「強いドル」の主因、ポールソン発言でなく米社債-三菱東京UFJ

三菱東京UFJ銀行市場業務部の高島修チ ーフアナリストによれば、3月中旬を底とするドル相場の持ち直しは「米企業に よる社債発行が一時的に急増し、海外資金の流入が膨らんだ」ためだ。相場への 影響が指摘された、6月に入ってからのポールソン米財務長官らによる「強いド ル」堅持や為替介入に関する発言は、相場の流れに追随した格好で、ドル高の原 因ではないという。米景気の低迷を背景に、米社債発行額は足元では減少。高島 氏はドル安基調の復活が近いと見ている。

米国のサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題に端を発した 金融市場の混乱や経済の低迷、利下げを背景に、米連邦準備制度理事会(FR B)が算出するドルの実効相場(対主要通貨)は3月に過去最低を記録。昨年6 月から約13%下落した。その後は、ドルが緩やかに回復。主要国首脳会議(洞 爺湖サミット)財務相会合が開幕した13日には、底値から4.3%上昇した。

高島氏は18日のインタビューで、昨年6月に始まった「中期的なドル安は 3つの段階をたどっている」と指摘した。具体的には、①金融危機に伴って投資 資金の流れが停滞し、経常赤字を抱える米国のドルが3月まで下落した②信用不 安が収束に向かい、それまで滞っていた米企業の社債発行と海外からの資金流入 が一時的に急増した③相次ぐ利下げで米国に不利になった内外金利差がドル安を もたらす-と説明。足元の状況は「第2段階の終わりに近い」と述べた。

三菱東京UFJ銀の推計によると、米社債(Baa格)発行額は昨年後半か ら今年3月まで低迷していたが、4月に急増。5月は1342億ドルと、金融危機 の発生前を上回って過去最高を記録した。高島氏は、昨夏以降の「信用(貸し倒 れ)リスク再評価」を経て高まった米社債利回りと、金融危機の収束が背景と分 析。海外投資家の資金流入が、ドル持ち直しの「メインファクター(主因)だ」 と語った。

6月に早くも息切れ

ただ、6月の米社債発行額は17日時点で月換算412億ドルと、前月の3 分の1以下に減少している。高島氏は、滞っていた発行分が一巡すれば、「景気 低迷下では、米企業の資金需要は高まらない」と見る。海外からの資金流入が勢 いを失い、ドル相場は第3段階の「金利差を背景とした下落基調」に「そろそ ろ」移ると予想する。

ポールソン長官は9日以降、「強いドル」の堅持やドル安是正を狙った為替 介入の可能性に言及。ブッシュ米大統領も「強いドルは米国の国益」だと言明し た。高島氏はドル相場の底は3月中旬であり、これら要人発言は相場の流れに追 随した格好だと指摘。機関投資家などからの資金流入が足元で細る中、結果的に 「投機的なドル買いの持ち高を増やす材料となった可能性もある」と話し、ドル 高の持続性に疑問を投げかけた。

高島氏は、ドル相場はユーロに対し、夏場に1ユーロ=1.64ドル、対円で は今秋から来年初めにかけて1ドル=92円前後まで下落すると予想している。 19日午前10時30分時点では1.5559ドル、107円68銭。直近の安値から、 対ユーロで2.9%、円に対しては12.4%ドル高に振れている。

政策金利は米国が2%、ユーロ圏は4%、日本は0.5%。米金利先物市場 は、FRBが9月に利上げする確率を95%織り込んだ。欧州中央銀行(EC B)のトリシェ総裁は7月の利上げを示唆。日本銀行の白川方明総裁は13日の 会見で、景気減速とインフレ加速の両方のリスクを注視する姿勢を示した。

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