野村総研:ウォーター・ビジネスに活路-原料炭運搬船、帰路は水積載

世界的に水資源の希少性が叫ばれるなか、 野村総合研究所は、積荷を降ろした大型船が帰りの航行で重しとして積載する 海水が原因とされる生態系への懸念や、干ばつなど水不足対策を兼ねる新しい 試みに着手する。豪州産原料炭を日本に運搬するばら積み船を活用し、川崎市 から海水の代わりに使用済み工業用水を豪クイーンズランド州向けに輸出する ことで検討に入った。複数の関係者が、ブルームバーグ・ニュースとの取材で 明らかにした。

野村総研はこれまで、仏ヴェオリア社の日本国内水道事業拡充を支援する などウォーター(水)ビジネスに注力している。今回は川崎市と共同で市内の 工業施設で利用されている水を海水の代わりに船の重しにすることで、干ばつ など水不足に悩まされるクイーンズランド州への輸出を働きかけた格好だ。今 後、3-5年かけて商業化を目指すとしている。

川崎市の沿岸地域で主要製鉄所を運営するJFEスチールに協力を要請し、 JFE向けに原料炭を運搬した船を水輸出に活用する。野村総研とクイーンズ ランド州政府、川崎市が今月末にも正式発表する見通しだ。

1973年の石油ショック以降、川崎市は製造業の海外移転に伴い、工業用水 の需要が漸減傾向にあり、工業用水の輸出を推進したい考えだが、工業用水の 輸出は水利権など法的にクリアすべき課題が多いため、工業施設で再利用され る「プロセス水」と呼ばれる、使用済み工業用水を輸出に充てる方針だ。

日本からプロセス水を輸出するということは、干ばつなどの水不足対策だ けでなく、生態系を守るという点も見逃せない。大型タンカーやばら積み船は、 積荷を降ろした後、カラのまま運航すると転覆する恐れがあるため、帰路で海 水を重しとして船内に注入。その結果、日本近海にしか生息しないヒトデや海 藻などの海中生物が豪州など貿易相手国の海域に運ばれることになる。神戸大 学・海域環境教育研究センターの川合浩史教授は「生態系がかく乱される影響 が懸念されている」と警告する。

「20世紀は石油で繁栄、21世紀は水で滅びる」(グローバルウォータ・ ジャパンの吉村和就代表)――今後、大型船を活用した水運搬がウォーター・ ビジネスとして活路を見出すことができるのか、各方面から注目されそうだ。

野村総合研究所の株価は前日比60円(2.7%)高の2315円(午前終値)。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE