【コラム】北京五輪開幕!検閲の世界王者がアジア主導-W・ペセック

インターネットが中国を変えるのか、それと も中国がインターネットを変えるのか。8日開幕の北京五輪は、後者の可能性 を示している。より興味深いことに、アジアの多くの国々が中国に追随する公 算があるが、これはアジアの経済見通しにとって不吉な前兆かもしれない。

非政府組織「国境なき記者団」は、中国をサイバースペース検閲の「世界 チャンピオン」だと呼ぶ。北京からアムネスティ・インターナショナルといっ たサイトにアクセスできなかったジャーナリストらは、そのことをあらためて 認識した。国際オリンピック委員会(IOC)は中国にそうしたサイトへのア クセスを認めるよう圧力を掛けた。ただ、ロイター通信は、IOCが当初、中 国が北京五輪期間中にこうした措置を講じることに同意したと報じた。

中国が13億人の国民が見聞する情報を選別しようとする試みは、アジアの 先例となる可能性もある。米ハーバード大学のバークマン・センター・フォー・ インターネット・アンド・ソサエティーのエグゼクティブディレクター、ジョ ン・パルフレー氏は、「アジアではネットの情報選別の動きがここ5年間で広が っている」と指摘、「経済を成長させたいという願いと政治的発言をコントロー ルしたいという願いの対立」が浮き彫りになっているという。

報道の自由は、長期にわたる経済繁栄の鍵だ。不正をなくし、政府の効率 を高め、企業幹部に責任を課す。子供がポルノサイトにアクセスできないよう にしたり、テロや詐欺に絡んだサイトを政府が制限するのは正しいことだ。だ が、ささいな検閲が、やがて大きく広がる展開もあり得る。こうしたことはア ジアではリスクであり、特に政治が絡むとその危険性は大きい。

グッドニュース

インターネットの普及に伴い、政府は大衆の意見により反応するようにな った。批判を押さえ込み、スキャンダルをもみ消すことは10年前と比べると 難しい。中国についてもグッドニュースがある。アジア2位の経済大国である 中国のインターネット人口は2億5300万人に達し、世界一だ。ネットを通じ、 例えば文化大革命といった自国の暗い過去を知る国民もわずかだが増えた。中 国のネット市民は不正や権力の乱用の摘発を手助けしている。こうした現象に 衝撃を受ける政府当局者もいる。これは良いことだ。

だが、グーグルやヤフーといった企業が、政治家の情報コントロールをあ まりに容易に受け入れているように見えるのは問題だ。香港大学のレベッカ・ マッキノン教授(メディア学)は、こうした動きが世界の情報技術(IT)へ の検閲の組み込みの制度化、合法化に一役買っていると述べる。

アジアでの検閲を考えると、中国やミャンマー、北朝鮮、ベトナムがまず 思い浮かぶ。インドやインドネシア、タイは一部のサイトやコンテンツ(情報 の内容)を時折制限する程度だ。最もインターネットが普及している国の1つ である韓国は、新たな規制を検討中で、これが透明性と民主主義に関し懸念を 引き起こしている。日本でも同様な動きが見られる。

説明責任

インターネットのビジネスの潜在力を利用する一方で、言論の自由におけ るネットの役割を最小限に抑えるという中国のやり方は、アジアではある程度 受け入れられているようだ。中国は情報選別の巨大な実験場と化しており、ア ジアの隣国はそれに注目している。

だが、こうしたことはこの闘いにネット利用者が最終的に敗北することを 意味するものではない。パルフレー氏は、「ネット上での情報選別の広がりに もかかわらず、ウェブ検閲の長期的な展望は大きくない」と語る。「アジア、そ れに中東などといった別の地域での市民は、検閲をすり抜けることにしばしそ の創意工夫を発揮している」のだという。

問題は、アジア各国の政府が検閲の弊害をいつ認識するかだ。2年、5年、 10年?それとももっと長い時間がかるのか。政府と企業幹部がその間、投資家 が要求する水準の説明責任を負うことがなければ、待ち受けているのは、アジ アの経済成長鈍化と市場の低迷、貧富の格差拡大ということになる。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストで す。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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