東証斉藤社長:キャップ方式の有効性低い-排出量市場創設で(2)

排出量取引市場の創設を目指す東京証券取 引所の斉藤惇社長は、企業に排出枠を設定し過不足分を取引する「キャップ・ アンド・トレード」方式の排出量取引について、温室効果ガス削減の有効性は 低いとの見方を示した。一方で、創設する市場は京都議定書に基づく「認証排 出削減量(CER)」を念頭に置き、取引参加者や価格決定方法などについて検 討を進めていくと述べた。

斉藤社長が24日、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、すでに始 まっている欧州市場のキャップ方式について「排出量が減少せず、むしろ増え ている」と指摘。「われわれの目的は排出を減らすことだ」と述べ、有効性は低 いとの考えを示した。ただ、アジア市場をリードする狙いもあることから、国 の方針が決定すれば「スタートできるようにしておきたい」と述べた。

斉藤社長によると基準は国が作るもので、「それにのっとった範囲で取引す る場所を提供する」のが東証の立場だという。キャップ方式の排出量市場創設 については「ルールも決まっていないのにやるわけにはいかない」と述べ、国 の方針決定を待つ考えを強調した。福田康夫首相は9日、今秋、排出量取引を 試験的に開始する方針を明らかにしたが、キャップ方式の導入について明示し ていない。

東証は国連が認証するCER取引市場の創設に向け、5月に研究会を設置。 年末まで議論を重ね、2009年にも上場したい考えだ。この研究会は商社や金融 機関、電力会社などの実務者で構成し、経済産業省や環境省、金融庁もオブザ ーバーとして参加。上場する排出量取引の方式によっては、排出の多い業種が 影響を受けることから、市場創設の検討を開始した東証の動きに注目が集まっ ている。

先進国が途上国へ資金や技術を提供し排出削減に貢献した場合、自国のC O2排出権として取得できる仕組みが国連の「クリーン開発メカニズム(CD M)」で認められている。東証が上場を目指すCERはCDMに基づく権利。欧 州市場では、すでにCERとキャップ方式が取引されている。

産業界の反発

キャップ方式の導入には産業界の一部からも反発の声が上がる。製造業の 中で最も二酸化炭素(CO2)排出量が多い鉄鋼業界からは、海外からの排出 権購入によって起こる資金流出の懸念や、途上国への生産拠点シフトが起こり、 世界全体で見た場合、排出の削減につながらないといった慎重論が聞かれる。

斉藤社長は、中国やインドなど排出量の多い国が排出削減の枠組みに参加 する姿勢を示していない状況でキャップ方式を導入した場合、日本の産業界は、 削減義務を持たない国々とコスト面で厳しい競争を強いられると指摘した。キ ャップ方式が導入されて日本の鉄鋼業界に排出量の上限が課せられると、国内 メーカーは削減目標を達成するための費用負担が必要になる。

メリルリンチの炭素排出担当マネージング・ダイレクター、アビド・カル マリ氏は、ブルームバーグ・ニュースの電子メールによる取材に対し、「東証が 排出クレジットの排出量取引を始めた場合、売り手と買い手の両方に対し相対 取引市場にアクセスする機会を与えることになり、排出量市場の流動性を高め ることにつながる」と指摘した。

--共同取材:佐藤茂、山﨑朝子、安真理子 Editor:Takeshi Awaji,Kenshiro Okimoto

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