中村日銀委員:海外のインフレ圧力の国内への波及に注視が必要(2)

(第4段落以降に発言を追加し、見出しを差し替えます)

【記者:日高正裕】

6月26日(ブルームバーグ):日本銀行の中村清次審議委員は26日午前、旭 川市内で講演し、国内の景気について、エネルギー・原材料価格高騰の影響が 国内民間需要の下振れにつながらないか「注意深くみていく必要がある」とす る一方で、「世界的にインフレ懸念が高まっている」ことから、海外で高まるイ ンフレ圧力のわが国への波及などを「注意してみていく必要がある」と述べた。

中村委員は国内の景気について「当面は減速が続くものの、その後は潜在 成長率並みの1%台半ばの緩やかな成長経路をたどる可能性が相対的に高い」 としながらも、海外経済の動向、エネルギー・原材料価格の高騰に伴うインフ レ圧力、国際金融市場の混乱という3つのリスク要因については「先行きの不 確実性がさらに高まっている」と語った。

中村委員は金融政策については「政策金利から消費者物価上昇率を差し引 いた実質短期金利はマイナスであり、潜在成長率との関係でみて極めて低い水 準と評価される」と指摘。先行き不確実性が「極めて高い」ことから、政策運 営に「あらかじめ特定の方向性を持つのは適当ではない」とした上で、「経済・ 物価情勢に応じて機動的に金融政策を運営していくことが肝要だ」と述べた。

同委員は世界経済について「米国経済を中心に減速している」と指摘。国 際金融資本市場も「不安定な状態が続いており、いまだに混乱が収束するめど は立っていない」として、「海外経済の先行きは下振れリスクが高く、先行きが 極めて見通しにくくなっている」と語った。ただ、これまでのところ、「海外経 済は減速するものの深刻な調整局面入りはせず、新興国を中心に全体としては 緩やかな成長を続けていく蓋然(がいぜん)性は高いように思う」と述べた。

米国経済は一段の減速の可能性が

米連邦準備制度理事会(FRB)は25日開いた連邦公開市場委員会(FO MC)でフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を2%に据え置くことを決 定。声明で「経済成長の下振れリスクが残るものの、幾分か縮小したもようで あり、インフレとインフレ期待の上振れリスクは拡大した」として、昨年9月 から今年4月にかけて実施した連続利下げを停止した。

バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジストは日銀 の金融政策について、オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は 今年末から来年初にかけての利上げを織り込んでいると指摘した上で、「今回の FOMCによって円金利市場が織り込む日銀の利上げ時期が特に影響を受ける とは考えられない」としている。

中村委員は講演で、米国経済について、住宅価格が「底入れする兆しはな く、調整はさらに長期化する可能性」があると指摘。個人消費は「大幅に減速」 しており、雇用環境が悪化している中で、物価高による実質所得の減少などが 個人消費をさらに下押しし、「米国経済を一段と減速させる可能性が高まりつつ あるようだ」と語った。

日本経済はかつてに比べ足腰が強い

中村委員は国内の景気については「資源の多くを輸入しているわが国にと っては、エネルギー・原材料価格の上昇は交易条件の悪化、すなわち、実質所 得が海外に流出することを意味する」と指摘。「今のところ、設備投資や個人消 費は底堅く推移しているが、こうした所得形成の弱まりが国内民間需要の下振 れにつながらないか、注意深くみていく必要がある」と述べた。

一方で、「企業は原材料高騰によるコスト上昇分を製品価格に十分転嫁でき ていないことから収益環境が悪化しているが、収益水準としては大企業中心に 一定の水準を維持しているほか、設備・在庫・雇用の面で過剰を抱えていない」 と指摘。こうした点からみて「日本経済はかつてに比べ、景気の下振れのショ ックに対して、足腰が強くなっている」と語った。

中村委員は国内の物価については「経済全体の需給がおおむねバランスし た状態で推移する下で、石油製品や食料品の価格上昇などから、当面、前年比 プラス1%台半ばで推移すると予想される」と指摘。

その上で「足元の上昇率は、消費税の影響を除けば15年ぶりの高い伸びで あり、特に購入頻度の高い生活必需品の上昇が目立つだけに、消費者のインフ レ期待の変化や企業の価格設定姿勢の動向、さらには海外で高まっているイン フレ圧力のわが国への波及等を注意してみていく必要がある」と述べた。

中長期的な物価の安定の実現に努める

中村委員は金融政策運営の基本的な考え方については「金融政策の変更を 行っても、その効果が経済活動の実態まで行き渡るには長い期間を要する」と 指摘。また、「金融市場、経済環境、海外情勢等のさまざまなショックに伴う物 価の短期的な変動等を、金融政策によってすべて吸収しようとすると、かえっ て経済変動のブレが大きくなる」と語った。

その上で、「金融政策決定に際しては、十分長い先行きの経済・物価の動向 を予測しながら、中長期的にみて物価の安定を実現するように努めなければな らない」と述べた。

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