【今週の日本株】金融リスクで調整場面、正念場の米国-需給は支えに

今週(23-27日)の東京株式相場は、調 整局面が予想される。米国で金融システム不安が再び高まりつつあるほか、世 界的なインフレ進行も引き続き警戒要因。米国株など外部環境が悪化すれば、 日経平均株価は1万3500円程度まで下げる可能性もある。

みずほ投信投資顧問の柏原延行執行役員は、「米国金融機関の『レベル 3』資産や欧州の利上げに対する不安があり、イベントが発生すれば下値を試 す可能性がある」と見ている。

先週の日経平均は、前週終値に比べて31円(0.2%)安の1万3942円と 小動きながら、18日に今週高値1万4469円を付けた後、後半に崩れて終値で は5営業日ぶりに1万4000円台を割り込んだ。金融システム不安の再燃や、 根強いインフレ警戒から米国株が調整色を強めており、日本株も足元ではこう 着感を強めつつある。米ダウ工業株30種平均は、直近高値の5月19日から先 週末6月20日の1万1842ドルまで1カ月間で9.1%下落。金融システム不安 が高まった3月10日の安値1万1731ドルや、1月の年初来安値1万1634ド ルが視野に入ってきた。

1、3月安値時はFOMCが止めた

1、3月の安値時は、ともに直後に実施された米金融当局による大幅利下 げが株価下落に歯止めをかけた。しかしインフレ懸念の高まりで、金融不安を 和らげる利下げ期待は急速に後退しており、今回の米株市場は正念場にあると も言える。フェデラルファンド(FF)金利先物相場によると、24日から25 日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では、19日現在で金利据 え置きを88%織り込んだ水準にある。1週間前は同78%だった。

金融政策の結果に対する予測がおおむね一致しており、今回のFOMCの 結果が株式相場に与える直接的な影響は限られるとの見方が多い。ただし、 「今回は利下げカードがないので、安値に近づいても反発のきっかけをつかみ にくい」(東海東京調査センターの隅谷俊夫投資調査部長)状況にもありそう だ。米国株が底割れとなれば、為替市場で円高の動きにもつながりやすいだけ に、日本株は一時的に下値模索となる公算が大きい。

金融不安が再燃

米国で金融システム不安が再び高まった要因は、住宅市場の悪化や景気減 速が続いているため。米商務省が17日に発表した5月の住宅着工件数(年率 換算)は前月比3.3%減の97万5000戸と、過去17年間で最低水準に落ち込 んだ。「住宅市場はまだ落ち着く状況にはない」(朝日ライフアセットマネジ メント中静満博取締役執行役員)と受け止められており、価格評価が最も困難 とされるレベル3を中心とする金融機関の損失拡大が警戒されている。

ゴールドマン・サックス・グループは、米銀の貸倒損失や資産評価損は 2009年1-3月まで続き、今後さらに650億ドル(約7兆340億円)の増資 が必要となる可能性があると指摘。また、米ヘッジファンド、ポールソンの創 業者であるジョン・ポールソン氏はモナコでの会議で、「評価損はまだ3分の 1ほど出ただけだ」と述べた。同氏はサブプライム(信用力の低い個人向け) 住宅ローン関連証券の空売りで、大きな収益を上げている。このほか、金融保 証会社(モノライン)の格下げも評価損拡大への不透明感につながっている。

一方、米国の金融政策が景気からインフレ警戒へ軸足を移した要因となっ た原油高は、なお高止まりしている。中国が20日から燃料価格を引き上げる と発表したことで、需要が減少するとの観測から19日のニューヨーク原油先 物相場は前日比3.5%安の131ドルと急落したが、20日には反発に転じるなど 景気減速下でインフレが進むスタグフレーション懸念は払しょくできずにいる。

米国の早期利上げが困難な中、7月3日の欧州中央銀行(ECB)の政策 理事会では利上げが有力視されている。「欧州の利上げは、過剰流動性が失わ れる懸念が顕在化することにつながる」(みずほ投信の柏原氏)との声が出て おり、欧米金融当局の協調体制が崩れたことで、株価急落につながった1987 年のブラックマンデー前の状況を思い出す市場参加者も増えつつあるようだ。

