【今週の日本株】続落へ、海外勢の売り圧力強い-景気刺激策を見極め

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今週(25日-29日)の東京株式相場は、 続落する可能性が高い。世界的な信用収縮懸念を背景にグローバルな運用を行 う海外機関投資家のリスク許容度が低下、ヘッジファンド投資を縮小する動き も出ている。日本や中国の景気刺激策の発表も予定され、政策期待を持ちなが ら安値圏での株価推移を見守る向きも多いようだ。

シンガポール拠点のヘッジファンド、エルムウッド・アドバイザーズのク イン・リオダン社長は「皆が弱気というのが一番の明るい兆し。投資のチャン スは近づいているが、日本の政府が何か株価浮揚策を出さないと買いづらい」 と指摘している。

ロング・アンド・ショート戦略の限界

海外機関投資家の動向に詳しい草野グローバルフロンティア代表の草野豊 己氏は、「日本株に特化するロング・アンド・ショート型のヘッジファンドは ほとんどが壊滅的。ファンド・オブ・ファンズへの解約が殺到している状況で、 年内に30-40本のヘッジファンドは消える」と話す。世界的な金融システム 不安を背景に、真の意味での資金の出し手(富裕層など個人投資家)のリスク 忌避志向が高まっているそうだ。

シンガポールの調査会社ユーレカヘッジが公表する7月のユーレカヘッ ジ・ヘッジファンド指数によると、世界規模で運用を行う2407ファンドの運 用成績は前月比2.3%の下落。うちアジア指数が1.7%下落、日本指数が1.9% 下落した。超低金利下でロング(買い持ち)に偏重しがちだった日本人ヘッジ ファンドマネジャーは、7月以降の相場下落局面で、ショート(売り持ち)の ポジションがとれず、十分な分散が働かなかったとみられる。

前週末段階でTOPIXの年初来騰落率はマイナス18%。米S&P500指 数はマイナス12%、独DAX指数がマイナス21%、中国上海総合指数はマイ ナス54%、香港ハンセン指数がマイナス27%、ムンバイSENSEX30指数 がマイナス29%で、日本は比較的下げが緩やかな部類に入る。しかし、「ドル ベースの日経平均はすでに3月の安値を下回る状況で、日本円で見た日経平均 も3月安値を下回る」(草野氏)との声も出て、弱気派が増えている。前週の 日本株相場は、TOPIXが前の週に比べ2.5%安の1216.42ポイント、日経 平均株価が同2.7%安の1万2666円4銭となった。

危うい中国は景気対策にらみ

北京五輪が24日閉幕した。金融市場関係者の間では、中国政府が25日に も総合経済対策を公表するとの観測が根強く、大型減税や証券・住宅業界への 支援策などを期待する向きが多い。米投資銀大手JPモルガンでは、最大4000 億元規模(6兆4000億円)の景気刺激策を実施すると試算。上海総合指数は 20日の取引で急上昇した。

アジア経済研究所の今井健一研究員によると、中国はすでに景気後退局面 に入った。「劇的な措置は望みにくいが、金融政策は今後緩和寄りの政策が多 く出てくる」という。今井氏は、中国のGDP成長率に占める「外需寄与度」 に着目。昨今の経常収支の黒字額縮小から、理論上は外需寄与度がマイナスに 転落するはずだと予測する。外需寄与度は04年の0.6%から05年には2.5% へ急伸、06年は2.2%、07年は2.6%と、貢献度を強めてきた。「外需の2% 強の寄与分が削げ落ちると、GDP成長率は8%を割り込むとみられ、中国に とっては深刻な経済減速になる」と今井氏。中国はここ5年間、10%超の成長 率で景気の「山」を登ってきたが、仮に8%以下に落ち込めば、「数年ターム の景気後退期を甘受せざるを得ない」(同氏)。

中国消費の底力、日本も対策焦点

しかし、中国の生活が豊かになるに連れて家計の消費支出も増大、「政府 の消費刺激策もあり、今後は消費の寄与度が徐々に上がっていく見通し」(日 興アセットマネジメントの宮森芳夏シニアストラテジスト)との声もある。実 際、07年のGDP成長率11.9%のうち、消費(最終消費支出)の寄与度は

4.7%となり、初めて投資(総資本形成)の4.6%を上回った。

「今後は1人当たりGDPの成長を背景に、日本の約10倍の総人口が持 つ潜在需要がさらに拡大していく」と見るのは、UBS証券の山手剛人アナリ ストだ。山手氏によると、07年の中国の消費財小売総額は日本円換算で140兆 円(8.9兆元)に達し、長期低迷する日本の小売販売額136兆円をあっさり抜 き去ったという。投資の観点からは、「まずは自動車、白物家電、携帯電話な どハード系の耐久財の立ち上がりが早くなる」(同氏)と分析した。

