海外投資家:日本国債に消去法的買い-米住宅公社問題で信用不安再燃

海外投資家による日本国債への投資が再び 増えてきた。米住宅金融公社(GSE)大手の損失拡大で、米サブプライム(信 用力の低い個人向け)住宅ローン問題に端を発した信用不安が再燃し、リスク を嫌う投資家が、利回り水準は低いものの、安全性の高い円債へ消去法的な買 いを進めたとみられる。

財務省の対内・対外証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)による と、対内証券投資の中長期債(一般債を含む)は、海外からの資本流入額から 流出額を差し引いたベースで、直近4週間(6月29日-7月26日)に、1兆 3259億円の買い越しとなった。

DIAMアセットマネジメントの山崎信人エグゼクティブファンドマネジ ャーは、海外勢による日本国債の買いは、米住宅金融大手のファニーメイ(連 邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の損失拡大がき っかけになったという。

世界の銀行や証券会社が7月になり計上したところによると、過去25年間 で最悪の米国住宅不況により両公社が生み出した損失は4000億ドル(約43兆 円)に上り、6月時点での市場の予想を大きく上回った。「信用不安が再び高 まった結果、安全資産としての日本国債へと『質への逃避』を促した」と大和 住銀投信投資顧問国内債券運用第2グループリーダーの伊藤一弥氏は説明する。

一方、日銀の利上げ観測が遠のいていることも、海外投資家の日本国債買 いの一因となったようだ。DIAMアセットマネジメントの山崎氏は、「日本 銀行は、景気悪化を理由に年内に政策金利を現在の0.5%から引き上げられな い」と指摘。「海外投資家は、そのことをよく理解し、中期債を中心に買い戻 している」と説明する。

4-6月期は売り越し、「質への逃避」の反動

4-6月期の海外投資家による国内債券投資は1兆3777億円の売り越しと なっていた。「米サブプライム問題に端を発した信用不安が、3月の米証券大 手ベアー・スターンズ救済策でいったん払しょくされたかに見えたため、『質 への逃避』の買いが巻き返されていた」(みずほインベスターズ証券の井上明 彦マーケットアナリスト)のが主因だという。

同期の円債市場では、売りが優勢の展開となり、新発10年債利回りは連日 のように水準を切り上げ、6月16日には1.895%と、約11カ月ぶりの高い水準 を付けた。

日本国債保有残高、50兆円の大台乗せ

海外勢の日本国債への需要は、2006年の量的金融緩和解除以降、金利上昇 や円高・ドル安観測などを背景に強まっている。日本銀行の資金循環統計によ ると、海外投資家の保有する日本国債保有残高は3月末には、07年と比較して

20.6%増の50兆2205億円(政府短期証券を除くベース)になり、初の50億円 台に乗せている。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、「ロシアや中東 諸国の一部など、中央銀行が資産を組み入れるようになり、様々な要因が絡み 合うなかで一種の必需品として、日本国債にも需要が出てきていることも一因」 と指摘する。

岡三証券経済調査部の坂東明継シニアエコノミストは、「ドル安が進んだ 結果、海外投資家にとっても外貨建て資産の保有構成が変化した。ドル建て資 産がダメといっても、すべてユーロ建てに変更するわけにはいかない」と述べ、 消去法による円債買いが進んだとみている。

財務省、IRの成果や安全性を強調

日本国債の発行体である財務省の貝塚正彰・理財局国債企画課長は、「北 米、欧州、中東と説明会(IR)などを積極的に展開しており、そうした成果 が出ていると理解したい」と述べたうえで、「イールド(利回り)はそれほど 高くないが、円資産を考えるのであれば、最も安全性の高い資産である円債が ポートフォリオに組み込まれるはず」と強調する。

もっとも、欧米諸国の国債利回りと比較すると、円債の金利水準は相対的 に低く、魅力に欠けるのも事実。岡三証券の坂東氏は、今後の海外勢による円 債に対する需要について、「円・ドル相場の動向次第ではないか」と指摘する。