日銀短観:大企業・製造業の業況感は3期連続悪化へ、設備投資も慎重

日本銀行が7月1日発表する企業短期経済 観測調査(短観、6月調査)は、エネルギー・原材料価格の高騰で企業の収益環 境が厳しさを増していることから、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が3 期連続で悪化するなど、企業マインドは全般に悪化する公算が大きい。景気の先 行きを占う上で注目される設備投資計画も慎重姿勢が続くとみられる。

ブルームバーグ・ニュースが民間調査機関20社を対象にまとめた予想調査 (中央値)では、6月短観で景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と 答えた割合を引いた業況判断DIは、大企業・製造業がプラス3、大企業・非製 造業がプラス8と、いずれも今年3月の前回調査の実績(プラス11、プラス 12)から悪化が見込まれている。

エネルギー・原材料価格の上昇は資源の多くを輸入に頼る日本経済にとって 「交易条件の悪化、すなわち、実質所得が海外に流出することを意味する。企業 の収益は圧迫され、家計の購買力は低下する」(日銀の白川方明総裁が5月22 日の参院財政金融委員会で発言)。今回の短観では、交易条件の急速な悪化に伴 う企業の収益環境の悪化により、「企業の業況感悪化が広範にわたって確認され る」(JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミスト)とみられる。

日興シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは3月調査以降、① 国際金融市場の大混乱に歯止めがかかり一定の安定を見せ始めた②米国景気が急 激に落ち込むリスクが後退した③円の対ドル相場が円安方向に戻った―としなが らも、「これらのプラス材料以上に、1バレル=140ドルに急接近した原油相場 の動向が企業心理に強い影響を及ぼした可能性が高い」と指摘する。

先行きの業況判断DIも悪化へ

先行きの業況判断DIも「現時点で先行きに楽観的になれる材料は乏しく、 慎重さが目立つ」(村嶋氏)とみられる。ブルームバーグ・ニュースの予想調査 では、大企業・製造業が1、大企業・非製造業はプラス7が見込まれている。た だ、JPモルガン証券の足立氏は「これまでの指標をみる限り、企業は設備や雇 用が過剰とは感じておらず、景気後退の悪循環につながる企業支出の深刻な調整 は起こらない」として、悪化幅は小幅にとどまるとみる。

2008年度の設備投資計画がどこまで上方修正されるかも注目点の1つ。ク レディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは「先月4日発表された法人 企業統計によると、今年1-3月期の企業業績は全産業ベースで02年4-6月 期以来の減収減益となった。経常減益は3期連続であり、国内外の景気不透明感 からすると、企業は設備投資に慎重なスタンスを維持している」と指摘する。

ブルームバーグ・ニュースの予想調査では、大企業・全産業の08年度設備 投資計画は前年度比2.0%増と、3月調査(それぞれ同1.6%減)から上方修正 が見込まれている。第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「企業収 益に対する懸念を背景に、設備投資は勢いを失い、上方修正幅は限定的になるだ ろう」と予想している。

日銀は景気の下振れリスクを注視

政府は6月の月例経済報告で、景気の基調判断を前月の「景気回復は足踏 み状態にある」との表現の後に、「このところ一部に弱い動きがみられる」との 文言を加え、3カ月ぶりに下方修正した。日銀の白川方明総裁は13日の会見で 「先行き設備投資や個人消費は底堅く推移する可能性が高いと判断しているが、 交易条件の悪化が続いているだけに、これに伴う所得形成の弱まりが国内民需の 下振れをもたらすリスクを注意深くみていく必要がある」と述べた。

HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストは「日銀は秋口にかけて、これ まで以上に景気の下振れリスクを重視せざるを得ないだろう。(景気の減速と物 価の上昇が同時進行する)ミニスタグフレーション的状況の下、日銀は利上げに も利下げにも動けないだろう」としている。

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