日銀が国債補完供給を積極化、先物乱高下の余波-270回に異例の4回

【記者:池田祐美】

6月26日(ブルームバーグ):日本銀行は6月に入り、国債の補完供給貸付 (国債売現先)を積極的に実施している。今年3月から5月にかけて先物6月限 が乱高下したことで、現物決済に利用された10年国債の270回債の需給がひっ 迫したことなどが背景とみられている。

補完供給貸付制度は、日銀が保有する国債を市場参加者に対して一時的かつ 補完的に供給するオペ。国債市場で、特定銘柄の調達が困難となり、市場流動性 が著しく低下した際に、補完的な手段として、市場参加者が日銀から国債を一時 的に調達できる。オペ対象機関3社以上から要望があった場合に実施する。

日銀は、10年国債の270回債を対象に今月に入り、3日、16日、20日、24 日と4回実施した。これらを含めて、これまで補完供給貸付は14回実施されて いるが、同一銘柄に月4回も行われたことは、2004年度に同制度が導入されて 以来、初めて。「需給がひっ迫していることが背景」(日銀金融市場局金融市場 調節担当企画役の金沢敏郎氏)という。

今年は5月までに3回しか行われておらず、ここへきて増加が目立っている。 米金融不安や信用市場の危機を受けて、先物6月限が3月初めに中心限月となっ た後に、乱高下したことが要因とみられている。

先物6月限の決済要因で需給ひっ迫

6月限は、6月11日に最終売買日を迎え、翌週の20日が受け渡し決済期日 だった。売り建てていた一部参加者が買い戻しできず、現物で決済したため、 270回債の需給が引き締まったようだ。

大和住銀投信投資顧問国内債券運用第2グループリーダーの伊藤一弥氏は、 「先物6月限から9月限に移行せず、先物を買っていた参加者が、現物で決済し たようだ。このため現物が出なくて、レポ(現金担保付債券貸借)で270回債が 締まった」と述べた。

一方、みずほインベスターズ証券マーケットアナリストの井上明彦氏は、先 物6月限が3月17日、4月25日に乱高下したことを要因に挙げ、「6月限は、 建玉が増えず、利回り曲線上でも歪んでいた。先物を売り建てして終って、買い 戻しできていない参加者がいたようだ。270回債が手当てできなかった向きのた めに、日銀が供給したのではないか」と説明した。

3月17日は、米サブプライム(信用力の低い個人向け住宅ローン)問題で 打撃を受けたベアー・スターンズへの信用不安が高まり、JPモルガン・チェー スによる買収が発表された直後。海外投資家が持ち高整理を進め、現物売り・先 物の買い戻しが広がった。また4月25日は、世界的なインフレ懸念の強まりを 嫌気して、先物が2円超の下げ幅を記録。東京証券取引所が初のサーキットブレ ーカー制度を発動し、取引を一時停止した。

財務省は特別流動性供給入札制度を導入

財務省も、今年度から国債の特別流動性供給入札制度を導入。緊急の国債市 場特別参加者会合を開催し、追加的な供給を必要と認める場合に入札を実施する ことにしている。もっとも、今回は新発債ではなく古い銘柄であることに加え、 国債市場特別参加者から要請がなかったことから実施されていない。

財務省理財局国債業務課長の貝塚正彰氏によると、「市場に介入することに なるので、発動には相当な条件が必要。頻繁に行うものではない」としている。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE