【コラム】評価損と増資のいたちごっこの結末はいかに-J・ワイル

信用危機の最悪期が過ぎたかどうかは別とし て、痛みがまだ続くことだけは確かだ。4-6月期はあと1週間足らずを残すの みとなった。金融サービス業界にとって過去最悪の4-6月となる見込みだ。

評価損について考えてみよう。ブルームバーグの集計データによると、6月 23日時点で米市場に上場している銀行など金融機関で、株価純資産倍率(PB R)が0.6倍未満だったのは168社だ。これら168社の時価総額は合計で1203 億ドル(約13兆円)。これに対し純資産額(株主資本)は2703億ドルだった。 つまり、これらの金融機関の純資産1500億ドルがどこかに消えたと市場は考え ているわけだ。

市場が行き過ぎることはありがちだが、この兆候を見過ごすわけにはいかな い。信用危機は2回目の夏を迎えつつある。「危機」と呼ぶには長い期間だ。こ れが一時的な状態だという議論は近く、通じなくなるだろう。これまでのところ、 相場が下落して評価損が発生、評価損がさらに相場を下落させ、一段の評価損を 発生させるという繰り返しだった。この悪循環はいつか終わるのだろうが、それ がいつかは誰にも分からない。

2000-01年のインターネットバブル破裂時に広がった「バーンレート」と 「ファンディングギャップ」という言葉が、再び流行しそうだ。バーンレートと は、新興のハイテク企業が赤字によって手元資金を使い果たすペース。ファンデ ィングギャップとは、存続に必要な新規資金と調達可能額との差だ。

今回の信用危機もネットバブルと同様の展開となるだろう。金融機関は手元 資金ばかりではなく、あらゆる種類の資本を減らしつつある。そして、評価損が さらに増えようとしている今、バランスシート修復のための資金を調達する手段 が、身売り以外にないという事態も起こりそうだ。

世界の金融機関は07年初め以来、4000億ドルの評価損・貸倒損失を計上し、 3040億ドル規模の増資をしている。ある時点で、新たな資金で資本を増強する ことが不可能になるかもしれない。投資家はある時点で、「もうたくさん」と言 うだろう。一部の地銀は、大手金融機関の巨額調達による「クラウディングアウ ト」の現象にも直面している。

そういうわけで、身売りや破たんを回避するために資金を調達しようとして もできないケースも生じるだろう。一部の銀行にとっては、最悪期は過ぎたかも しれないが、増資レースでゴールに滑り込めなかった銀行やそのような銀行の救 済でカネを出さされる納税者にとっては、何の慰めにもならない。 (ジョナサン・ワイル)

(ジョナサン・ワイル氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニスト で す。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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