希少金属レニウムの専門トレーダー:ヘッジファンドから引く手あまた

英国に住むアンソニー・リップマン氏 (51)は10年以上にわたって、歌のレッスンや演劇などの芸術に情熱を傾け る一方、インジウムやジスプロシウム、ストロンチウムなどの希少金属を取引 する日々を送っている。

最近、リップマン氏のもとには、債券や株式相場で打撃を受けたヘッジフ ァンドからのアプローチが後を絶たない。レニウム取引におけるリップマン氏 の成功に注目しているのだ。レニウムは、ジェットエンジンの燃費向上のため に利用される。航空業界が石油コストの抑制を目指すなか、レニウム価格は過 去3年間でほぼ8倍に高騰し、リップマン氏が経営するリップマン・ウォルト ンの利益は3倍に拡大した。

リップマン氏はロンドンの南西約32キロメートルに位置するウォルト ン・オン・テームズにある事務所でインタビューに応じ、「ヘッジファンドか ら毎日にように電話がかかってくる」と語った。「『ヘッジファンド』と聞い ただけで怖くて震え上がってしまう。ヘッジファンドが近づいて来たら、われ われは背中の針をとがらせたハリネズミのようになっている。われわれのビジ ネスは謎に包まれた部分が非常に多い。ヘッジファンドは決して参入できない だろう」との見方を示す。

ハリウッドの衣装係の伝記を執筆したこともあるリップマン氏は、偶然レ ニウム取引の道に入った。中国やインド、ブラジルなどの需要拡大による金属 高騰の恩恵を受けているトレーダーは、リップマン氏だけというわけではない。 ことし付けた過去最高値からは反落しているものの、銅相場は2003年以降、 4倍以上に、アルミニウム相場は2倍以上に、それぞれ上昇している。

灰色がかったレニウムは、銅やモリブデンの鉱床で発見される。リップマ ン氏によると、7月時点のレニウム価格は1キログラム当たり1万1100ドル。 05年6月時点では1478ドルだった。米地質調査所(USGS)によると、 1925年に発見されたレニウムは、最後の天然元素だ。

利益は3倍増

リップマン氏によると、レニウムは、07年8月-08年7月のリップマ ン・ウォルトンの収入1684万ポンド(約34億5000万円)のうち6割を占め、 前年の4割を上回った。同社の利益は3倍以上に拡大し100万ポンドとなった。

ファストマーケッツ(ロンドン)の1部門で希少金属に関する情報を提供 するマイナーメタルズ・ドット・コムのマーチン・ヘイズ支局長は「アンソニ ーは非常に長期にわたってレニウムを専門としている。他のトレーダーらは、 時々レニウム取引を手掛けるが、一貫して扱うことはない。アンソニーが設定 する価格が最も正確であると見なされている」と言う。

ヘイズ氏によると、世界のレニウム生産量は「あまりにも少ないため取引 所での取引は不可能」。USGSによると、世界の07年のレニウム生産量は

49.5トンと、06年の47.2トンから増加した。USGSの商品専門家、マイケ ル・マジャール氏によると、レニウムの90%以上はチリ、カザフスタン、米国 で生産され、採掘には特別な装置が必要だ。同氏は、これらの装置の設置台数 が増えない限り、レニウム価格が下落する可能性は低いとみている。

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