている」

――日銀が何の行動もせず、いわば様子見をするだけで、言葉の上で物価の安 定を守ると言っても、消費者の不安を取り除くことにつながるかどうか大いに 疑問がある。講演を読む限り、インフレに対する警戒を示しているが、景気の 下振れリスクが低下すれば、物価の上振れリスクに対応して速やかに利上げす べきという認識か。

「口で言うことによって日銀に対して信認が得られ、物価安定が持続でき るというほど単純だとは私も思っていない。従って、物価安定の下での持続的 な成長パスに復するというシナリオの蓋然(がいぜん)性について、ある程度 確信が持てれば、私はそれなりの行動を取る必要があると思っている」

「下振れリスクがかなり現存している状態でそういう行動を取るというこ とではなくて、それが小さくなっていくことが当然前提だが―それがいつにな るかも何も分からないが、上を向いていくという蓋然性が高まっていくときに は、行動を考えていくのが望ましいのではないか、というのが私の考えだ」

「いずれにしても、将来に対して不確実性の高い経済が続くと思っている ので、その中では、ある程度確信が持てたら、行動を起こす方が望ましいとは 思っているが、やはり不確実性が非常に高いので、動いても、それが大丈夫か どうかじっくり考える時間が必要だ。つまり、少し早めに、だけど余裕を持っ て対応できる形が実現できるような政策をやりたいと思っている。どんどん利 上げをしなければいけないような状況は起こしたくないというのが基本だ」

――「上を向いていくという蓋然性が高まっていくときには、行動」と発言さ れたが、何を持って景気の下振れリスクが低下したと判断するのか。

「今は非常に不確実性が高い中で、経済が上向く蓋然性がいったいどうい う状況で起こるのかについても、現時点ではよく分からない。ただ、1つは米 国経済の先行きについて、もう少し先が見えていくことは必要だろう」

「米国経済について言えば、住宅市場の調整はこれからまだまだ続くと思 っているし、米国経済の成長率がどんどん高まっていく状況が近い将来実現す るとは思っていないので、先行きどういうときに自分なりに見通しに自信が持 てるかどうかははっきりしないが、ものの考え方として、そういう場合にはや はり行動した方が良いと思っている」

――白川方明総裁は19日の定例会見で、成長経路復帰の時期の後ずれを示唆し たが、須田委員も同様の見解か。

「後ずれるかどうかについても私は分からない。米国の問題にしても、あ る程度ネガティブサプライズが起こらなくなってきたときには、市場は吸収し て、そういった下振れ懸念は解消していくかもしれないという思いもあるし、 そうではなく、まだまだ混乱が続くという可能性もあるし、原材料価格がどう いうふうに動くかまだ全く見えない状況なので、後ずれるのか、前倒しになる のかについて、私としては不確実だとしか答えようがない」

――講演では先にインフレの上振れリスクに言及しているが、市場はインフレ に対する警戒が若干少ない気もするが、どうみるか。

「私がインフレに対する警戒感が強いと思われるのであれば、それは私が グローバルな視点を持っていることが影響していると思う。グローバルに見た ら、この資源価格の上昇とそれに伴うインフレは結局、需要が強過ぎたからだ」

「グローバルなインフレを安定的なインフレに落とすためには、もし世界 が1国であるならば、やはり引き締めであるという考えなので、それを前提に、 日本の行動、それから世界への影響、それから日本にもう一度戻ってくる影響 も含め、基本的には世界が緩和をしているということを前提にしているので、 私自身もインフレに対する懸念が強いのかもしれない」

「ただ、先にインフレの上振れリスクに言及したことに触れられたが、あ えてそれを先に出したということではない。インフレの上振れリスクはそのま ま景気の下振れリスクにもつながる。両方一緒だということで、どちらかを強 く認識しているということではない」

「インフレの上振れリスクが下がったときには、景気の下振れリスクも下 がっているということが、資源価格の高騰の下では起こり得る。2つを別のも のとして扱っていることがそもそも問題だ。決してインフレの上振れリスクか ら議論したからといって、その順番に重きを置いたつもりはない」

――市場は日銀の利上げは遠い先のことだと思っているが、どう見るか。

「私自身は市場のとらえ方を判断する能力があるとは思っていない。われ われは予断を持たず、上下のリスクを見極めている段階なので、金融政策につ いてバイアスを持った発信をしてないし、私自身もそういうつもりはない。そ ういう中で市場がどうとらえていくかは、その時々のデータで変わってくる。 彼らは今、景気の下振れを意識しているということを認識しているのが、今の 私の状況だ」