【米経済コラム】FRBによる金融危機回避措置の代償は-Jベリー

サブプライムローン(信用力が低い個人向 け住宅融資)問題が引き金となった金融危機から1年が経過して、米国の金融 システム内にある多くの弱点が明らかになってきた。政治的に可能だとしても、 こうした弱点をすべて克服するには数年かかりそうな気配だ。

金融機関の破たんが金融システム全体の崩壊につながるようなシステミッ クリスクを回避するには、相互に関連した多くの措置が必要となる。そうした 災難は今年3月、かろうじて回避された。米連邦準備制度理事会(FRB)が 米証券大手のベアー・スターンズの破たん回避に向けて、例外的な措置を講じ たためだ。

つまり、こうした措置は金融機関のリスクを制限する方法が含まれること になるだろう。必要な措置の多くは強い反対に遭うことになりそうだ。という のも、リスクを制限すれば、かつてのような高い収益性を回復することができ なくなるからだ。米モルガン・スタンレーのエコノミスト、リチャード・バーナ ー氏は今月25日、投資家は「レバレッジやリスクテーク、金融機関の収益など に対する規制が何を意味するか完全には理解していない」と指摘した。

しかし、野放図なリスクテークや金融システムを十分監視していなかった ことの代償は大き過ぎて、放置するわけにはいかない。

規制回避

米国の金融業界やそのロビー集団は政治家の主要な資金源でもあり、大部 分はその種の規制強化を回避することが可能だった。それが間違ったことだと しても、彼らは再び規制強化を阻止することができるかもしれない。

これに対し、FRBのバーナンキ議長は今月22日の講演で、「金融システ ムの将来や金融関連規則をめぐって起きる国民的な議論」となる問題の一端を 示した。こうした議論の及ぶ視野は気が遠くなるほど幅広い。

ベアー・スターンズ問題は、重大なシステミックリスクをもたらす可能性 のある金融機関の破たんへの対処に関して、「明確な法的枠組み」が存在しなか ったという事実を浮き彫りにした-。バーナンキ議長はこう指摘した。通常の 時間がかかる破産手続きは明らかに機能しないのだ。

FRBは前例のない措置で、米銀JPモルガン・チェースによるベアー・ス ターンズの救済合併を後押しした。これは潜在的に税金投入につながる可能性 があるため、同議長は財務省に責任を移譲し、資金源を付与する法律の成立を 提案した。

他の投資銀行がベアー・スターンズのような流動性危機に陥らないように するため、FRBは窓口貸付制度の対象をプライマリーディーラー(米政府証 券公認ディーラー)にまで広げた。それは、「異常かつ切迫した環境」の下では 銀行業以外に対しても中央銀行の貸し出しを認めた大恐慌時代の法律を拠り所 としている。「異常かつ切迫した環境」は、今まさにサブプライム危機に当ては まる。

ただ、バーナンキ議長や他の金融当局者らは、そうした貸出制度の権限が 明確に付与されるように「連邦準備法」の改正が必要だと考えている。それと 同時に、当局者らはFRBが投資銀行にも窓口貸付を行うとすれば、銀行に対 する場合と同様に、規制や監督を行う法的な権限も必要だと指摘している。

他の選択肢はない

現在、FRBは米証券取引委員会(SEC)との合意覚書に基づき、投資 銀行に検査官を派遣している。SECには投資銀行を監督する権限がありなが ら、これまでリスクの度合いや投資レバレッジの程度を実際に規制したことは なかった。

適切な権限が付与されれば、FRBはこうした措置を取るだろうし、その 過程で金融業界の収益性を限定することになるだろう。しかし、これ以外には 選択肢はないだろう。米国の金融システムが発展するにつれて、金融機関のい くつかは「大き過ぎてつぶせない」存在になったからである。ベアー・スター ンズの場合と同様に、経営破たんすれば、金融システム全体や米経済に対し、 リスクを負わせることになろう。

米政府による効果的な監視とは、証券会社が「資本や流動性といった緩衝 材を適切に維持し、リスクや流動性管理に対する総合的なアプローチを発展さ せる」ようにすることだと、バーナンキ議長は講演で述べた。

現在、明らかになっているように、いくつかの巨大投資銀行の経営者らは リスクや流動性の管理に大失敗し、受けたリスクに対して資本が少な過ぎた。 同議長はほかにも立法措置につながる可能性のある問題に触れた。これは資本 規定や貸倒引当金、信用供与の急拡大につながる他の規則を見直す必要性があ るものだ。

現在の金融危機は、米国の金融構造や金融機関の経営、規制、監督には数 多くの問題があることを示した。FRBは危機を鎮めようと試み、将来を見越 して、包括的な方法でより強固なシステム構築を目指している。大統領と議会 は来年の年明け早々から、自らの役割を引き受け、努力する必要がある。 (ジョン・ベリー)

(ジョン・ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。こ のコラムの内容は、同氏自身の見解です)

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