日本でも政策期待が高まっている。政府・与党は29日にも総合経済対策 を公表する見通し。自民党の古賀誠選挙対策委員長は17日の民放番組で、08 年度補正予算について「財務省に徹底的に議論させていけば、2-3兆円の金 額だったら知恵を出せると思う」と発言、市場関係者の間でも補正予算の規模 は2-3兆円との見方が多い。22日午前の閣議後会見では、対策規模や財源は 明らかにされなかったが、伊吹文明財務相が「経済対策は補正予算だけで行う ものではない」と指摘、来年度予算にまたがる対策だと説明した。

「霞が関埋蔵金」問題で注目を集めた元財務官僚で、東洋大学経済学部の 高橋洋一教授は7月末のセミナーで、特別会計の繰り越し利益(埋蔵金)は実 際にあると強調。「自民党総務会でも、埋蔵金を『改革の配当』として国民に 還元する方針が決議されている。埋蔵金を使わざるを得ない」と話した。高橋 氏らが小泉政権下でまとめた埋蔵金規模は、07年度中の対応で最大6.8兆円、 08年度予算時で10兆円超、その後3年間で最大37.9兆円になるという。

日米欧で消費指標目白押し

今週は、日米欧で消費関連の経済指標の発表が予定されている。欧州では 25日にドイツで8月のIfo景況感指数、29日に8月のユーロ圏消費者物価、 米国では26日に8月の消費者信頼感指数、29日に7月の個人支出、8月のシ カゴ購買部協会景気指数など。日本では、7月の全国消費者物価と家計調査が 29日に公表される。また、米百貨店大手のシアーズや米高級ブランドのティフ ァニーが28日に5-7月期(第2四半期)決算を開示する。

米ハーバード大学のマーティン・フェルドシュタイン教授は21日、ブル ームバーグ・テレビのインタビューで、「月間の経済統計はほとんどすべて景 気下向きを示唆している。リセッション(景気後退)はさらに深刻化する危険 がある」と語った。このほかの材料は、米国で7月の中古住宅販売(25日)、 6月のS&P・ケースシラー住宅価格指数(26日)、4-6月期GDPの改定 値(28日)発表があり、日本のトヨタ自動車は28日に経営説明会を開く。

【市場関係者の当面の日本株相場の見方】
●東海東京調査センターの隅谷俊夫投資調査部長
  「米S&P500種株価指数の月別騰落を見ると、3月を除き、今年は8月
まで過去8年間の平均と一致。9月は例年10-11月に決算を迎えるミューチ
ュアルファンドやヘッジファンドの決算対策売りで下げやすく、今年はファン
ドの成績悪化で解約が相次ぐ可能性があり、下落リスクが意識される。米景気
後退が年末まで続けば、先取りする米株式市場は9-10月に底割れしてもおか
しくない。昨秋から後退局面に入った国内景気も、近年3度の後退期間は最短
でも14カ月。少なくとも年内は後退色を引きずりそうで、相場は低迷しやす
い。日経平均はいずれ1万2000円台前半への下落が予想される」

●コスモ証券エクイティ部の清水三津雄副部長
  「ドルベースの日経平均株価はすでに3月の安値を下回り、下値模索の状
況だ。このチャート形状だと、120ドルが今後の頭となってしまうため、戻っ
ても上値を押さえられ厳しい。底が確認できないうちは、年末の株高を想定し
トヨタ自動車や任天堂などの主力輸出株を買い下がっていくのが賢明だ。株価
指数が戻る時の主力になり得るハイテク株なども拾っておきたい」

●東洋証券情報部の大塚竜太部長
  「米国や中国景気など外部環境に不透明感はあるものの、日本株はテクニ
カル分析的にそろそろリバウンドしてもおかしくはない水準にある。日経平均
の3月月中平均は1万2602円93銭。相場はこの水準に近づいており、ポート
フォリオの関係上、年金などからの買いが期待できる。政府・与党による『安
心実現のための総合対策』の具体策が発表される見通しで、太陽電池などのエ
ネルギー関連株にも期待したい。予想レンジは1万2700円-1万3200円」

●かざか証券の田部井美彦・市場調査部長
  「上昇を予想。米国で発表される経済統計は、減税の効果が残っており、
悪くない数字が出て来そうだ。6月のS&P/ケースシラー住宅価格指数が改
善の兆しが出れば、株価はさらに上昇しやすくなる。また来月以降、景気対策
が打たれる可能性があり、それを期待する動きもありそうだ。北京五輪が終わ
り、中国の生産活動が通常に戻るため、経済が活発化して来よう。太陽電池や
原子力発電所などの環境銘柄が物色されそうだ」

--共同取材:Steve Matthews、Kathleen Hays、長谷川 敏郎、常冨 浩太郎、 浅野 文重   Editor:Shintaro Inkyo

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