日銀の透明性向上目指す白川総裁-「不可解」との批判払しょくが狙い

世界の主要な中央銀行の中で最も不透明な 1行だとの批判も受ける日本銀行だが、白川方明総裁は日銀の透明性向上に取 り組んでいる。

白川総裁が記者会見で目指しているのは、単に金融政策の方向性を示唆す るということではなく、政策判断に至る考え方の説明だ。7月の金融政策決定 会合から、日銀は政策変更の有無にかかわらず判断理由を文書にして発表する ことになった。日銀はまた、経済成長・インフレ見通しの公表回数も増やすこ とも決めた。

シカゴ大学で学んだこともある白川総裁が日銀にもたらしている変化は世 界的な流れに沿ったものだ。政策当局者がどのようにして判断に達したかを、 日銀の外からでもより理解しやすいように努めている。

米グローバル・インサイト(マサチューセッツ州レキシントン)のチーフ エコミスト、ナリマン・ベーラベシュ氏は、市場との対話が明確になれば、イ ンフレ期待を抑え込む手助けになり、投資家も将来の金利予測が容易になると 述べる。

「日銀がしていることに対し不可解との思いがある。ほかの中銀と比べる と一層そうした感じがする」と言う同氏は、それが他の中銀に日銀が従おうとし ている理由だと指摘する。

スウェーデン中央銀行は2007年5月、毎月の金融政策会合後に記者会見を 開始。バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は同年11月、連邦準備 制度が1年間に示す経済予想の回数を2回から4回に倍増した。米カーネギ ー・メロン大学教授で、日銀の特別顧問を務めたこともあるアラン・メルツァ ー氏は、「主要な中銀はようやく秘密主義を放棄した」と話す。

政治介入

日銀の透明性向上は金融政策に対する政治介入の排除にもつながる。07年 1月中旬、自民党の中川秀直幹事長(当時)は日銀が同月の決定会合で追加利 上げに踏み切ることの是非について、日銀が利上げを決めるなら「政府は日銀 法に基づく権利を行使する義務がある」と述べ、議決延期請求権の行使も辞す べきでないとの考えを表明した。結局、日銀は政策金利を据え置き、0.5%への 利上げは翌2月の会合に持ち越した。

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは「人の思 惑で政策が決定されると市場が思えば、そこに政治介入の余地も出てくる。政 策の透明性が高まれば、市場の日銀に対するクレディビリテイも改善し、政治 家のコメントで市場が振れるリスクも減る」と話す。

ブルームバーグのエコノミスト調査によれば、26人中21人は来年6月ま で「政策金利は据え置き」と予想し、4人が「利上げ」、1人が「利下げ」と回 答。ドイツ証券の安達誠司シニアエコノミストは、日銀が政策変更の準備に取 り掛かった時に、投資家の期待をうまく操れるかどうかで白川総裁の真価が問 われると見ている。