イオンがきょう持ち株会社化、収益重視に舵取り-信頼回復なるか(2)

巨大小売りグループのイオンは21日、純粋持ち 株会社に移行した。規模拡大から収益重視に大きく舵を切るため、事業ごとに最高経 営責任者、財務や人事など機能別に責任者も置き、権限と責任を明確化。グループ全 体の成長を重視する意思決定を図る。主力の総合スーパー事業では売り場改革、店舗 リストラも進める。だが、消費減速の逆風は強まる一方で、期待される大きなグルー プ再編もいまだみられない。市場は警戒しながらイオンの動きを見守っている。

「楽観的に見過ぎていた」。2008年2月期は10期ぶりの営業減益、09年2月期 第1四半期が20%営業減益だったのを受け、リーマンブラザーズ証券の佐々木泰行シ ニアアナリストは反省した。特に、今まで強化してきた独自企画(プライベートブラ ンド=PB)商品「トップバリュ」の売り上げ構成比の増加、自社物流網によるメー カーとの直接取引には「その投資に見合うだけの粗利益率の改善や物流費の削減など の効果が見られなかった」という。

M&A(企業の合併・買収)や積極出店で、イオンのグループ売上高は6兆円を 超えた。必要な資金は市場から調達した。04年、06年と計3000億円の公募増資など を実施。「規模拡大でメーカーに対する価格交渉力を強め、収益力を高める」という 岡田元也社長のシナリオに投資家は大きな期待を寄せていた。だが、前期の営業利益 率は3.0%。セブン&アイホールディングスの4.9%に比べ見劣りする。11年2月期に は4.3%の目標を掲げるが、計画に対する信頼度は低い。メーカーから価格支配権を 奪うのにも「相当の時間がかかるだろう」(佐々木氏)。巨額投資がなかなか利益に 結びつかない現実に不満が募っている。

GMS改革、店舗リストラ

イオンは持ち株会社化に伴い、11の事業に分類し、グループ企業約160社を振り 分ける。持ち株会社はどの事業にどのくらい投資するかを決め、投資効率を追求する。 「持ち株会社がGMS(総合スーパー)の『ジャスコ』にもっと投資したいと思って もらえるよう、従来の常識や慣習にとらわれず、顧客の求める売り場をゼロから考え ている」。イオン本体にあった小売り事業が独立し、同日誕生した子会社イオンリテ ールの村井正平社長はGMS改革に意欲を示す。

連結売上高の6割を占めるGMS事業の再生は最重要課題。同事業の最高経営責 任者(CEO)とグループの最高財務責任者(CFO)を豊島正明専務が兼務し、収 益性に目を光らせる。10年2月期までに店舗リストラも断行。対象となる125店舗の うち、85店舗は売り場面積の縮小やテナント拡張を進めるが、GMSの約1割に当た る不採算の40店は閉鎖する。

「これまでも小売り各社が店舗リストラを進めてきたが、そう簡単にはいかず、 計画通りにいかないことがほとんど」(新光証券の川原潤アナリスト)。09年度以降、 出店ペースは半減するが、資材高や人件費の増加でコストはかさむ傾向にある。景気 後退など事業環境も厳しいだけに企業努力は報われにくくなっている。売り場改革で どれだけ需要を掘り起こせるのか。今期中に実施する200億円のコスト削減が本当に 実現し、どれだけ消費不振をカバーできるのか。「結果がしっかり出るのを待つしか ない」(同氏)。

少額出資企業への統治、重複事業の集約

各社の自立性を尊重し、「ゆるやかな連帯」といわれるイオンのグループ経営。 傘下には1-3割出資の企業が多く、国内外に約30の上場企業がある。今までは各 社がそれぞれの利益を追求してきたが、新体制ではグループ全体の収益最大化に目を 向けなければならない。「これまで個別にそれなりにうまくいっていただけに、部分 最適と全体最適のバランスが重要。持ち株会社の経営力、統治力が問われる」(野村 証券金融経済研究所の正田雅史シニアアナリスト)。

迅速な意思決定が図られるのかという不安もある。GMS事業でみれば、イオン リテールの村井社長、持ち株会社には豊島CEO、デベロッパー事業ではイオンモー ルの村上教行社長、持ち株会社に林直樹CEOがいる。各事業で改革などを決める場 合、「一体誰がリーダーシップを取り、誰が責任をとるのか非常にわかりにくい」 (リーマン証の佐々木氏)。

GMS以外の事業も成長させるためにも、舵取りが困難になった場合はイオンが 少額出資の企業に対する統治を強める可能性がある。グループ経営効率化のため、4 月の中期経営計画では重複部門や事業の集約を進める方針も打ち出したが、中計公表 後では5月に靴専門店事業の統合があったにすぎない。持ち株会社は将来性や採算性 などを基準に事業の取捨選択を進めるが、「今もって具体策は表面化していない」 (野村証の正田氏)。今後の大胆なグループ再編が待たれる。

投資対象としての魅力

それでも、イオンは投資対象として大きな魅力があるとの声は消えない。海外展 開、金融事業など中長期的な利益成長の種が存在しているからだ。新体制はこれまで 国内偏重だった経営資源を海外に振り向ける狙いもある。業績貢献はまだ先になるが、 特に中国での成長期待は大きい。今秋には北京1号店を開業し、出店エリアを華南か ら華北にまで拡大。強みのモール型ショッピングセンターを武器に、10年には100店 舗体制を築く。

保有するGMS店舗を売却して向こう3年で3500億円規模の資金を調達する計 画、いわゆる「資産の流動化」にも投資家の関心は高い。ただ、不動産市況の冷え込 みに加え、買い手の不動産ファンドなどの資金調達力が弱っており、実行性に対する 懸念も指摘される。積極出店やM&Aで急速にイオンの総資産は膨張、今期も3000 億円の設備投資を計画しており、膨らむ一方。「資産効率の改善には期待して注目し ているが、実行できるかどうかは不透明だ」(同氏)。

イオン株は前期決算後に失望感から大きく売り込まれたが、現在の株価は底打ち 感があり、「業績に比べて割安である」(リーマン証の佐々木氏)。相次ぐ値上げで 消費者の節約志向が高まるなか、割安なトップバリュの販売も伸びている。昨年はグ ループ全体でのPB商品の開発・調達・物流の3つの機能会社を設立し、規模を生か したグループ全体の収益力向上へ一歩を踏み出した。投資家の不安を少しずつ払しょ くし、信頼を回復できるのか。新体制下での計画実行力、経営手腕が試されている。

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