日銀総裁会見の発言要旨:「0.75%で全員一致」と言い間違いも(2)

(主な一問一答を追加します)

【記者:日高正裕】

8月19日(ブルームバーグ):日本銀行の白川方明総裁は19日の定例会見 で、経済・物価情勢について次のように述べた。

――本日の決定の背景についてうかがいたい。

「本日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を

0.75%前後で推移するよう促すという、これまでの金融市場調節方針を維持す ることを全員一致で決定した。あ、ごめんなさい。すいません。0.5%前後で推 移するよう促すという、これまでの金融市場調節方針を維持することを全員一致 で決定した。失礼しました」

「ご承知のように、7月から公表文で2つの柱に基づく点検結果を示すこと にした。まず第1の柱についてそのポイントを説明すると、わが国の景気はエネ ルギー・原材料価格高や輸出の増勢鈍化などを背景に、停滞している。交易条件 の悪化による所得形成の弱まりなどから、設備投資は横ばいとなってきているほ か、個人消費は弱めの動きとなっている」

「4-6月の実質国内総生産(GDP)も1-3月のうるう年要因の反動が あるとはいえ、こうした動きを裏付けていると考えられる。先行きは、当面停滞 を続ける可能性が高いが、設備、雇用面での過剰を抱えているわけではないため、 国際商品市況高が一服し、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やか な成長経路に復していくと予想される」

「物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、石油製品や食料品 の価格上昇などから、足元プラス2%程度と、消費税引き上げの影響で物価が上 昇した1997年度を除くと、92年12月のプラス2.0%以来の高い伸びとなって いる。先行きは、当面上昇率がやや高まった後、徐々に低下していくと予想され る。このように、わが国経済は物価安定の下での持続的な成長経路に復していく とみられる」

「次に第2の柱に基づきリスク要因をみると、国際金融資本市場は不安定な 状態が続いている。米欧金融機関の損失拡大や、世界的な景気悪化の懸念などを 背景に、信用スプレッドが高めの水準が続いているほか、株価も不安定な動きを 続けている。米国経済は停滞しており、世界経済には下振れリスクがある」

「国内民間需要については、国際商品市況の動向を反映した所得形成の弱ま りから下振れるリスクがある。設備・雇用面での調整圧力を抱えていないとはい え、景気の面では下振れリスクに注意する必要がある。物価面では、世界的にイ ンフレ圧力が高い状況が続いている。このところ国際商品市況が反落しているが、 この傾向が定着するかどうかはまだ不透明だ」

「わが国の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者 のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要で ある。この間、景気の下振れリスクが薄れる場合には、緩和的な金融環境の長期 化が経済・物価の振幅をもたらすリスクが高まると考えられる」

「金融政策運営の考え方としては、日銀としては金融市場の安定を維持する と同時に、経済・物価の見通しとその蓋然性、上下両方向のリスク要因を丹念に 点検しながら、それらに応じて機動的に金融政策運営を行っていく方針である」

――今回、景気判断を「さらに減速している」から「停滞している」に変更した。 どういう意味合いがあるのか。

「今回、表現を変えたわけだが、日銀として景気について判断を大きく変え たということではない。振り返ってみると、4月に『景気は減速』という表現を 使い、前回7月には『景気はさらに減速』とした。その際、『さらに減速した』 という経済がどのような状態か、それが停滞という言葉で表現すべきかどうかに ついては、その時点ではそれを判断する十分なデータがそろっていたわけではな かったので、それは次回以降判断していこうということだった」

「今回、さまざまな観点から点検したが、基本的なメカニズムについてわれ われの判断が変わったわけではない。それから、停滞といっても、これから経済 が大きく落ち込む可能性は小さいと判断している。そうした意味で停滞という言 葉を使った」

