中川元自民政調会長:法人実効税率の下げと企業減税が必要-経済対策

中川昭一元自民党政調会長はブルームバー グ・ニュースのインタビューで、景気後退局面に入った可能性のある日本の景 気について「緊急事態にある」との認識を示した上で、日本経済に力強さを取 り戻すため、法人税の実効税率を現行の約40%から約30%に引き下げて対日投 資を促進することや、2兆-3兆円規模の企業減税を柱とした経済対策を早急 に検討すべきだとの考えを示した。インタビューは7日に行った。

中川氏はまず、日本経済について「緊急事態に入ったという危機感がある。 日本の財政政策で求められているのは『損して得を取る』対策だ」と説明。「目 先の税収が落ちても経済が良くなり、企業が元気になれば本来の税収を取り戻 すことができる。減税を含め、あらゆることを検討すべきだ」と強調した。

中川氏は具体策として、「法人税の実効税率を30%程度の国際的な水準に引 き下げると同時に、景気刺激策として投資減税の拡大など消費税の1%(2.5兆 円)に相当する2兆-3兆円の減税効果を1つの目安にしたい」と言明。その 上で、「ますます経済が悪くなるという悲観的な認識を持っているが、政策次第 で必ず切り抜けることができるという確信も持っている」と語った。

法人実効税率の引き下げについては、福田改造内閣で入閣した茂木敏充金 融担当相が6日、「法人税は欧州と比較して高い水準にある」と述べ、見直しに 前向きな考えを表明。与謝野馨経済財政政策担当相も「法人税率引き下げを全 面的に否定するつもりはない」と発言するなど閣内からも容認する声が上がっ ているが、厳しい財政状況下で実現への道のりは険しい。

財政当局は慎重姿勢

今年度の法人税の予算額は国ベースで16.7兆円。10%の引き下げとなれば、 2兆円近い減収となる。杉本和行財務次官は「財政状況が非常に厳しいことを 踏まえ、相当慎重な検討が必要だ」と主張している。これまでも法人税率引き 下げの議論はあったが、研究開発税制などの政策減税の拡充にとどまっている。

みずほ総合研究所の内藤啓介上席主任研究員は「国際競争という観点から 見たときに、法人税率を下げる必要があると思う。ただ、財政再建を進めると いう要請もあり、政府としても2011年度までのプライマリーバランス(基礎的 財政収支)の目標も設定しているので、今すぐやるというのは、なかなか難し いと思う」と語る。

日本の法人税の実効税率は国税27.89%、地方税12.80%の計40.69%と米 カリフォルニア州の40.75%とほぼ同水準。これに対し、欧州では昨年、英国が 30%から28%に引き下げたほか、ドイツも約39%から約30%に引き下げるなど、 法人税率の見直しが相次いでいる。アジアでは中国が25%、韓国が27.50%と さらに低く抑え、海外からの投資拡大を狙っている。

著しく低い対日直接投資残高

一方、対日直接投資の残高は07年度末で国内総生産(GDP)比約3%の

15.4兆円。同44.6%に上る英国や33.2%のフランスなどに比べてその割合はる かに低い。韓国も同8.8%と日本を上回っている。

富士総研のマーティン・シュルツ主任研究員は「世界のあらゆる国々が法 人税率の引き下げを行っている。長期的に、日本もやらなければいけないだろ う」との見方を示している。

中川氏は「高い法人税率が企業の活力や国際競争力をそぐ。日本への投資 を検討している外国企業にも非常に厳しい条件になっている」と指摘。法人税 率の10%引き下げによって対内直接投資が30%増加するとの試算を紹介し、日 本の場合は1.2兆円増になるとはじき出した。また、2兆円規模の減税によっ て企業の設備投資が1兆円増加するとみている。

中川氏はこれらの政策減税に関して「特に、今一番厳しい中小企業の投資 や人材育成を支援する減税が必要だ」と述べ、中小企業向けの政策減税の必要 性を指摘。その上で、「企業は手元に残る2兆-3兆円の資金を内部留保や自己 資本の充実ではなく、賃金や投資あるいは配当に回すことで経済循環のメカニ ズムを動かす1つのきっかけにすべきだ」と主張した。

国債発行も選択肢から除外せず

政府は7日に公表した8月の月例経済報告で基調判断を下方修正し、4年 8カ月ぶりに「回復」の表現を削除。02年2月から続いてきた戦後最長の景気 拡張局面に終止符が打たれた公算が大きくなった。福田康夫首相は「景気の減 速がかなり明確になった。厳しさを感じている」との認識を示しており、政府 は8月末までに総合経済対策を取りまとめることになっている。

中川氏は「財政再建、構造改革は必要だが、あまりに原理主義的になって しまい、景気回復のための積極政策は悪だというムードがある。これを何とか 是正し、どちらも大事だという認識で難局を乗り切らなければならない」と強 調。11年度までのプライマリーバランス黒字化の実現も厳しいとし、経済対策 を最優先すべきだと語った。

中川氏は財源について、07年度予算の剰余金(約6000億円)の活用をはじ め、中長期的に外貨準備や年金基金の積極運用に伴う収益によって捻出(ねん しゅつ)するよう提言。新規国債発行については「最後の手段。それまでにや ることはたくさんある」とする一方で、「新たな財政出動という選択肢を最初か ら捨てておくほど日本の経済状況は生易しいものではない」と語った。

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