政府、成長力強化と財政規律維持に腐心-「骨太方針08」閣議決定(2)

政府は27日夕の臨時閣議で、経済財政諮 問会議(議長:福田康夫首相)がまとめた成長力強化と財政健全化を柱とした 経済財政改革の指針「骨太の方針2008」を閣議決定した。景気の先行き不透明 感が高まる中、指針に盛り込んだ施策をいかに実行に移すか、税制改革を中心 に政策実現に向けたハードルは高い。

「骨太の方針08」は成長力強化について、日本が「世界経済の変化に即応 して成長する仕組みはいまだでき上がっていない」との認識を示し、国内では 「人口減少社会は持続的な成長なくして乗り切れない」と言明。その上で、「確 固たる成長軌道に乗るため、生かし切れていない日本の強みを覚醒(かくせい) し、新たな発想で内需を拡大する」と強調。今後10年間程度、実質2%超の成 長を目指す。

政策の目玉の一つとして、海外からの投資や人材、先端技術などを取り入 れるため対日直接投資の促進を強調。高いビジネスコストをもたらしている日 本の法人実効税率の引き下げの検討にも言及した。また最高裁が昨年、米投資 ファンドの敵対的買収を受けたブルドックソースの防衛策を容認し、海外投資 家から日本市場は閉鎖的との批判があるなか、今夏までに買収防衛策の導入・ 発動の在り方を整理・明確化するとしている。

そのほか、①経済連携協定(EPA)締結国・地域との貿易総額を現在の10% 前半から2010年に25%以上に高める②空港の自由化・国際線を拡充する③株式 市場の厚みと老後の資産形成に資する確定拠出年金への個人拠出を導入する④ 20年までに留学生数を30万人に拡大する-ことなどを盛り込んだ。ただ、公的 年金基金の運用・組織面での改革については、結論を先送りした。

座標軸がみえない

足元の日本経済は、米国経済を中心とした先進国経済の減速に加え、エネ ルギー・原材料高が企業収益を押し下げる一方、ガソリンや食料品価格の上昇 が家計を圧迫し、景気後退入りの瀬戸際に立たされている。

日本総合研究所の高橋進副理事長は、「総論としては安倍政権の考え方や旧 来型の政策を、新しい言葉でくくり直している」と述べ、「福田政権のカラーや 座標軸がみえない」と厳しい評価を下す。成長力強化策については「外に向か って門戸を開くことは1つの柱だが、国内からどう活力を生むかが肝要だ」と し、地方分権の推進を通じた地域活性化と成長戦略を一体化すべきだと説く。

大田弘子経済財政担当相が1月に日本経済を指して「もはや経済一流」と 呼べないと言明したが、その理由の1つが諸外国と比べた日本のサービス産業 の生産性の低さ。これについて「骨太の方針08」では、生産性を阻害している 要因を克服する施策を実施し、省庁ごとにまとめた「業種別生産性向上プログ ラム」を実行することをうたっている。

慶応大学商学部の中島隆信客員教授は、サービス業の生産性向上について、 「サービスに対する評価が国によって違う中で、そもそも海外と比べる意味が どれくらいあるのか」と疑問を呈した上で、「サービス業の生産性を上げること 自体を目標にすると、何かおかしいことになる」と指摘する。その上で、「景気 をよくすることが生産性向上の最大の良薬になる」と語った。

内需拡大策としては、職を持たないフリーターの正社員化や女性・高齢者 就業を通じて3年間で計220万人の雇用拡充を図る「新雇用戦略」や、住宅需 要を喚起する方策として「200年住宅」の促進も盛り込んだ。また、日本の強み である技術力を生かすため、革新的な技術開発を促す「スーパー特区」の創設 なども盛り込んだ。

最大限の削減堅持も限界か

政府が掲げる2011年度の国・地方の基礎的財政収(プライマリーバランス) の黒字化を実現するため、歳出・歳入一体改革について①最大限の歳出削減を 行う②新たに生じている医師不足対策などの経費は無駄ゼロや歳出削減で確保 する③それでも対応し切れない社会保障費などの負担増は安定的財源を確保す る-ことを明記した。

09年度予算は、5年間で最大14.3兆円の歳出削減を実施する歳出・歳入一 体改革の3年目に当たるが、与党からは各分野で歳出拡大を求める声が「暴風 雨のように強い」(大田経済財政相)状況だった。ただ、企業収益の悪化に伴い 法人税収が減少する中、年末にまとまる予定の来年度予算編成で、どこまで歳 出を切り詰められるかは不安が残っている。

大田経財相は臨時閣議後の会見で、「骨太の方針08」について、「守るべき ものは守れた。成長戦略についても、いつまでに何をするかが明記されている」 と強調した。さらに歳出削減に関連し、「5年間のプログラムを実行していくこ とは難しい」とする一方で、3年目の予算編成を控えて「何とかスタートを切 れた」と語った。同時に、「今年は激しい風雨が続くのではないか」と述べ、「年 末の予算編成までいくつものヤマ場があると思う」との見通しを示した。

一方、額賀福志郎財務相は臨時閣議後の会見で、2009年度予算編成に伴う 新規国債発行について「財政再建の道を堅持する中で、できるだけ新規国債発 行を抑制することは当然のことだ」と語った。

道路特定財源の09年度からの一般財源化については、「生活者の目線でそ の使い方を見直す」としたが、どの程度の割合を国民が求めている社会保障費 などの支出に振り向けられるかは明確でない。日本総研の高橋氏は「06年の基 本方針の記述を堅持したことは評価できる」とするものの、「歳出・歳入一体改 革の限界に来ている」との見方を示す。また、道路特定財源の一般化について も「歳出・歳入改革の中で書くべきだ」と言う。

税制については、「消費税を含む税体系の抜本的な改革について早期の実現 を図る」と述べている。しかし、消費税について福田首相は23日の会見で、「2 -3年とか長い単位で考えて申し上げた」と述べており、秋口からヤマ場を迎 える来年度税制改正議論で早期の結論が出るかどうか不透明だ。

このほか、7月に北海道で開かれる主要国首脳会議(洞爺湖サミット)を前 に、地球温暖化対策などを盛り込んでいる。

--共同取材:下土井京子--Editor:Hitoshi Ozawa、Masaru Aoki

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