日本経済は景気後退入りの瀬戸際に-物価上昇が家計・企業を圧迫(2)

27日発表された5月の主要国内経済指標 は、エネルギー・原材料高が家計や企業を一段と圧迫している姿を浮き彫りに した。ガソリンに加え食料品の上昇も加わり、消費者物価指数は実質的に15 年2カ月ぶりの高い伸びを示す一方、生産も4-6月期に2四半期連続でマイ ナスに陥る可能性が高まるなど、日本経済が景気後退入りの瀬戸際に立たされ ていることを示す内容となった。

総務省が同日発表した5月の全国消費者物価指数(除く生鮮食品、コアC PI)は前年同月比1.5%上昇、6月の東京都区部コアCPIは同1.3%上昇 となった。26日のニューヨーク原油先物相場は一時1バレル=140ドル台と過 去最高値を更新。HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストは「今後の原油 相場動向次第では、夏場の全国コアCPI前年比ピークが2%程度となる公算 も否定できない」としている。

大田弘子経済財政担当相は27日の会見で、CPIの伸びについて「コス トプッシュによるもので、需要が増えた形の物価上昇ではない」と指摘した上 で、「良い形ではない」と警戒感を表明。生産についてはIT(情報技術)関 連財の動向には注意する必要があるものの、「どんどん悪くなっていく状態で はない」と語った。賃金が伸び悩む中での物価上昇は家計の実質購買力を低下 させる一方、交易条件の悪化と消費減退は企業の生産活動を抑制する。

経済産業省が同日発表した5月の鉱工業生産指数(速報)は前月比2.9% 上昇し、109.4(季節調整済み、2005年=100)となった。同時に発表した6月 の製造工業生産予測指数は前月比0.9%の低下、7月は2.2%の上昇。同省は、 仮に6月の予測指数がそのまま実現した場合、4-6月期の生産は前期比

0.4%低下と2四半期連続のマイナスになるとの試算を示した。同省は生産に ついて「横ばい傾向であるが、弱含んでいる」とし、6カ月ぶりに判断を引き 下げた。

「既に景気後退入り」との見方も

明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、「足元の日本経済は、 既に景気後退下にある可能性が高まっている」との見方を示す一方、「生産活 動が加速度的に悪化する兆しは少なくとも見られない」と語った。また、みず ほ証券の清水康和シニアマーケットエコノミストは、4-6月期は2期連続の マイナスが見込まれ、「景気後退懸念が強まっている」と指摘した。

総務省が27日発表した5月の完全失業率(季節調整済み)は4.0%と前月 比横ばいとなった。男女別では、男性が4.2%と前月に比べ0.2ポイント上昇 し、女性は3.7%と0.2ポイント低下した。男性の失業率は06年1月(4.2%) 以来の水準。また、厚生労働省が発表した5月の有効求人倍率(季節調整値) は0.92倍と前月から0.01ポイント低下し、6カ月連続の1倍割れとなった。

一方、総務省が同日発表した家計調査によると、2人以上の世帯の消費支 出は28万8128円と前年同月比で3.2%減少し、3カ月連続のマイナスとなっ た。前月比(季節調整済み)では、実質0.9%減少した。

第一生命経済研究所の新家義貴主任エコノミストは「4月に続いて5月の 個人消費も悪化したことを受け、4-6月期のGDP(国内総生産)ベース個 人消費は前期比マイナスに転じる可能性がかなり高くなった」と指摘。消費抑 制の最大の要因である生活必需品を中心とした物価上昇が「7-9月期にさら に伸びを拡大する可能性が高い」ことを理由に、「消費低迷は7-9月期も続 くと予想される」としている。

景気動向指数の判断は「悪化」に修正も

経産省が同日発表した5月の小売業販売額は、前年同月比0.2%の増加と 10カ月連続でプラスとなったものの、増加ペースが大幅に減速していることを 受けて、同省は基調判断をこれまでの「持ち直しの動きが見られる」から「お おむね横ばい」に下方修正した。判断の下方修正は昨年1月以来。

6月の月例経済報告は、景気の基調判断について「景気回復は足踏み状態 にあるが、このところ一部に弱い動きがみられる」とし、3カ月ぶりに判断を 引き下げた。世界経済の減速やエネルギー・素材価格の上昇が続く中で、輸出、 生産、企業収益の判断を下方修正し、全体の判断も弱めた。

三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは、鉱工業 生産指数の結果を受け、5月分の景気動向指数・速報値は、先行CI(コンポ ジット・インデックス)は前月と比較して0.3ポイント程度の上昇、一致CI は前月比1.6ポイント程度の上昇になると予測する。

宅森氏はその上で、「予測通りだと、内閣府の一致CIを使った景気の基 調判断は、景気後退の可能性が高いことを暫定的に示す『悪化』に下方修正さ れるとみられる」とし、「いよいよ景気は正念場と言えよう」と述べた。

--共同取材:日高正裕、下土井京子、亀山律子 Editor:Masaru Aoki,Hitoshi Ozawa

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