【米経済コラム】金融当局、利上げへの準備は整った-J・ベリー

米金融当局はインフレに対する警戒感を一 段と高め、25日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、今年後半には利上げを 実施する方向へ政策スタンスを明確に変更した。政策決定が難しい状況にあっ て、これは正しい判断だった。

昨年9月以来、FOMCは初めてフェデラルファンド(FF)金利の誘導 目標の引き下げを見送った。それまでは、住宅市場の崩壊と金融市場の混乱を 背景とした景気後退(リセッション)を回避するため、過去9カ月間でFF金 利の誘導目標を3.25ポイントも引き下げ、年2%としていた。

25日のFOMC声明は、経済成長へのリスクについて「幾分か縮小した」 とする一方、「インフレやインフレ期待のリスクは増した」と指摘した。確かに そうだ。食品・エネルギー価格の高騰で5月の米消費者物価指数(CPI、季 節調整済み)は前年同月比で4.2%も上昇した。しかし、変動の大きい食品・エ ネルギーを除いたコア指数は同2.3%の上昇にとどまっている。

次に問題となるのは、燃料価格の上昇がコア指数の上昇を加速させ、労働 者の賃上げ要求に発展していくのかどうかということである。金融当局は、い わゆる副次的効果と呼ばれるこうしたシナリオを回避したいと考えている。

コア指数に影響も

一方、ユーロ圏のインフレ率は、欧州中央銀行(ECB)が目安とする「2% をやや下回る水準」の倍近い水準に達しており、アナリストの多くは、ECB は7月、政策金利を現行の年4.0%から0.25ポイント引き上げると予想してい る。ユーロ圏諸国の大半は米国に比べて、経済成長率が高いし、労働組合によ る賃上げ交渉の恩恵を受ける労働者の比率もかなり高い。

しかし、米国もECBと同じような手段を取る必要があるかもしれない。 石油や他のエネルギー価格の上昇と関連付けて、大幅な値上げを発表する企業 が相次いでいるからだ。米化学最大手のダウ・ケミカルが最大25%もの追加値 上げを発表したほか、ピザの宅配や芝刈りサービス、航空運賃にも値上げの動 きは広がっており、インフレ傾向を一段と助長するのは避けられない。

金融当局はインフレが管理不能にならないようにする決意を示すために、 今後数カ月で小幅な利上げに踏み切る必要があるかもしれないが、米経済は連 続的な利上げを受け入れられるほど、強くはない。良いニュースは、そのよう な措置が可能になるかもしれないほどに景気の先行きが改善してきたことだ。

米経済は成長を続けており、4-6月期(第2四半期)の成長率は年率2% 程度とみられる。落ち込んでいた住宅セクターにも、明るい兆候が出ている。 5月の新築住宅販売は住宅着工と同様に前月比で減少したが、3月に比べると、 販売は上回っているし、着工はやや下回っている程度だ。また、4月の中古住 宅販売は昨年12月や今年1月の水準とほとんど変わらない。

大統領選はタブーでない

25日のFOMCを受けて、FF金利先物が示す利上げ確率は「次回8月5 日の会合で0.25ポイント利上げ」が28%、「9月16日」が57%となった。ア ナリストの中には、11月の大統領選挙への影響を避けるため、金融当局は早く ても12月までは動かないと予想する向きもあるが、それはナンセンスだ。たと え大統領選直前の10月末のFOMCであっても、当局は利上げの必要があると 決断したら、利上げに踏み切るだろう。

米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長とコーン副議長は今月 初めの講演で、インフレやインフレ期待を低く抑え込むことの重要性を強調。 ダラス連銀のフィッシャー総裁は25日のFOMCで、政策金利据え置きに反対 票を投じ、0.25%の利上げを主張した。

ある時点で、食品・エネルギー価格は横ばいになるだろう。FOMCの声 明も、当局がそう期待していることをにじませた。問題は、賃上げ要求などの 副次的影響がまず出てくるかどうかだ。そうだとすれば、金融当局は行動する 準備を整えたことになる。 (ジョン・ベリー)

(ベリー氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラ ムの内容は同氏自身の見解です)

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