中長期で独自の強み

もっとも、海外市場が波乱の様相を呈する中、日本株の底堅さが顕著とな っている。過去1カ月間では米欧株が7-10%安、中国上海総合指数は21% 安と落ち込んだ半面、日経平均株価の下げは2.3%にとどまる。AIGインベ ストメンツの元木宏常務執行役員は、その理由として「米利下げ観測の後退、 円安、インフレがプラスであること」を挙げる。

米大手証券メリルリンチの6月のファンドマネジャー調査では、コアイン フレ率の上昇を見込む比率から、低下を見る比率を差し引いた世界のインフレ 予想は前月の25%から33%に上昇。世界的にインフレ警戒が高まった半面、 日本株をアンダーウエートしている投資家は41%から27%へと大幅に減った。 インフレ懸念の高まった中国などアジア株から日本株への「質への逃避」、債 券から株式への資金フローの変化なども見られ、需給面は日本株の下支え要因 となりそうだ。

チャート上では先週、日経平均の13週線が26週線を下から上へ突き抜け るゴールデンクロスが示現した。ゴールデンクロスは06年10月以来、1年8 カ月ぶり。野村証券金融経済研究所の山内正一郎テクニカルアナリストは、 「短期的には調整局面が予想されるが、中期的な方向感は強気であることが改 めて確認された」と話している。

米国では耐久財受注や個人所得、国内は消費者物価

今週の日本株に影響を与えそうな材料は、米国で24日にS&P/ケース・ シラー住宅価格指数、25日には5月耐久財受注、5月新築住宅販売件数、26 日は5月中古住宅販売件数、1-3月期国内総生産(GDP)確定値、27日 は5月個人所得・消費支出などがある。国内では、23日に4-6月法人企業 景気予測調査、27日に5月の消費者物価、鉱工業生産などが予定される。ま た週末27日は、株主総会の集中日で、経営陣と投資ファンドなどの間で提案 闘争が起きている企業は、結果次第で独自に動く可能性もある。英投資ファン ドTCIによる株式の買い増しで、政府も巻き込む話題を提供したJパワーは 26日に総会を予定している。

【市場関係者の当面の日本株相場の見方】
●日興コーディアル証券国際市場分析部の大西史一シニアストラテジスト
  「FOMCと米住宅関連統計に注目。FOMCでは、声明文でインフレ抑
制にどこまで踏み込んだ発言をするか見極めたい。FRBが景気配慮型の金融
政策からインフレ抑制型に変化してきているためだ。また米国では、決算など
スケジュール上、金融不安が再燃しやすい時期にある。住宅統計で悪い数字が
出ると、スタグフレーション懸念につながりかねない。日本株は消去法的に買
われてきたが、水準的に考えると上値を追いづらい」

●岡三証券投資戦略部の松本貴司チーフストラテジスト
   「ドル円相場は底堅く推移し、企業収益の面からプラス効果が大きい。米
国株式相場が下がっても、日本株相場には海外投資家の買いが入っているよう
な状況で、早期に切り返して日経平均1万4000円を回復できよう。海外機関
投資家の買いで時価総額の大きい主力銘柄の株価が落ち着いてくると、個人投
資家などが環境をテーマに、原子力、食糧など、循環的に物色の矛先を変えて
いく可能性がある」

●東洋証券の檜和田浩昭ストラテジスト
  「世界的なインフレ警戒感が高まっている上、米金融機関の業績悪化懸念
も再燃し、相場を取り巻く環境は厳しい。ただ、インフレに対する日本経済の
相対的強さを評価する動きもあり、日本株の下げは限定的となろう。米FOM
Cでは、会議後の声明次第で波乱を引き起こす可能性がある。仮にインフレ警
戒姿勢に重きを置いた声明となれば、早期の利上げ観測が浮上し、米株が急落
する公算もある。この場合、日本株も連動安となるのは避けられないものの、
今後の日米金利差拡大が意識され外国為替市場で円安・ドル高となれば、輸出
関連株が底堅く推移し、相場を下支えしそうだ」

--共同取材:常冨 浩太郎、鷺池 秀樹、河野 敏 Editor:Shintaro Inkyo

参考画面: 記事についての記者への問い合わせ先: 東京 長谷川 敏郎 Toshiro Hasegawa +81-3-3201-8361 thasegawa6@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保 義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 okubo1@bloomberg.net 東京 Nicolas Johnson +81-3-3201-8343 nicojohnson@bloomberg.net

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