米財務長官:またも週末に行動、アジアに配慮-ファニーメイCEO語る

住宅金融投資で米最大手ファニーメイ(連邦 住宅抵当金庫)のダニエル・マッド最高経営責任者(CEO)は7月12日土曜 日の午後10時ごろ、自宅でくつろいでいるところにポールソン米財務長官から 電話を受けた。

財務健全性への不安を背景に、ファニーメイ債のスプレッド(米国債との利 回り格差)は11日までの週に3月以来で最大となり、株価は1週間で45%下 落していた。ファニーメイ債への最大の投資家であるアジア勢は米財務省に、政 府支援機関(GSE)のファニーメイとフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社) へのてこ入れを求めていた。協議について知る関係者3人が明らかにした。

ポールソン長官はマッドCEOに、ファニーメイとフレディマックへの信頼 回復に向けた計画を説明した。同計画は米住宅市場の再生を目指すブッシュ政権 の切り札だった。マッドCEOはインタビューで、「その時点から案がまとまり 始めた」と語った。「信頼の危機を解消するために十分な策は何かと話し合った」 という。

翌13日の午後、週明けのアジア市場が開く前にポールソン長官は両社の支 援案を発表した。上限を設けず両社の株式と債券を買い取る案だった。米連邦準 備制度理事会(FRB)は両社に直接、資金を貸し付けると発表した。米議会は ポールソン長官の案を住宅公社支援法案に盛り込み、ブッシュ大統領が先週、法 案に署名した。

アジアの中央銀行や金融機関、基金は、発行残高5兆2000億ドル(約560 兆円)規模のファニーメイ・フレディマック債を約8000億ドル保有している。 関係者は匿名を条件に、米当局はアジアの投資家の売りで両社債のスプレッドが 一段と拡大することを恐れたのだと説明した。

スプレッド

ファニーメイの5年債のスプレッドは7月9日に101ベーシスポイント (bp、1bp=0.01%)に達した。過去5年の平均は39bp。リーマン・ブ ラザーズ・ホールディングスのアナリストが同月7日のリポートで、会計規則の 変更に伴いファニーメイとフレディマックが計750億ドルの増資が必要となる 可能性を指摘したことをきっかけに、両社債のスプレッドは拡大、株価は急落し た。

危機のさなかにマッドCEOは幹部2人をアジアに送り込んだ。どの国に派 遣したかは言明しなかった。海外の投資家や中銀はファニーメイとフレディマッ クの社債と住宅ローン担保証券(MBS)を約1兆3000億ドル保有している(米 財務省のデータ)。その中でも最大の投資家は中国勢。欧州勢は3000億ドル相 当を保有している。

バークレイズ・キャピタルのニューヨーク在勤の米債ストラテジー責任者、 アジェイ・ラジャディアクシャ氏は、アジア勢が「連邦機関債の購入を控えれば 利回りが上昇し、米消費者に負担が及ぶ」と指摘した。同氏によると、固定金利 型30年物住宅ローン金利の平均は7月18日に6.59%と、同月11日の6.22% から上昇していた。

再現

米銀JPモルガン・チェースによる証券大手ベアー・スターンズ買収につい ての発表の際と同様に、米財務省は週明けの東京市場が開く前にと発表を急いだ。 マッドCEOは、ゴールドマン・サックス・グループ出身のポールソン長官は「市 場を熟知している。以前は自分がドラマの出演者だったのだから」と話した。同 氏によれば、ファニーメイとフレディマックに連銀窓口貸し出しの利用を認めた のは「将来ではなく、米時間で日曜の夜、東京市場が開く前の時点で既に、信頼 回復策が発動していることを市場に伝えるメッセージ」だった。

米国民の持ち家政策の一環として創設されたGSEのファニーメイとフレ ディマックは、米政府による暗黙の保証を前提に低金利で調達した資金を住宅市 場に供給する。銀行や証券会社が融資に消極的な今、両社の重要性はさらに増し ている。ファニーメイの法務顧問、ベス・ウィルキンソン氏は「市場は当社に関 する政府の発言に敏感だ」として、「明瞭さを欠く発言はGSEばかりでなく経 済に悪影響を与える」と説明した。

ファニーメイ5年債のスプレッドは先週までに76bpまで縮小した。1日 の株価終値は11.82ドル。ポールソン長官がメッセージを出す前の7月11日 は10.25ドルで終了していた。ドレマン・バリュー・マネジメントのデービッ ド・ドレマン会長は「状況を考えると、ポールソン長官はよくやった」と話した。

ブルームバーグ・ニュースがまとめたアナリスト11人の予想平均によると、 ファニーメイが今月発表する2008年4-6月(第2四半期)損益は1株当たり 74セントの赤字が見込まれる。フレディマックは同60セントの赤字の見込み。

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