榊原元財務官:日本の1人当たりGDPは世界一・超円安が実態隠す

早稲田大学インド経済研究所所長で元財務官 の榊原英資氏は1日、都内で講演し、日本の1人当たり国内総生産(GDP)は 実質的には「世界一だ」と語った。日本企業は、高成長を続ける新興国での売り 上げを増やすため、優れた品質という強みを維持しながら、低コスト・低価格化 を進める必要があるとの見方も示した。

榊原氏は、多くの通貨に対する円相場が長期にわたって下落する「極端な円 安バブル」を考慮に入れると、日本の1人当たりGDPは実質的には「おそらく まだ世界ナンバーワンだ」と述べた。7月5日付の日本経済新聞夕刊は、国際通 貨基金(IMF)の調査では、日本の1人当たりGDPは2007年にシンガポー ルを下回る、と報じていた。

景気動向については、02年に始まった戦後最長の「景気回復は今春で大体 終わった」と分析した。昨秋まで物価が上がりにくかったのは、景気が弱かった ためではなく、国内企業が中国など新興国に「アウトソーシングし、安い輸入品 が入ってきたからだ」と強調。「政策当局者は判断を間違えた」と話した。

日本企業に関しては「技術レベル、クオリティ(品質)は非常に高いが、そ れを低価格で売る能力が次第に低下している」と懸念。GDPに占める輸出の構 成比が1980年代の8%程度から足元で約16%に高まる中、高成長が続く新興国 の市場で他国企業との競争に勝つためには、「クオリティの高い物を作りながら、 いかにコストを下げていくか」を真剣に考える必要があると語った。

非製造業についても、「オフィスのイノベーション」を進める余地が大きい と指摘。ホワイトカラーの業務のうち、「クリエイティブでないもの」は「シス テム化、パターン化」して、コスト削減を図るべきだと述べた。

榊原氏は東京大学を卒業後、65年に大蔵省入省。69年にはミシガン大学で 経済学博士号を取得した。国際通貨基金(IMF)勤務や同省の銀行局、理財局 を経た後、93年に国際金融局次長。円の対ドル相場が1ドル=79円75銭と戦後 最高値を記録した95年に国際金融局長、アジア経済危機が発生した97年に財務 官。「ミスター円」の異名をとった。99年に退官。慶応大教授を経て現職。

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