ウラン:上昇に転じる可能性、58%高騰も-インドや中国で原発稼働

ことしはウラン業界にとって最悪の年とな っている。一方で、インドと中国では、石油危機に見舞われた1970年代に匹敵 する規模の原子力発電所建設計画が進行中だ。

ゴールドマン・サックスJBウェアと世界3位の鉱山会社、英豪系リオ・ ティントによると、この結果、ウラン価格は1ポンド当たり90ドルと、現在の 57ドルから58%上昇する可能性が高い。地震の影響で日本の原子力発電所が被 害を受けたほか、英国とドイツでは故障により原子炉の稼働が停止されたこと などから、ウラン価格は過去1年間で57%下落している。

インドと中国が打ち出している電力不足の解消を目指す計画の影響は、ウ ランの主産地であるカナダ北西部や豪州の奥地、カザフスタンの平原にまで波 及している。インドではことし、3カ所の原子炉の稼働が開始される予定で、 09年にはインドのほか、中国、ロシア、カナダ、日本で計6カ所の稼働開始が 予定されている。ドイツ銀行は、世界のウラン需要の伸び率がことし、原油と 同水準の0.8%になると予想している。

CQSUK(ロンドン)のファンドマネジャー、ジョン・ウォン氏は「需 要の伸びの最初の波は新興経済国で見られるだろう」と予想。「石炭やガス、原 油が注目され始め、エネルギー価格は高騰している。ウランに関しても関心が 高まっている」との見方を示す。同社の運用資産は100億ドルで、ウランに1 億5000万ドルを投資している。

アジアのエネルギー需要が拡大し、二酸化炭素の排出による地球温暖化へ の懸念が高まるなか、ウラン価格が1年間にわたって下落しているのは、原油 や石炭の価格が過去最高水準にあるのとは対照的だ。国際エネルギー機関(I EA)によると、温暖化ガスの排出量を2050年までに半減させる施策の一環と して、世界で毎年、32カ所の原子力発電所が新設される必要がある。

2007年の減少

日本、英国、ドイツで故障により原子炉の稼働が停止されたため、原子力 発電量とウラン消費量は07年に2%減少した。時価総額で欧州2位の石油会社、 英BPによると、消費が後退したのは1970年代以降でわずか3回となっている。 米証券3位のメリルリンチによると、ウラン価格が大幅に下落したため、一部 のウラン鉱山は不採算に近い状況となっている。

リオ・ティントのエネルギー部門のプレストン・キアーロ最高経営責任者 (CEO)は「増産を維持するのに必要なのは、予定されているプロジェクト が始動することだ。価格があまりにも下落すれば、これらのプロジェクトはつ まずいてしまうだろう」と指摘。「現在のスポット価格は、ことし全般の価格を 示唆しているとは思わない」との見方を示す。

インドでは、インド原子力発電公社(NPCIL)が同国南部にあるカイ ガ原子力発電所と、北部のラジャスタン州でも原子力発電所1カ所の稼働を年 内に開始する予定。世界原子力協会によると、中国は07年に2カ所の原子力発 電所の操業を開始し、11年までにさらに3カ所の稼働をスタートさせる見通し だ。イランも西欧諸国との対立の焦点となっている出力950メガワットのブー シェル原子炉の操業を年内に開始することを計画している。

もちろん、安全面の懸念は、原子力発電所の建設やウラン業界の再生にと って最大のリスク要因となっている。商品調査会社VMグループ(ロンドン) のアナリスト、ポール・ハノン氏は今月発表したリポートで「この業界は、大 事故や綿密に計画されたテロ行為によって一夜のうちに崩壊してしまうという ことを、覚えておくべきだ」と警告している。

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