――白川総裁は7月18日の講演で、景気の下振れリスクと物価の上振れリスク のどちらを重視しているかについて「5対5」と発言したが、今はどうか。

「結論は前回と変わっていない。景気は下振れリスク、物価の上振れリスク、 双方に注意が必要な局面と申し上げたが、今回も全く同様の判断だ」

――原油など国際商品市況が最近下落傾向にあるが、どのような影響があるか。

「最近の原油価格下落の背景として、1つは世界経済の減速を受けた需要の 減少、2つ目は投機的要因のはく落など、いくつかの要因が指摘されている。現 時点で、こうした要因のいずれが支配的なのか特定するのは難しいし、原油価格 の先行きを見通すことも困難だ。われわれとしては上下両方向の可能性を意識し ながら、しかし現実に足元の原油価格は前回の決定会合対比下がっているので、 まずはそれが経済・物価にどのような影響を及ぼすのか考えていく必要がある」

「原油価格の低下それだけを取り出してみると、これは日本にとって交易条 件の悪化を緩和するので、日本の景気にとってそれ自体としてはプラスに働く。 ただ同時に、これまでの原油価格の上昇が基本的には世界経済全体の拡大を反映 したものなので、足元の原油価格の下落が世界経済の減速によるものだとすれば、 わが国の輸出を減少させることになる。その両方の要素があるわけであり、そこ は両方の可能性を意識しながら経済をみていく」

「ただ、あえて言うと、エネルギー・食料の価格が過去数年間上がってきた ということは、基本的には世界全体としての需要が供給を大きく上回って拡大し てきた、つまり世界経済の成長が持続可能なスピードより若干速かったというこ とだと思う。そうであれば、世界経済の成長がもう少し減速するということは、 長い目で見れば世界経済の安定、それから日本経済にとってもプラスだ。いずれ にしても、これは長い目で見た経済の観察だ」

――米国経済についてはどうみるか。

「最近では、住宅ローンだけでなく、商業用不動産や消費者ローンの延滞率 が上昇するなど、金融システムと実体経済のマイナスの相互作用が懸念される状 態になってきている。先行きの見通しについても、こうした相互作用がいつ、ど のように収束するのかがポイントだが、なお帰すうが見えない状況にあり、引き 続き不確実性が高いと判断している」

――停滞という言葉は97、98年に使われたが、景気が当時のように底割れする 可能性はないのか。

「現在、設備、雇用の面で大きな調整圧力を抱えていない。90年代と2000 年代初頭を考えてみると、設備、在庫、雇用、それから債務の面で日本経済は大 きな過剰を抱えていた。その中でマイナスのショックが起こると、それが幾重に も増幅されていき、深く景気が落ち込んでいくことになりやすかった。今回、日 本経済は設備についても雇用についても、調整圧力を抱えていない」

「あえて言うと、在庫が少し足元で増えているが、この在庫も大きな調整圧 力を抱えているわけではない。そういう意味で、景気が大きく可能性が高いかと 言うと、その可能性は小さいと現状では考えている」

――国内の金融機関の融資姿勢をどうみるか。

「金融機関の融資姿勢は、収益のコアである貸出関係の利益増加を図るべく、 大手行、地域金融機関とも多くの先が貸出残高の増加を図っていくという姿勢に ある。その結果、銀行の貸出残高の前年比はここにきて伸び率を高めている。た だ、中小企業、特に零細企業については資金繰りが厳しい方向に向かっていると いうことは認識している。金融機関の貸し出しも大企業向けは増加しているが、 中小企業向けは減少している」

「建設、不動産等、倒産が増加している業種に対しては、金融機関はよりき め細かな信用リスクの管理を行っていると認識している。ただ、企業金融をめぐ る情勢は全体としては緩和的な状況が維持されているし、金融機関もかつてと異 なり、自己資本が制約となって貸し出しが伸ばせないという状況ではない。ただ、 いずれにせよ、金融の状況、企業の資金繰りの状況、金融機関の融資の方針につ いては引き続ききめ細かく点検していきたい」

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