東京外為:ドル下落、ECBの利下げ観測後退-米景気懸念くすぶる

東京外国為替市場では午後の取引でドル売 り優勢の展開となった。米国の金融不安や原油相場の先高懸念を背景に、米景 気の先行き不透明感は払しょくしきれず、じりじりとドル売り圧力が強まった。 ドル・円相場は一時1ドル=108円台後半と、前日のニューヨーク時間午後遅く に付けた109円49銭からドルが水準を切り下げた。

クレディ・スイス証券経済調査部の小笠原悟エコノミストは、市場ではド ル買い戻しに一服感が生じるなか、次の材料探しといった状況になっていると したうえで、「米国の金融不安はまだ根っこに残っており、年後半にかけては減 税効果もはく落する見通しで、再び景気減速が意識されやすくなる」と指摘。 目先はドルの頭が抑えられるとみている。

小笠原氏はまた、「ユーロ圏の景気減速感を背景に市場の一部では欧州中央 銀行(ECB)の利下げ観測を織り込む動きも見られていたが、少なくとも年 内は政策金利を据え置く可能性があることから、ユーロの買い戻しが進みやす い」と述べた。

この日のドル・円相場は、対ユーロでのドルと円の売りで午前は109円台 半ばを中心としたもみ合いが継続。しかし、「海外勢や実需関連のドル売り」(三 井住友銀行市場営業部・高木晴久グループ長)が目立ったといい、午後に108 円79銭(ブルームバーグ・データ参照、以下同じ)までドルが下値を切り下げ る場面も見られた。

米金融不安くすぶる

米連邦預金保険公社(FDIC)が国内の銀行に対し、大口預金者の引き 揚げなど予想不可能な事態が起きた場合に備えて十分な資本を確保するための 危機管理計画を策定するよう促しており、サブプライム(信用力の低い個人向 け)住宅ローン問題を背景とした金融危機に対する警戒姿勢は根強い。

来月に米金融機関の決算発表を控えて、業績見通しを下方修正する動きも 目立っており、ドルに強気の見方は醸成されにくい。

また、前日はニューヨーク原油先物相場が、米製油所の集中するメキシコ 湾に向けて進行しているハリケーン「グスタフ」の勢力が「カトリーナ」以来 で最強になるとの観測を背景に続伸。原油の先高警戒感もドルの上値を抑えて いる面がある。

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドのヘッド・オブ・FXストラテ ジー・ジャパンの山本雅文氏は、「米国の金利がなかなか上がっていないという こともあり、ドルは上に行きにくい」とみている。

米国では前日に発表された7月の製造業耐久財受注額が市場の予想を上回 ったことを受けて、米国株式相場が続伸。ドルの買い戻しにつながっていたが、 この日は4-6月の国内総生産(GDP)改定値や失業保険新規申請件数など 米経済指標が発表される予定で、弱めの内容となれば、ドル売りが後押しされ る可能性もありそうだ。

ユーロ堅調

半面、ECB政策委員会メンバーのウェーバー独連銀総裁は、26日にフラ ンクフルトでインタビューに応じ、「現在の金融政策はほぼ適切な水準にあり、 欧州での利下げに関する議論は時期尚早だと思われる」との見解を示した。

ECBの政策委員会メンバー、リープシャー・オーストリア中央銀行総裁 も27日に、訪問先のベルリンの大統領府で、インフレの脅威について、「以前 にも増して警戒が必要になる」と語っている。

新光証券の林秀毅チーフエコノミストは、「トレンド的には下方向を向いて いた原油価格が、グルジア情勢やハリケーンなどの影響で、再び値を戻す展開 となっており、先行き不透明感が生じていることから、ECBはインフレ警戒 姿勢を緩めにくい」と指摘する。

ECB当局の発言を受けてユーロは底堅い推移となり、この日のユーロ・ ドル相場は一時1ユーロ=1.4807ドルと、3営業日ぶりの水準までユーロが上 昇。対円でも一時1ユーロ=162円01銭と、3営業日ぶりに162円台を回復す る場面がみられた。

ドル防衛策の影響限定

一方、28日の日経テレコンは、米国でのサブプライム(信用力の低い個人 向け)住宅ローン問題をきっかけにした米金融不安でドルが急落したことし3 月に、日本と米国、欧州の通貨当局がドル買い協調介入を柱とするドル防衛策 で秘密合意していたことが明らかになったと報じた。

ただ、市場では「センチメント的にドルを支える可能性はあるものの、今 の水準ではあまりインパクトはない」(RBS・山本氏)との指摘が聞かれ、相 場への影響は限定的だった。