法人税率下げを提言へ、「迎え入れる国際化」の鍵-「骨太の方針」

政府は経済財政改革の指針となる「骨太の方 針2008」で、海外からの対日直接投資を促すため、法人税の実効税率の引き下げ を提言する見通しだ。国内では高齢化と人口減少が同時進行する一方、新興国 経済の猛烈な追い上げを受ける中で、海外からの活力を取り込んで、新たな成 長モデルを確立していく狙いがある。

政府は23日夕、福田康夫首相にとって初めてとなる「骨太の方針08」の原 案を公表する。大田弘子経済財政相が17日の経済財政諮問会議に提示した素案 は、日本企業が海外生産拠点を構築するために「海外に出る国際化」では、日 本経済は「グローバル化のメリットの半分しか享受したことにならない」との 認識を示し、海外からの投資や人材、先端技術などを「迎え入れる国際化」の 重要性を強調している。

そのための有力な手段の一つとして、対日直接投資を促進するため法人税 の実効税率について、「ビジネスコストの低減等に取り組む」として引き下げ方 針を提言する。グローバル競争が激化する中、企業が投資先を選定する際に重 視するのが地方税も含めた法人実効税率だが、日本は40.69%(東京)と、ドイ ツの29.83 %、フランスの33.33%、韓国の27.5%、中国の25%などと比べ飛 び抜けて高い水準にある。

第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストと矢田晴那エコノミスト は、日本が現行の法人税率を5%引き下げた場合、最終的に3.8兆円以上の国 内総生産(GDP)押し上げ効果が期待できると試算している。また5%の引 き下げにより、対内直接投資は1年後に12.7%増加するのに加え、4.9万人の 雇用増をもたらす効果が期待できるとしている。

危機感を持つべきだ

欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会のマンデルソン委員(通商担当) は4月に東京で講演し、日本は世界で「最も閉鎖的」な市場だと批判している。 また小泉純一郎内閣で金融相・経済財政担当相などを務めた竹中平蔵慶大教授 は5月の講演で、法人実効税率を「10-15ポイントを下げるべきだ」と訴えた。

モルガン・スタンレー証券の佐藤健裕チーフエコノミストは、日本の法人 実効税率について「今や先進国の中で、断突に高い。欧州並みの30%前半に下 げるべきだ」とし、「法人税の引き下げについてやらないと、日本が沈むという 危機感を持つべきだ」と強調。財源については「消費税率引き上げとセットで 行うべきだ」と述べ、与党が衆院で3分の2の議席を確保している間に、政府 は消費税引き上げの道筋を決めたいのではないかとの見方を示した。

福田首相は17日午後、消費税率の引き上げ論について、「決断しなければな らないとても大事な時期だ。国民世論がどう反応するかを考えている時だ」と 言明し、引き上げは不可避との認識を示した。

一方、法人税率引き下げをめぐっては、財源確保の問題や企業優遇の批判 があるため実現には難航が予想される。アールビーエス証券の山崎衛チーフエ コノミストは法人税率引き下げについて「税収不足になるので、どこかで増税 が必要という話になる。所得税や消費税を上げるとなると、なかなか国民の理 解を得るのは難しいだろう」と指摘する。

素案では、法人税率引き下げで減収となる分の財源の確保について具体的 な記述はないものの、「国際的状況を念頭に置き、課税ベース拡大を含めて対応 する」と指摘している。これは、例えば、約7割にも上る赤字法人に対する外 形標準課税や企業向けの租税負担軽減措置の縮小・廃止が考えられ、企業優遇 との批判をかわす手段になる可能性はある。

海外にとどまる利益の還流

一方、素案は経済産業省の要望を反映する形で、海外にとどまっている約 17兆円(2006年度)もの日本企業の利益を、国内の設備投資や研究開発に振り 向けさせることを促すため、「当該利益の国内還流に資する環境整備に取り組 む」と明記した。現行制度では、海外子会社の利益を日本に戻す場合、海外で 法人税を納めた後も、海外の税率が日本の法人税率40%より低ければ、差額分 の納税を求められるため、海外での内部留保が累積する結果となっている。

佐藤氏はこの対策について「筋は悪くない」と述べ、「自動車、化学、商社、 鉱業などは海外留保が大きい。法人税率を引き下げ、海外所得にかかる課税を 下げることは、株式配当も増え、経済にとってはプラスに寄与する」とみる。

素案によると、政府は日本経済の「開国」度合いを判定する指標を策定し、 それによって成果を検証しながらグローバル化に対応していく。02年からの今 回の景気拡大局面を主導してきた企業部門が原油・資源高の影響を受けて陰り がみられるが、企業部門の拡大なしには個人の所得や消費の伸びも期待できな い。秋以降の税制改正議論で、法人税引き下げの議論が進展するかどうかは、 福田政権が描く成長戦略の成否を占う上で重要な試金石となる。

--共同取材 氏兼敬子 下土井京子 Editor:Hitoshi Ozawa、Masaru Aoki

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